魔法と餅と家造り
今朝も3人と虫達は元気に体を横に曲げる運動をして、兄弟様に挨拶をして、朝ごはんを取ったあと、出かける準備をする。
「さて、今日はデンプンの実験と隠れ家作りだけど、保存食が心もとないのでスピカを送った後にバナナもどきの実を取りに行ってからにしよう」
いつも通りスピカを崖の上で見送ってから、バナナもどきの木の実を大量にゲット。
アラネアが木に登って実を落とし、下でウォーターボールを広げてキャッチするというコンビネーション技を開発した結果、かなりの数の実を収穫できた。
収穫した実を再度ウォーターボールで包んで浮かせ、川の作業場まで運ぶ。
「生ゴムを取るのにボウルだと効率が悪いかな、樽みたいなもの作ったほうが良いのかな
金属がないからワインの樽みたいなのは作れないし、作るなら和風の桶かな」
地面に絵を描きながら考える。
「板(側板)の周りを押さえる縄みたい(箍)なのは大きくなければツルで代用できそうかな、底(底板)は丸くするから、周りの板はほんの少し台形にカットして…板同士がズレないように木で出来た釘(竹釘)みたいなのを挿す穴を開けて…」
おおよそのパーツの簡単な設計図が出来た。
『主ぃこれつくてみたい』
「あ~そうか、あんまり大きくないからアラネアの風斬で加工できそうだもんね」
『あぃ』
「この辺の流木で真っ直ぐなのを集めて置けばいいかな?」
『あぃ』
アラネアを肩に乗せて良さげな流木をウォーターボールに入れて集めて回る。
「底になる板は丸く切らずに組み合わせたら、ワタシを待っていてね、後で丸く切ってもらいたいから」
『あぃ』
「じゃぁ任せた、ワタシはデンプンらしきものを取ってくる」
アラネアの頬をツンツンする。
『あぃ、いてらしやい』
ウロに戻ってバナナもどきの干物で結晶が少なかったり付いてないものを選り分けてトートーバックに詰める。
川の作業場に向かおうとウロから出たところで、ドングリを思い出す。
「これがデンプンだったら、ドングリと一緒に搗けばドングリ餅になるかも」
トートーバックに乾燥した茹でドングリを詰める。
歩きがてら、臼と杵を作るか悩む、量が少ないのでボウルに入れて棒で搗けばいいか。
川の作業場に戻るとパーツがほぼ出来上がっていた。
底になる板を木の釘で組み合わせ、糸を使って円の形に傷をつける。
『虫にやらせる』
キクイムシ小隊が削り出す。
その間に側板を組み合わせて筒を作る。
キクイムシ小隊に少しどいてもらって大きさを確かめる。
円のサイズを微調整するとキクイムシ小隊が拗ねたが、アラネアに命令されるとビシッとなって職務に戻っていった。
ツルを編んで箍を作る、きつく締まるように心持ち径を小さめに作る。
キクイムシ達はまだ少しかかりそうなのでデンプンの確認をすることにした。
竈に火を熾し、炭ができたのを見計らって、バナナもどきの実をウォーターボールの中に入れて潰そうとしてみる。
「手を入れて潰すこともできるけど、あまり衛生的ではないし…ジューサーみたいに出来ないのかな…回れ!回転!ローテーション!洗濯機!うず潮!」
なにが反応したのかは分からないが水玉の中でバナナもどきの実が回転し始めた。
「おぉぉ反応あり!」
とりあえずもう一回詠唱してみる。
「回れ!回転!ローテーション!洗濯機!うず潮!」
おおおっ回転が早くなった!
「回れ!回転!ローテーション!…変化なし」
残るは洗濯機とうず潮か…洗濯機って呪文やだなぁ。
「洗濯機!…変化なし…ふぅ…良かった」
「うず潮!反応あり!」
水玉の中で実が見えないくらいの速さで回りだした。
「ここに何か硬いものを入れれば砕く事ができそう…小石で良いかな…」
拳より少し小さな石で丸くなっているのを3つほど投入。
ゴガガガガガガガという激しい音と共に水玉が白く濁りだす。
「こんなもんかな…さてどうやって止めるんだろう?とまれ!ストップ!う~ん反応なし」
ちょっと厨っぽいけど…「静まれ!おっ反応あり、静まれ!静まれ!静まれ!って止まった」
しばらくすると水玉の底の方に白い粉が沈む。
「中では重力があるんだよね…なんでだろ」
上澄みの部分を捨ててボウルに水玉を落とし、石を取り除いて、再び水玉に入れて火に掛ける。
「ダマにならないようにかき混ぜとくか~からの~うず潮!」
うず潮一回でゆっくりかき混ぜながら温めていくと、段々と水玉が透明になってゆく。
「このへんかな」
ボウルに水玉を落とすとスライムのような感じになった。
「あ、ドングリも同じようにすれば細かくなるのかな」
新たに水玉を作ってドングリを入れて砕いてみる。
バナナもどきの実よりかなり時間がかかったけど、細かい粒になった。
ドングリ粉を沈殿させて水を減らし、火に掛けて再度茹で戻す。
アクが出てきたので沈殿させては水を入れ替え茹でるを何度か繰り返す。
「もしかして、ここにデンプンスライムを入れてかき混ぜれば餅になるかも」
沈殿させたドングリ粉をボウルにいれて軽くこねた後、薄い水玉で覆いかき混ぜてみる。
「うず潮!うず潮!うず潮!…おぉ水より手応えがある、もう一回うず潮!」
4回でようやくゆっくり回転しだした。
斑無く混ざるまで待ってからボウルに取り出す。
「お、見た目はいい感じ!」
少し摘んでキクイムシを監督しているアラネアのところへ行き、半分こにして食べる。
「う~ん、味があまりない、しばらく噛んでれば甘くなるかもってレベル」
『主ぃおいしい』
「アラネアは美味しいの?後で水飴を足してみようかな…君たちもいる?」
底の板を削り終わったキクイムシ小隊が見上げていたので、少し手に付いていた餅を上げてみる。
「おぉ喜んでますな」
『選択に間違いはなかった…だて』
「そか、ドングリ餅もキクイムシ小隊の報奨品リストに加えておくよ」
桶の作成に戻り、先程作っておいた筒にツルの箍をもやい縛りのような複雑な形にして、足をかける輪をつけ、体重を乗せて締める。
「こんな複雑な縛り方知らなかったんだけどなぁ、なんで出来るんだろ」
『主ぃ編み物スキル』
「なるほど、編み物か、これって有能で範囲の広いスキルだね、アラネアのおかげだよ」
『主ぃから教わた』
「じゃぁ二人の功績ってことにしよっか」
きつく締まってはいたけど念のために縄に木片を宛てて石で叩いて更に締める。
筒の中に底板を入れてきつくなったところで板を底に宛てて木端を叩く。
ガッチリはまったらできあがり。
「ふぅ~ちょっと後で緩みそうだけどとりあえずはこれで試してみよう」
水玉を作って桶に入れてみる。
水が少し滲み出してるけど木が水を吸えば膨張して止まるんじゃないかという期待をもつことで作業終了。
酸っぱい実を取り忘れていたので採りに行き、バナナもどきの実の処理を開始する。
「あ、ボウルの量産を頼める?」
『あぃ作らせておく』
「キクイムシたちにはあとでまたご褒美を出すよ」
キクイムシたちは喜々?として木の切り株を齧りだした。
いつもの工程が桶一つでこんなに効率が良くなるのかと感動しつつ、小一時間程で生ゴムと子房を収穫できた。
生ゴムを葉っぱでくるみ、新しいボウルに子房を入れてウロに持って行く。
子房を綿毛菌に任せたあとトレーから水飴をボウルに掬って川へ向かう。
「お待たせ」
水飴のボウルにドングリ餅を入れてこねるように混ぜる。
「さてみんなで試食しようか」
アラネアとキクイムシ小隊に小さく丸めて渡し、せぇので食べる。
「美味『おいし』(カチカチカチ)しい」と三者三様の食レポを披露する。
「このドングリのなんとも言えない味わいと香りが食欲を掻き立てるね、そしてこのもっちりとした食感、最高、異世界くず餅だね、あドングリバナナもどき餅か、って長っ、ドンバナ餅に短縮決定」
次にドングリを収穫したら鬼皮を剥いて粉状にして茹でたほうがアクが抜けるのが早いかをチェックしたいな。
ドングリ餅を昼ごはんにして、家造りに取り掛かる。
「ネットで見たホビット小屋をつくる動画ではこんな風に細い枝を梁の形にして、石を積んだ土台の上に枝を輪切りにしたブロックで壁を作ってたんだよね、石で全部積んだほうが頑丈だけど、この場所はそこまで丈夫でなくても良さそうに見えるんだよね」
丸いドアに丸い窓がついた小屋を地面にかいてみる。
「リビングは洞穴の中になるから入り口だけ塞ぐのもありか?あーでも少し狭いかな、そうしたらここまで屋根を作って…」
洞穴の庇からはみ出す形で屋根を120度くらいの孤でつくり、60度の開放口をあける開放口側は庇となる岩が張り出している下になるようにする。
「問題はドアのヒンジを作れないところかな…引き戸もありかな?でも和風になりそうな予感がするしって…和風でもいいのか、でも見た目がこんなふうなので和洋折衷は避けたい…おっ思いっきり和風に振って、天岩戸みたいに丸いドア自体を転がすのはどうだろう、こんな風にレールを作ってドアが自然に転がって締まるようにして、開けっ放しにするときはくさびを挟むと」
『主ぃスゴイ』
「でしょ?でね、部屋の中は岩肌が丸出しだと寒いから板を貼って、隙間に苔を詰めるの」
『苔は滝のところ』
「おっよく覚えていたね、内側の壁を貼る前に取りにって干しておかないとね、さて決まったとなれば即実行」
アラネア小隊にはドアの周りをくるっと囲うようなドーナッツ上の板と蹄鉄のような形の窓枠の切り出しを頼む。
「大きさはこれくらいで、一枚板から丸ごと切り出さずに、こんなふうに分けておいて後で組み立てるの、無理しないでいいよ、出来たら呼びに来て」
『あぃ』
アラネアが糸を出して長さを測ってからでかけていった。
「なんと文明的…ワタシは勘の赴くままいくさ」
3回ほど川に降りて手頃な石を水玉に放り込んで運ぶと基礎部分の石が揃った。
家を作ろうとしている洞穴は前に少し傾斜しているので水はけを考える必要がなくて助かるけど、少し傾いているので、基礎の石を並べた後、小さな石で微調整しながら、全体的に小石を床に敷いてなるべく水平にする。
森の中の土を風斬で切り出し、これまた水玉の中に入れて、近場の枯れ草と一緒にかき混ぜながら運び、基礎の大きめの石の隙間を塞ぐ。
基礎の上に横木を置いて水平になるように調整、横木は長めに切ってあり、両端に穴を開けてある。
この穴に長くて細い枝を突き刺して曲げてゆき、反対側の穴にさす。
梁の形がちょうどよくなる形になるまで。枝の長さを調整し、決まったところで枝の端を縄で繋いで弓状にする。
さて梁を切り出しに行こうかと思っていたらアラネアが戻ってきた。
『主ぃできたよ』
「はやっ!じゃぁ取りに行きますか」
ウロの近くまで戻ると、ウロの木が落とした太い枯れ枝を組み合わせて、外側はきれいな円ではないながらも趣のある丸みで、内側は綺麗な真円、サイドは綺麗に断ち切って面取りがされている。
「なんかオシャレなんですけど、扉だけ豪華にならないように頑張るよ、ついでなんだけど、こっちの梁も手伝ってもらえない?」
『あぃ良い枝まだある』
アラネアが扉と窓の枠を作るには大きすぎた枝を覚えていて案内してくれる。
何本か集めて梁の弓に合う形に組んでみる。
「こんな感じかな、じゃ厚さを揃えよう」
枝を水玉に浮かせて横面を風斬で一気にスパッと切り、ひっくり返して再びスパッと切る。
「うひゃー超便利」
つなぎ目の角度をあわせながら切って組み合わせてみる。
180度と120度の孤が出来た。
「細かいところは向こうで作りながらやろう」
梁と枠を何度か往復して運ぶ。
梁を組み合わせ、つなぎ目に羽を広げた蝶のような形の鎹用の窪みをキクイムシたちに削ってもらい、同じ形の板を同時に作ってもらいハメてゆく。
出来上がった梁を土台の横木の上に梁を乗せ、横木の穴にハマるように梁の足をキクイムシたちが加工する。
「そういえば、キクイムシ達って削るの早くなってきていない?」
『あぃ木かじりていうスキルをもてる』
「それはアラネアも覚えられるの?」
『ダメ、木をかじれる歯じゃない』
「あ、あれか、ワタシが糸を吐けないのと同じ感じのやつ?」
『あぃ』
180度の梁を洞穴の前の横木にはめ込む。
120度の梁は片方だけ横木にはめて、枝のつっかえ棒を2本立てる、どちらも差し込めるようにキクイムシたちがあっという間に加工する。
梁の弧の外側と内側をアラネアが風斬を細かく出して円状にカット、同時に二本の梁に棟木を渡すための窪みをキクイムシたちが作ってゆく。
その後で同じ長さにカットしてきた枝をハメられるように端を加工してもらう。
梁の内側に天井板を差し込む溝をつくることにした。
「さて、どうしたものかと…キクイムシたちに削ってもらうのもありだけど、範囲が広いからなぁ、良い魔法とかスキルないかな…」




