実りの秋はお忙しい
今朝も一人と一羽で体を横に曲げる運動をしてご兄弟様への挨拶で一日の始まりを迎える。
昨日作った生ゴムソールの草鞋は、触るとまだベトベトするので、乾燥させたままにして、今日は裸足で活動する。
草鞋の隣に吊るして干しておいたバナナもどきは少し黒ずんだだけであまり乾燥していない。
「天日干しするには日が少し弱いし、火を炊くのも憚れるし、どうしよう、そろそろ保存食作っておいたほうが良さげだし…」
困っていると『おいどんにまかせんしゃい』って感じの光の粒が木のウロの中から届く。
白い綿毛のような何かが光の粒主らしい。
「麹菌?ではない…なんだろ?まぁまた取ってくればいいのでご厚意に甘えさせていただこう」
綿毛のそばにバナナもどきをつるしておいて出かけることにした。
ウロを出ていつも通り採食しながら南の草原に向かう。
実を食べているとスピカは頭の上でじっとしている、多分花が少なくなってきたので省エネ運転中なのだろう。
急ぎ足でキンギョソウの種を植えたところを確認に行くと、もう芽が出ていた…と思ったらフクロタケみたいな子房だけの実のようなものが出来ていた。
「なにこれ冬虫夏草みたいな感じ?」
とりあえずチョロ水を掛けたあと、額を地面につけて根っこ通信を試みる。
『ムニャムニャ』みたいな感じが伝わる、多分寝ているっぽい。
ついでに花が咲いている場所を根っこ通信で聞いてみたら、そんなに沢山はないっぽい。
「スピカが近頃崖の下に飛んでいくのはそのせい?」と聞いてみる。
「スピッ」と一声鳴いて、南へ迎えと頭をつつかれる。
草原の端まで行ってみると思った以上に崖で寒気が走る。
スピカが飛び立ったので見送ろうと恐る恐る崖下を覗き込むと湖面が見え、その先に鬱蒼とした森が広がっているのが見えた。
「む~近くに人里みたいなのは無しと、もしかして人が居ない世界だったり…」
妙なフラグを立ててしまったんじゃないかと慌てて口を濁す。
今日は草鞋をもう一足編んで、できれば莚も作ってみようと思う。
紐を結構編んで筵ってどうやって作るんだろうと縦の紐を組んで見たら、袋が作れそうなので計画を変更。
「袋は筵を兼ねることもできそうだし、ワタシってば冴えている」等と思っていた時期もありました。
「うーん、紐が2倍いるのか、ま生活向上のためには仕方ない」
せっせと紐を無心で作り続けていたら、機械神の心を手に入れた…な、わけ無いか。
紐がかなり出来た頃には日が高くなっていたので食べ物を探しに行くことにする。
「果物が無くなりそうだし、なんか考えないとなぁ、芋とか木の実は火が必要そうだし…火起こしやってみるかな、どちらかというと異世界転生というよりリアリティ物のサバイバルになってきたんですけど、おおっ?」
チョロ水があるから煮炊きで水をくんでくる必要がないことに気づく。
「やっぱ異世界だね」
試しにチョロ水を出して飲んで見ると美味しくもないし上手くもない感じ。
「いっぱい出せるように練習しといたほうが良いのかな、結構出せるんだよねこれ」
色んな出し方を試しながらあるく。
「ウォーターボール!なんちゃってね」とフザケてみたら、本当に水の球体が出来て指の先に止まった状態でできた。
「おほ、きたこれ、水属性あり!ですなぁ、むひひ」
きれいな水の玉は水晶玉みたいで覗き込むとちょい魚眼レンズみたいな感じになる。
周りを眺めていたら太陽を見てしまって慌てて目を閉じる。
「ふぅ、やばいやばい、緑の残像が…気をつけないとね…おお?」
再びなにか来た気がして思考をたどる。
「えっと、水の玉からの屈折からのレンズからのメガネ…じゃないな…水の玉からの屈折からの金魚鉢からの火災!これだ!」
指先に再び水の玉を作って地面に近づけてゆく、太陽光が屈折した光が最初環のようになり、その環が小さくなってゆくと眩しく光る。
枯れ葉に当てるとジジジジと黒く焦げて煙の匂いがしだした。
「やった、水魔法からの火起こし成功!なんか凄い技術のどうしょうもない使い方にも見えるけど、我々はまた一段進化の階段を登ったのだ、よっしゃ冬ばっちこい!」




