草鞋と豆
今日も日の出とともに目が覚める。
昨日に引き続き朝の体操をしようとウロから出ると、風が秋の匂いに変わっていた。
「秋になるとなんで悲しいようなソワソワした気分になるんだろう」
病院の分教室で読んだシートン動物記のエリマキライチョウの話を思い出した、たしか11月の狂気って書かれていた、若い鳥が無性に旅立ちたくなる季節らしい。
「はるかぜ分教室は今頃秋のイベントをみんなで企画しているんだろうな」
ふと前世を思い出してしみじみとする。
そんな横で「スピッスピッ」とスピカが昨日と同じエモートを仕出したので、一緒になって体を横に曲げる運動をしていたら悲しい気持ちは消えた。
「君とずっと一緒にいれたらね」とつぶやいたら、スピカが小さく「スピ」と鳴いて頬を突いたあと飛んでいってしまった。
「食い気に負けたよ…私の純情…」
出かける前にウロの一番奥のくぼみに兄弟の種が入った包を安置する。
「それでは行って参ります、兄弟様」
パンパンと二拍手一礼して出かける。
昨日に引き続き南の草原で荒縄づくりに励むことにした。
ウロの入り口を塞ぐ莚を作れるくらい縄を編みたい。
途中でキンギョソウの様子をみてみると、葉が枯れはじめ子房が膨らみきっていた。
もう光の粒は出せなくなったようで、近づいてもメッセージが伝わってこない。
額を地面につけて根っこ通信(3本アンテナ状態)を試みる。
『幸多からん、元気でね』というメッセージと共に通信が途絶した。
「今までありがとう、種は埋めるから安心してね」
種からふわっと光の粒が出たけど風に吹かれて飛んでいってしまった。
「君を埋めるんだねわかった」
再び気分が沈んだけど、お世話になったキンギョソウの遺志をしっかり果たすべく、種を取ろうとしたら、キンギョソウの種がすっごい不気味で驚く、ドクロみたいじゃん。
こわごわとしながら子房の付け根をひねって千切る。
昨日見たハナグモの死体は健在だった。
「クモさんにもお世話になったよね、ありがとう」
その横に落ち葉と腐葉土をどけて穴を掘り、落ちた木の枝でつついてハナグモを埋葬、腐葉土をかけ、キンギョソウの種を置き、落ち葉をかける。
例の必殺技のポーズでチョロ水を撒いたあと、地面に手を置き『いい生涯を』と心のなかで祈る。
チョロ水を出すときのような流れを感じたけど何も特に起こらなかった。
「植物魔法とかで一瞬で成長とかないか…まぁ芽が出ても秋じゃ困るよね」
何も変化のない埋葬場所の横に枯れ枝を刺しておいた。
南の草原に歩いて行って縄を編む。
ある程度できてきたので、草鞋を編んでみることにした。
小学生の時に分教室で農家のおばあちゃんが体験教室をやったときに習ったのがこんなときに役立つとは思わなかった。
取り敢えず不格好ながら一足編めたので履いてみる。
鼻緒の部分が緩かったので調整。
「うひょひょ」
できあがりに変な声を上げてしまったけど、誰も聞いていないのでセーフ。
もう片方も編んで完成。
ペタペタ歩いて回っていたらスピカが崖の下から飛んできて昨日と同じように寝落ち。
草鞋を履いてウロまで戻ったら鼻緒が擦れて豆ができてた。
豆が潰れたら困るなぁと手を翳していた。
もしかしたら治癒魔法と使えたりしてと丹田を意識する。
何かが手先に流れる感触のあと指先に小さな魔法陣が現れ患部が光る。
光が消えると豆がなくなっていた。
「うひょー、治癒魔法使えるじゃん」と喜んだのもつかの間、とてつもなくダルくなって寝落ちした。




