秘伝カムイと黒耳シェロ ⑨
また仮に、部屋に死体が転がっていたとするなら。
少年が途轍もないリアリティで語る必要性があるだろうか。
物的証拠がそこにあるのなら、その説明はなくても良いはずなのだ。
死体について語らねばならない少年が、果たして空想の話を続けるのか。
シェロはここでは、そう言いたいのだ。
さらにシェロは問いかける。
「なぜ警察は駆けつけたんだっけ?」
二度目のカムイの推理も間違いだと、きっぱりと伝えた。
それなのに、その解答で食い下がろうとするカムイに対して。
すかさずシェロが新たに疑問を投げかけた。
「通報があったからでしょ」 カムイはシェロが出した問いの内容文をなぞった。
言って、視線が宙を仰ぐ。
そしてシェロの目に視線を戻すと。
カムイの表情に緊張が浮かんだ。
本当にそれで合っているのか、少しばかり不安に駆られていたようだ。
だが警察が駆けつけた理由は、それしかないはずだ。
シェロが口を開いた。
「なんの?」
返答するカムイをさらに追い討つように、シェロがもう一押し訊く。
はあっ!?
なんの……って。
シェロにそこまで聞き返されて、カムイの目が泳ぐ。
戸惑いを隠せないでいる。
どういうことだ!?
そこまでさかのぼって間違えていたのかと、恐るおそる考えてみた。
それはもう頭をかきむしるように。
そして──。
「なんの通報をしたのかって言ってるの? そこからなの?」
カムイの疑問符に対し、シェロはコクリと肯いた。
「さ、殺人事件の通報をしたから、警察がやって来たんでしょ……」
シェロは静かに肯いた。
「え? もしかして通報した内容を考えろってことなの?」
対してシェロは、あまり深く考え込まなくてもいいと言葉を加えるが、軽く首を縦に振る。
そしてまたカムイに問いかけをする。