秘伝カムイと黒耳シェロ ⑤
カムイはシェロの指摘にハッとした。
やる気満々の先ほどとは違い、その表情に陰りが見える。
「う~ん……激ムズじゃないかコレ?」
やはり難問ではないかと、シェロに問いかけるカムイが眉根を寄せた。
出題されて間もないというのに。
本当に謎解きは得意なのか。
シェロも、そんなカムイに微笑で相槌を打ちながらも誘引する。
そんなに容易く投げられては面白くはない。
そう言わんばかりにヒントを差し出した。
「いやいや。通報をしたのは誰ですか?」
「少年……です」
「それなら警察は、少年の家に到着したはずだよ」
シェロがそう言い切ると。
カムイはしばらくの沈黙を決め込むが。
「えっ!」
「えっ、じゃないよ」
少年の部屋の外で物語の展開と結末があるというのは、すこし早計ではある。
よそで起きた事件の捜査だとするのは少し飛躍的な考えだ。
このクイズの設問とは直接結びつかないのではと。
シェロはそこを指摘するのだ。
だが、カムイが少々首を傾げて問う。
「シェロくん、僕たちは同じマンションに住んでるじゃない?」
「それがなんだというの?」
「いや想像なんだけど、ひとつ隣の部屋に宅配ピザが届くことってあるじゃない」
「……まあ、あるけど」
そう答えたシェロは、過去にひとつ下の階からの間違いの宅配ピザが届けられたことをカムイに話したことを思い出していた。
ひとつ階を間違えるぐらいの事もあるのだから。
隣の部屋に行ってしまうぐらいはあるでしょう、とカムイは問う。
それでもシェロは、顔を横にブルっと素早く震わせて。
ここで自分が言いくるめられてどうするのだと。
そんな思いでピザ屋の思い出を振り切って──。