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第5話 クリスマスの夜に

   

「おいおい。なんて夢を見るんだ……」

 時計を見ると午前3時。

 夜中に目が覚めてしまった私は、思わず独り言でツッコミを入れていた。

 私が異世界転移ものの主人公になる夢だなんて!


 そもそも私はバス通勤であり、会社から自転車で帰る、というスタートからして現実味がない。いや『現実味がない』というのであれば、異世界が舞台という点が一番の非現実的要素だろう。

 しかし夢の中でも感じたように、そこはWEB小説でお馴染みの世界であり、なんとも居心地が良かった。しかもラストは、異世界の姫様と結ばれるというハッピーエンド!

 いくら独り身とはいえ、私には「お姫様みたいな恋人が欲しい」という願望はなかったはずだが……。こんな夢を見てしまったのは、時期的な影響だろうか?

 そう、今夜はクリスマス。世の中の恋人たちは今頃、まだまだ楽しい夜を過ごしている時間帯だった。


 もう一眠りして、次に起きたのは、普通に朝だった。

 夢の続き――姫様とのハッピーライフ――を見ることはなかったが、夜中に見た冒険譚の夢は、朝になっても忘れていなかった。

 改めて、あの夢について考え直してみる。


 世界観だけでなく、物語展開そのものも、WEB小説にありがちな内容だった。

 現実世界ではパッとしない、平凡な主人公が、異世界へ行って大活躍。いわゆるチート無双というやつだ。WEB小説では流行(はや)りのジャンルだろう。

 異世界ファンタジーは、私も色々と読んだり書いたりしてきたが……。チート無双系だけは、なんとなく苦手だった。

 平凡な人間に過ぎない主人公が、どうして異世界で活躍できるのか。性格的にも能力的にもそれほど優れた人物ならば、まず現実世界でも優秀でなければおかしいではないか。

 その点を理不尽に感じてしまって、それ以上、先に進めないのだった。


 しかし、実際に自分がチート無双系主人公の立場になってみると、その『理不尽』も解消された気がする。

 私がブルシムア王国で『賢者』として活躍できたのは、WEB小説を読んだり書いたりする中で得た知識のおかげ。WEB小説のない異世界では、それらの知識は、私だけが持つものだった。

 元の世界では広く知られていることばかりだから、何のアドバンテージにもならない。でも異世界ならば役に立つ。そして、私がそうした様々な知識を持っていることにも「WEB小説を読んだり書いたりしてきたから」という、一応の根拠があった。

 つまり……。

 私のような主人公を設定して、異世界転移させるならば、チート無双系でも納得できる展開になるのではないか?

 この夢の話を、そのままWEB小説にしたら良いのではないか?

   

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