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『ざまぁ』される俺たちにも救済を!  作者: ikut
ケース4/藤奏 調・月島 美音・相澤 柚季の関係
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(柚季視点)スカウトされちゃった

 安田と名乗ったスカウトは、そこの駐車場に車を停めているらしい。その車で少し移動すると、私でも知っている名前の大きなホテルが見えてきた。

 さすが芸能事務所、こんなところでパーティーなんて、レベルが違うわ。


 安田さんはフロントで何やら受付を済ませている。


「パーティーは午後からだから、ちょっと休憩しつつ、簡単な面接をしよう」


 彼はそう言って、ホテルの一室であろうカードキーを見せてきた。


「あの、男の人とホテルで同じ部屋に入るのは……」

「ああ、そうだよね。でも安心して、単なる仕事部屋だから」

「仕事部屋?」

「そ。このパーティーのために、三日前くらいからホテルと準備を進めてるんだけど、事務所と往復は面倒だから、仕事のために一部屋借りてんの。邪魔するものがないから、結構捗るんだぜ?

 だから、とりあえず部屋を見てみて、安心できなさそうなら帰ってもらってもいい」

「そういうことなら……」


 エレベーターが七階に着くと、彼に連れられ部屋の前に。

 安田さんがドアにキーをかざすと、ガシャリとオートロックの外れる音がする。


「ほら、俺はここで待ってるからさ、中の様子を見てみなよ。あ、物に触るのは勘弁な」


 その部屋はシングルとはいえかなり広めに設計されていた。暖房がやや強めに設定されているのか、コートでは少し暑いくらいだ。

 そして確かに、壁際に設置された机にはノートPCが、窓際のテーブルには何やらファイル類が乱雑に置かれていたりと、「仕事中」という雰囲気で溢れている。


「散らかっててごめんな」


 気付くと安田さんは背後に立っていた。


「あ、いえ。お仕事大変なんですね」

「ま、忙しくはあるね。

 さて、とりあえずかけなよ」


 ファイルが置いてある方のテーブルに添えられた椅子に腰掛けると、安田さんは冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出し、私の方に差し出す。そして壁際の方の椅子に座った。


「じゃ、まずは名前と年齢を聞かせてもらえるかな?」

「あ、はい。相澤柚季、十七歳です」

「へえ、じゃあ女子高生だ。僕は主に、アイドル関係のタレントのスカウトとマネジメントをしている。単刀直入に言うと、柚季ちゃん、君にはアイドルになれる素質があると思う」

「え?そうなんですかぁ?」


 うふふ、何よこの人、見る目あるじゃない。

 私はもらった水で喉を潤しながら、質問に応え、時にはこちらから質問したりを繰り返した。

 にしても、この部屋、やっぱり暑いわね。


 そうして何分かのやり取りの後。


「オッケー、大体わかりました。

 じゃ、ちょっと、脱いでもらおうか」

「な、ぬ、脱ぐ?」

「だって、アイドルだよ?スタイルの良さも重要だし、水着グラビアとか写真集とか、そういう仕事も受けられるか、確認していかないと。南の島で撮った写真集、とか、出せた方が絶対人気が出るのは、分かるよね?」


 ……確かに、それはそうかも。


「でも、最近少し太っちゃって……」

「まあ、少しくらいなら、デビューまでで整えてくれればいいから。エステとかも用意するし、そこは心配しないで。でもそのためにも、なおさら現状を確認さえてもらう必要はあるかな。

 とりあえず、下着一歩手前くらいまでで大丈夫だから。あ、僕はあっち向いとくよ」


 安田さんはそう言って、壁の方に目を向けた。

 芸能界に入るなら、これくらいで泣き事言ってたらいけない。

 そう思って、私は、上着とインナーを脱いで、上はキャミソールに。下はストッキングを脱いだ。スカートまで脱ぐのはさすがに気が引ける。


「あの、これでいいですか?」


 安田さんはこっちを振り向くと、


「おお、いいじゃん!」

「ごめん、キャミを上げて、ウエストを確認させてくれない?」

「は、はい……」


 私はお腹が見えるようにキャミの裾を上げる。ちょっと恥ずかしい……。


「全然太ってないじゃん!ってか、スタイルいいね!ちょっとポーズ取ってくれる?」

「ポーズって、どんなのですか?」

「ええと、例えば……ちょっと失礼」

「キャッ」


 安田さんは私の手を取り、ポージングをいくつか示した。


「こ、こうですか?」

「そうそう。いいねえ、雑誌のグラビア当たりならすぐいけそうだよ」

「あとは……」

「んっ!!」


 安田さんの手が、今度は私の胸を鷲掴みにした。


「うん、バストの大きさも申し分なし。これは人気出るぞ」


 そう言いながらも、安田さんは手を放さず、胸を揉んでくる……。


「ん、あの、手を放して……」

「いや、ちょっと張ってるみたいだし、マッサージしとこう。こういうケアも、これから大事になってくるから」


 ん、あの、何だか変な気分に……。


「……あれ?柚季ちゃん、ちょっと感じちゃってない?」


 いや、そんなこと、あるわけ……。

 

 そう思いながらも確かに、何だか熱いものが身体の奥から溢れている感覚が止まらなかった。


「ちょっと、ベッドに横になろうか」

「え、あの、そんな……」


 そんな、嫌なのに、身体が言うことを聞かない。それにしても、熱い!!


「ここはどうかな?」

「くぅッ!!!」


 安田さんは唐突に、その手で私の大事なところを擦る。刺激が強くて、思わず声が漏れ出てしまった。


「うわ、凄いことになってるね」


 何で、何で?

 私は混乱しながらも、身体の疼きが止まらなくて見悶える。


「ちょっと、面接中断。どうにかしてあげる」


 そ、そんな、私、これからアイドルとして、華々しいデビューを……。


 しかし私の面前にあるのは、獣と化した男性の顔だった。


 そこへ、


「……そこまでよ!!!」


 ドアが乱暴に蹴り飛ばされ、部屋に侵入してくる人影が。

 一人はよく知る男子、もう一人は、別の意味で知っている女子。残り二人は知らない男女だった。


「亜久津!」


 私は思わず知り合いの名前を叫ぶ。

 一方の安田さんも、驚愕した目で乱入者を眺めていた。


「な、白石部長と……アリエス!?」


 そこにいたのは、今やテレビでその顔を見ない日はないトップアイドル、アリエスだった。


 彼女が叫ぶ。


「死ね、この女の敵!ユーゴ君、やっちゃって!!」


「おう!」と短く応じる亜久津。


 彼は、安田さんに向かって思いっきりドロップキックをかました。

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