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『ざまぁ』される俺たちにも救済を!  作者: ikut
ケース3/クラス転移:松本拓真(陽キャ)と影野深夜(陰キャ)の場合
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俺×30

本日投稿二つ目です、前話未読の方はご注意を!

 分身十体が荒野を駆け抜ける……松本たちには追い付けないな。

 

 敵に近づくにつれ、魔物の群れの全容が明らかになる。


 まず大きく目立つ魔物が二体。

 デカいライオンのような魔物と、宙にいるドラゴンらしき魔物だ。どちらも全長十メートルくらい。

 よく見ると、その二体は既に戦闘中……ライオンを松本が、ドラゴンを花田と佐々木が相手取っているみたいだな。


 ライオンの方は言うと、前脚の鋭い爪で松本を切り裂かんと攻撃を繰り返している。結構速い。だが松本は避ける避ける、その身のこなしは見事で、ほとんど危なげがない。

 おっ、松本が剣を振った。ライオンの肩口から派手に血吹雪が飛ぶ。でっけえ傷痕だな、あれが『超剣技』の威力か。


 ドラゴンの方に目を向けると、花田が何やら青い魔法を飛ばしている……雪か氷の魔法っぽいな。ドラゴン全体を覆うレベル、これもかなりの威力だ。

 敵はたまらず上空へと退避する。

 あ、ドラゴンがブレスを吐いた……熱そうだな。つーかそれ、前の俺が死んだ奴。

 しかし佐々木が手をかざすと、二人の前に緑色の光が出現して壁をなし、炎を防いでいる。

 ブレスが一旦止むも二人は無傷。


 なるほど、確かに調子に乗るのも伊達じゃなさそうだ。

 おそらく強力そうな奴を潰しにかかっているのだろう。俺もそれに乗るとするか。


 まずは、向こうの方にいる一つ目の巨人をターゲットに定める。サイクロプスって奴だな。全長は四メートル程度、これくらいなら生前何回も相手にした。


 様子見として、分身の一人で相手に突っ込んでいく。

 お、あいつも気付いたみたいだな。俺に向かって太い腕が伸びてくる……思ってたよりも速い!

 俺はステップを踏み、身を捩って腕をやり過ごして、そのまま跳躍。


 何これ、めっちゃ跳べる!?


 自身のジャンプ力に驚きながらも、そのまま奴の二の腕辺りに着地、身体の上を走ってデカい眼に斬りかかる。


 だがしかし、相手は反対の掌で眼全体を防御。俺の振った剣は奴の指を切り裂くも、大したダメージにはなっていないようだ……うお、何だ!?


 奴の口から何かが吐き出され、俺はそれをまともに浴びてしまう……ネバネバする、身動きが取れない、ってか臭い!!


 成す術もなく地面に落下。やべ、剣を落とした……。


 すると剣がすっと消え去ってしまう。

 なるほど、分身は身に纏っているもの自体もコピーできるが、自分から離れると消えてしまう仕様みたいだな。


 って、分析している場合じゃない!

 しかし眼前にはサイクロプスの足の裏が。分身の俺は、あえなく踏み潰されてしまった。



「ぶはあ!!」


 本体の俺に意識がいく。なるほど、こういう感じなのか。

 俺は分身十体の五感を共有しており、それをリアルタイムで本体が処理している。もちろん本体は本体で思考・行動しているのだが。


「どうしたの?」


 委員長が声をかけてくる。


「分身の一体がやられた。『アビリティ』の使い方が分かってきたぞ」


 じゃあ次は、みんなで行ってみるか。


 奴が防御したことから、眼への攻撃が有効であることは明確。剣も通らない訳ではない。


 という訳でまずは、四人で奴を囲むように動く。

 と同時に、他の五人は戦闘に駆け付けてきた別の連中を相手することにする……ほとんどゴブリンかコボルトだな。今の所ヤバそうな奴はいないから、各自で地道に潰していくか。


 サイクロプスの方。遠距離攻撃ができた方が楽だったな……だが今は剣しかないので、仕方がない。

 前方の二人が左右から同時に突進。奴はキョロキョロと首を振っており、どっちを相手すればいいか迷っているみたいだ。

 二人同時にジャンプすると、片方に向かって奴が痰を吐く。想定通りだが、これは空中にいるから避けられない……ここで分身解除、さらば俺その2。

 本当は相手の止めまで受け切って隙を作るのが最善手なんだろうが、あれは生理的に気持ち悪いんだよ!

 もう一方でジャンプしていた俺その3は、相手の眼は狙わず、デカい左腕をやたらめったらに斬りまくる。すると右腕がこちらに向かってくるから、その3は後方へ退避。


 背後に回っていた俺その4は右脚を斬りつけて、そのまま正面右に回る。


 改めて、俺その3,4が左右に陣取った形だ。

 今度はサイクロプスも、二人の俺をじっくり睨みつけており、無暗に動こうとはしない……だが残念、もう一人忘れてるぜ。

 

 その4と共に背後に回っていた俺その5は、その4が組んだ腕を踏み台に、上空へと跳躍していた。筋力A同士の腕力と脚力が為せる技だ。


 俺その5が綺麗に奴の頭上に着地し、そのまま一つ眼を切り裂く。


「グギャアアアア!!」


 目を押さえ、悲鳴を上げながら暴れ回るサイクロプス……痛え!!

 俺その5はぶん回された腕に殴られ、そのまま消え去る。

 しかしサイクロプスもやがて膝をつき、正面へと倒れ込んでしまった……脚がピクピクしているが、そのうち絶命しそうだ。


 俺も分身三体を消耗したが、戦果は上等だろ。

 分身残り七体で、俺たちを囲んでいたゴブリンとコボルトの集団を斬りまくる……一匹一匹は大したことないが、さすがに数が多い!

 俺その3,4、6~10は奮闘するも、だんだんと数を減らされていく。しかし全滅するまでの間で、相手の方も数十体は斬ってやった。差し引きはこっちの得だと思いたい。


 つーか分身、結構楽しいな。


「……あっちの戦場の片がついたぞ」

「亜久津君、すごいね、初めての戦場とは思えないよ!」


 初めてではないからな。


「とりあえずもう一度数を増やして、色々回ってくる」


 俺は分身を二十体ほど増やし、四人一組で五方に散らせていった。魔法力を結構消費したが、まだ大丈夫だ。


 本体の俺は、分身達から送られてくる視覚情報を頭の中で整理していく。


 なるほど、今の所、クラスの友達グループがそのまま戦闘チームになっているみたいだな。で、強そうな魔物は強いチームが、残りは弱いチームが相手し、弱いチームは無理しない、と。

 個人で見て戦闘に向かないようなアビリティの人がいても、他の人がカバーする形で戦闘が成り立っている。その辺は確かにチームワークが取れていると言ってもよさそうだ。


 その中でも突出しているのが松本たちだ。

 俺その11~14は、相手の陣地の奥深くを目指していくが、そうすると松本たちの戦場も通ることになる。


 松本は、今度は金棒を持った鬼のような魔物を相手取っている。相変わらずスタンドプレーだが、苦戦している様子はない。

 花田と佐々木はドラゴンを既に仕留め、炎や風を広範囲に起こして、雑魚を殲滅にかかっている。これも良い判断だろう、数の暴力って奴は時に多大な効果を発揮するからな。さっきの俺七体も、それでやられたし。

 そして橘はその間くらいにいる。たまに攻撃を受けるが、強力な防御魔法のようなものに囲まれており、全く影響がなさそうだ。仲間がダメージを受けたら回復させる魂胆だろう。


 

 ええとあれは、影野達?

 今度は、俺その23~26からの情報に意識を向ける。


 奴らは魔物とは全く戦っていないが、四人が固まって動いている。何か空をキョロキョロ見ているな……あ、二階堂が上空を指さした。

 そこには何やら小さな光が発生しているが、すぐに消えてしまった。

 もう一度、今度は二階堂が別の所を指さす。するとそこに同じような光が発生するが、それもすぐに消える。


 うーん、何だこれ?直接聞いてみるか。


「よう、影野、菅原、森、二階堂」

「亜久津?って四人!?」


 影野が反応する。

 声をかけたのは俺その23だが、後方にいる俺その24~26に驚いたようだな。


「ああ、俺のアビリティは『分身』なんだ」

「あ、そうなんだ。それで、わざわざ何の用?」

「いやな、お前ら、何をしてるんだ?」


 顔を見合わせる四人だが、


「深夜、あっち!」


 二階堂がまた指さす。またあの光か。


「上五十五度、二十メートル!」


 菅原が数字を口にすると、


「よし、『拒絶』!」

「ほい、『瞬間移動』!」


 影野が能力を発動し、森がそれを移動させたのか。


 光が消える。


「お前らもしかして、あの光を消しているのか?」

「うん。

 晃が、「あの光はヤバい感じがする」って言うから」

「二階堂のアビリティは、『虫の声』だったか?」

「そ、そうなんだ。放置したらいけない気がして……」

「菅原は何をしているんだ?」

「晃の『虫の声』は、大体の方向は分かるけれど、正確な位置が分からないんです。

 あの光が出る時に僅かに音がするから、僕が『地獄耳』で聞き取って、正確な位置を伝える」

「それで、吾輩の『瞬間移動』で、深夜氏の『拒絶』を移動させているわけですな」

「俺の『拒絶』は、あんまり遠くには発動ができないから……」


 なるほどね。こいつらなりのチームワークで活動はしていたわけだ。


「分かった。俺もこの世界に来てまだ数時間しか経ってないが、その『虫の声』が間違っているって可能性は低いと思う。何より、何か起こってからじゃまずいしな。

 影野達は、そのまま光を潰していってくれ」


 俺はそう返事をするも、四人は目を丸くして顔を見合わせた。あれ、俺、変なこと言ったか?


「どうした?」

「あ、ごめん。君みたいなリア充さんが、俺らを気にかけてくれるなんて、思ってもいなかったから」

「……そうなのか?ところでリア充って何だ?」

「いや、リア充じゃん。あの星月せいらさんと付き合ってるんでしょ?」


 はあ、そんなことになってんのか!?セイラの奴め。


「そんなことないぞ。ただの幼馴染だ」

「ぐへほう!!」


 俺の発言に、森が胸を掻きむしる。


「ど、どうした、森!?」

「い、いや、大丈夫でござる……精神的ダメージを受けただけな故」


 何だこいつ、この喋り方。


「美少女幼馴染……そのキラーワードは拙者達には刺激が強すぎるでござるよ」


 ごめん、何言ってるか分かんない。



 ……それよりも、敵陣の一番深くに侵攻させた、俺その11~14がヤバそうだ。

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