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『ざまぁ』される俺たちにも救済を!  作者: ikut
ケース2/ヒロイン・ミリアと、悪役令嬢エリザ(どちらも転生者)の場合
21/63

神々しい光線の聖なる雨

※2話同時投稿の1話目です!

「ハットリミサコ?」

「ミリアに宿っていた、現世の魂の元の名だよ。その魂がミリアと分離したんだ」


 そう言えばミリアとエリザには、ゲームの外側の世界から転生してきた魂が宿っているって話だったな。


「何で急にそんな現象が」

「これまでのミリアの所業は、言ってみれば現世魂である服部美沙子の仕業だ。ユーゴ君がこの場を丸く収めてしまったことで、『ざまぁ』の未来が消滅、溜まっていたZPの残滓が発生。おそらくだけど、それが本来のミリアでなく、服部美沙子の魂に宿ったんじゃないかな。結果、ZPの力を得て今、『クリエイター』の化身として顕現している」


 セイラの説明を聞いて、ハットリミサコ……?うーん、何だかしっくりこないな、黒ミリアとかでいいだろ。

 その黒ミリアが反応する。


「……ZPのことを知っているなんて、あなた達、何者?」

「さあね。世界への叛逆者、とでも言っておこうか?」


 っておいセイラさん、なして敵を煽っちゃうん!?


「えへへ、前回ユーゴ君もやってたから、真似したくなっちゃった」


 セイラは自分の頭をコツンと叩き、ペロリと舌を出す……いや、可愛い仕草で誤魔化すんじゃありません!!


「……私の真の敵はあなた達、ということは分かったわ」


 ほらあ、敵認定されちゃったじゃねえかよう。


「行きなさい、我が下僕共よ。あの二人を捕らえるの!!」


 黒ミリアが命令すると、


「う゛、う゛う゛」

「お゛ー、お゛お゛ー」

「ぐ、が、が」


 衛兵たちが呻き声を上げながらこちらに向いた。こわ……目に生気が宿っていない。


「ちぃ!!」


 俺は仕方なく剣を抜く。今回もセイラを信じて、強化された肉体の力で戦うしかない……!!

 衛兵たちの戦闘力は知らないが、この世界の学生のレベルを見るに、前世の経験がある俺にも分があるはずだ。今回は使い慣れたロングソード、変な手加減はなし。


「おらあ!!」


 集団で襲い掛かってくる衛兵たちに対し、全速力で太刀を浴びせる。


 一人、二人、三人……とにかく数が多い!!

 一人一人に丁寧に対処している暇はない。囲まれないよう動き回って、なるべく短時間で動きを封じるようにしないと。


 幸い俺の読みは当たり、衛兵一人一人よりも俺の方が強い……おっと!!


「ユカリザ!?」

「う゛、あ゛、あ゛」


 危なくユカリザの奴も斬るところだったが、寸前で刃を止めて、隣にいた衛兵を斬る。


「ユーゴ君、黒ミリアが使っているパーソナリティは、【絶対邪悪】だ!」

「あー、聞いたことある気がするけど、何だっけ!?」


 衛兵たちとの立ち回りは維持しながらも、俺はセイラと大声で情報を交わす。


「魔王ロットガルド!演劇でも出てた!」

「そういや、そんなんいたっけな。あれ、実在したのかよ!」

「言ったでしょ、裏ストーリーモード!

 あれのボスがロットガルドで、そのパーソナリティは【絶対邪悪】!効力は、少しでも邪心がある人間を操る力なんだ!」

「何だそりゃ、多少の悪い心くらい誰にでもあるだろう!」

「だから、ほとんどの人間が敵になってしまう!!」

「そんなん、どうやって倒すんだよ!!」

「ボクもクリアしてないから、分からないんだってば!!」


 するとそこへ、別の声が乱入してくる。


「裏ストーリーモードなら、正しい手順を踏んでいれば、主人公の【魅力的な少女(チャーミングガール)】が覚醒して、【うら若き女神セイクリッドビューティー】に変化するの!!」

「エリザ!?」


 一瞬驚くが、


「エリザ……いや、川島さん。あなたは裏ストーリーモード、クリアしたんですね?」


 セイラがエリザに尋ねる。そうか、エリザにも現世知識が。


「当然よ、私のノブオブ愛を舐めないで!」

「ユーゴ君、『ノブオブ』は『ノブレス・オブリージュ・ラブ!』の略ね!」

「今はそんなことどうでもいいわ!それより『正しい手順』って!?」

「魔王との戦いに至る過程で、いくつかキーとなる選択肢があるの。それら全てで正しい選択をして、人としての徳を積んでおく必要がある!」

「それってつまり、今のミリアの場合は」

「ええ、その手順は踏めていないはずよ」


 そこで黒ミリアが勝ち誇ったように笑う。


「裏ストーリーモードの攻略ルートにそこの女は至っていないわ。

 つまり、この【絶対邪悪】を破れる者は、この世界に存在しない!

 大体そこのエリザも、誰だか知らないその女も、何でそんな美少女なのよ!!どうせ恋愛に傷ついたことなんてないんでしょ。みんな死んでしまえばいいのに!」


 またか、後半は意味不明なことを喚き出す。ガリムの時と一緒だな。

 だが、まだ手が無くなったわけではないぞ。


 俺は起死回生を信じて、衛兵たちから逃げ回りながらも、キーとなる人物の元へ向かう。


 まずは白ミリアだ……何だ何だミヒャエルの奴、ちゃっかり彼女の傍に居やがってよ。


「ミリア!」

「な、何、ユーゴさん?」

「君の【魅力的な少女(チャーミングガール)】、俺に貸してくれないか!?

 そう念じてくれるだけでいい」

「ええ!?」

「頼む、魔王を倒すのに必要なんだ!」

「わ、分かりました……」

「ユーゴ、俺の【気安い性分イージーフレンドシップ】もそうした方がいいか!?」

「いや、お前のは要らね」

「あ、はい……」


 シュンとなるミヒャエルはさておき……さあ、来た来た!

 【魅力的な少女(チャーミングガール)】のパーソナリティが自身に宿ったのが分かる。


 これでベースができた。だがこれでは足りない、あと一人!


 俺は更に全速力で、衛兵の間を縫うように駆ける。


「エリザ!」

「私!?」

「ああ、君の【高貴(ノーブル)】も、俺に貸すよう念じてくれ!」

「よくわからないけど、とにかくやってみるわ!」


 『人としての徳』と聞いたとき、真っ先に思い浮かんだのはエリザの立ち振る舞いだった。

 彼女のパーソナリティの力が、【魅力的な少女(チャーミングガール)】と融合すれば、あるいは……。


 【高貴(ノーブル)】のパーソナリティが宿るのを感じ始めると、俺の身体からは金色の光が発生した。


「ゲームの覚醒シーンのエフェクトと同じだわ!」


 よっしゃ、行けたか!

 確かに、パーソナリティが【うら若き女神セイクリッドビューティー】へと変わっていくのが分かった。

 光がやがて収まると、俺は自身の服装が変わっていることに気付く。


 ……って、何だこの、ヒラヒラした薄着は!

 頭にも何か乗っているな、王冠か?……って違う、ティアラじゃねえか、これ!?


 鏡がないので推測するしかないが、俺はおそらく、いわゆる「女神」的な格好をしている。


「うわあ、ユーゴ君、いくらなんでも入り込みすぎ……」

「うん、男がするとキモイ服装トップスリーに入るかも……」


 おいおいそこの女子二人、揃って引くんじゃない!!


「あ、でもユーゴ君、見て!!」


 セイラが衛兵たちの方を指し示すと、


「おお、女神様」

「女神様が降臨された」

「何とお美しい」

「伝説の通り、気品に溢れておる」


 正気を取り戻した衛兵たちが、揃って俺に向かって跪いている。いや、何でだよ。


「女神様」

「女神ユーゴ様」


 おい、王子やユカリザたちまで!?

 しかし、


「ゲームの時と同じシーンだわ!!」

「そ、そんな、こんなことが……」


 エリザと黒ミリアの反応を見るに、本当にゲームではこんな感じみたいだな。


「エリザ、この後はどうすればいい!?」

「必殺技が使えるはずよ。

 『セイント・レイン・オブ・ホーリー・レイズ』って叫んでみて!」

「はぁ!?」


 だ、ダサい!!


「何を迷ってるの、『セイント・レイン・オブ・ホーリー・レイズ』で魔王を打ち倒すの!」

「ユーゴ君、ここはやるしかないよ!……ぷふっ」


 おーい、セイラさん、半笑い!!

 ……ちくしょう、俺にはもう残された道はないのか!?


 俺は必死に頭を回すも、現状を打開する別案など、生まれるべくもなく。


「だー、もう、これ以上痴態を晒してられるか!!

 行くぞ、『セイント・レイン・オブ・ホーリー・レイズ』!!」


 すると頭上に黄金色の雲が満ち、そこから出た光の雨が、黒ミリアへと降り注いだ。


「ぎゃあーーーーーー!!!!」

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