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八話

評価をいただきました。これからもよろしくお願いします。

「ねぇ、暇だからどこかつれてって」

この一言が彼女、バーリム・C・マーカーの気分をどん底に落とすとは誰も考えなかっただろう。



「もぅ〜い〜や〜」

彼女は今碧の運転するバイクで右に左に振られている。

「うう・・・。もう死んじゃいそう・・・」

「だから吸血鬼は死なんだろう?それより、見てみろ。奇麗だぞ」

「なにが・・・、ってうわぁ」

そこに広がるのは地元の町全てだ。今碧達が来ている場所は町を一望できる高原だ。少し前に風力発電が完成したおかげで、ここにも結構な人が来る。

「こんな場所があったんだ」

「ああ、地元のバイク乗りの間では聖地だぜ」

「へぇ、ねぇねぇ。あの風車は?」

「ああ、アレは風力発電だ。風で風車を回して電力を作ってるんだ。ここは標高がそれなりに高いから風が少々強めだから結構電力が作れるそうだ」

「そうなんだ。大きいね」




「さて、そろそろ次の場所に行くぞ」

「次の場所?」

「俺の母さんの実家だ。この高原を降りたすぐにあるから顔出しておこうと思ってな」

「わかった」

俺はバイクにまたがり、リムに後ろに乗るように指示を出したが、

「あ、私蝙蝠になって飛んで降りるから」

逃げやがった。俺は仕方なく独りで山道を駆け下りた。



「遅いな、あいつ」

別行動で移動したのが間違いだったのか、リムはまだ来ない。

「あ、いたいた」

リムの声が聞こえた。でもどこにも居ない。

「上見ないでね」

上を見上げて見えたのは、青い空ではなく、緑と白の世界だった。

「なに見てんのよ!!」

違う世界が見えたと同時に延髄を蹴られた。結構痛い。

「痛いな、何するんだ!!」

「上見るなって言ったのにどうして見るのよ。変態。人外になんか欲情しちゃって」

それを言われると、なんだか悲しい。

「俺が悪かった。お詫びに帰りはバイクに乗せてやるから」

今度は平手打ちを喰らってしまった。

「騒がしいわね・・・。おや、碧じゃないか。よく来てくれたね」

「あ、ばあちゃん。元気だった?」

家から出てきたのは俺の母さんの母親。ぶっちゃけばあちゃんだ。が出てきた。

「おや、こちらのかわいいお嬢さんは?」

「はじめまして、バーリム・C・マーカーです。みんなからはリムって呼ばれてますので、お婆様もリムって呼んでください」

「そうかい、そうかい。それじゃあ、リムちゃんに碧、外は暑いだろう、中にお入り」

「お邪魔します」

「ただいま」

俺たちはばあちゃんの後ろに続いていく。

「あれ、じいちゃんは?」

「今畑でトマトの収穫してるよ。直に帰ってくるよ。それにしても、碧よくこんなかわいいお嬢さんを射止めたね。それも外国の人。ばあちゃん、うれしいわ」

「かわいいだなんてそんな・・・」

リムはほめられてまんざらでもなく顔を赤くしてる。本当のことを言ったほうがいいのだろうか。そうでなければ、大変なことになりそうだ。

「ところで碧、結婚式はいつだい?私が生きてる間にして欲しいものだねぇ」

「ぶっ」

俺はすすっていたお茶を吹く。

「もう、碧汚い」

リムに怒られた。

「ばあちゃん、俺とリムはそういう関係じゃなくて・・・」

「あ、爺さんが戻ってきたみたいだね。じいさん、碧が帰ってきたよ」

「お、碧元気にしてたか?」

じいちゃんはかごいっぱいのトマトを台所に置いて俺たちが座ってる居間にやってきた。

「まぁ、仕事はがんばってるよ」

「ところでそちらのお嬢さんは?」

「はじめまして、バーリム・C・マーカーです。みんなからはリムって呼ばれてますので、お爺様もリムって呼んでください」

「そうかいそうかい。碧も隅に置けないのぅ。こんな美少女を連れてくるなんて」

「美少女なんて、もうお爺様ったら・・・」

「ところでひ孫はいつになるのかのぅ」

「ゴブァ」

今度は湯飲みの中に盛大にお茶をふいてしまった。

「おじいさん、それはまだ早いって。先に結婚式が」

「おお、そうだったそうだった。わし達の時は結婚式なんてしなかったからの、すっかり忘れてもうたわい」

「おじいさんたら、だめねぇ」

やばい、さすがに誤解を止めないと、勘違いがどんどん悪化していく。リムはリムで祖父母にほめられて惚けてるし。

「じいちゃん、ばあちゃん。申し訳ないけど、どっちでもないんだけど・・・」

「「なんじゃと?」」

声をそろえて言わないでくれ。微妙に殺気だってて怖いよ。

「実は、彼女の家が老朽化してて改装中なんだ。それで、ホテル暮らしをしようとしてたけど、なにぶん物騒な世の中じゃない。そこで親切心で俺の家の空き部屋を使ってくれって言ったんだ。それで、今日仕事が休みでこっちまで遊びに来ただけだ」

「なんじゃ、そうじゃったのか。残念じゃ」

「でも、困ってる人を助ける性格は子供の時から変わってないのぅ」

「そうかな、ははは」

「そういう性格はらんと変わらんのぅ」

さっきまで惚けていたリムがふと正気に戻る。

「ランって誰ですか?」

「わしらの娘じゃよ。碧の母親じゃ。ばあさんに似て、美人で思いやりのある自慢の娘じゃ」

「ええ、ええ。いい子に育ってくれましたね」

「写真見せてもらえますか?」

かなり真剣な目をしている。

「はて、どこにおいて置いたかの。すぐには出んけど藍の家にあるんじゃないかぇ」

「ああ、たぶんアルバムにあると思う」

「それじゃあ、そろそろおいとましましょうか。碧そろそろ帰ろうか」

リムはいそいそと帰る準備をし始める。

「もうか。ごめんなじいちゃん、ばあちゃん。せっかく来たのに。また遊びに来るから」

少ししか居られなかったことを少し後悔し、謝る。

「ええ、ええ。元気な孫の姿を見れて、遊びに来てくれるだけでうれしいわよ。また来んしゃい」

「うん、また遊びに来るよ。それじゃあね」

「リムちゃんもまた来なさいよ」

「はい、それじゃあ、お爺様お婆様また今度」

「気をつけてな」

帰り道。後ろに居るリムは今朝みたいに叫んだりせずに何かを考えていたのであった。

家に帰って早速昔のアルバムを引っ張り出す。

「これが母さんの写真だ。結婚する前のは家に無いけど。母さんに抱かれてるのが俺で手を握ってもらってるのは兄貴の呉藍くれないだ」

「似てるわ・・・」

「ん、どうした?」

「え、ううん、なんでもない。なんでも・・・」

「・・・そうか」



どんどん、読者が増えてきています。この調子でどんどん投稿していく予定です。

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