三十四話
「みなさん。今年度はお疲れでした。来年度には新たな仲間が増えますが、がんばっていきましょう。乾杯!!」
「乾杯!!」
就職して四回目の年度末旅行。この会社では年度末になると一泊二日の旅行にいくのが通例となっている。
「蒼青さん、来年度もよろしくっス」
後輩から酌をもらう。
「おまえもな。また頼むぞ」
ドンちゃん騒ぎの宴会場ではガイドのドジョウ掬いをしている。毎度思うのだが、あのガイドさんは体を張ってると思う。
「にしても、俺今回が初めてですけど…」
「ん?」
後輩がガイドさんの腹周りを見る。
「ピチピチっすね」
「あぁ。ピチピチだな」
拍手がわき起こる。
「嘘は言ってないぞ?」
後輩は不服そうに漏らす。
「ピチピチってもっと他に意味があるでしょう!」
「ガイドが女とは一言も言ってないぞ?」
「そりゃそうですけど…」
ガイドさんがこっちに近づく。
「この子が新しい子かしら?」
おねぇ言葉で近づいてくる。
「はい、可愛がってください」
「ちょっ」
ガイドさんはうれしそうに後輩を引っ張っていった。
「がんばれ。俺なんておまえが来るまで洗礼を受け続けたんだからな」
そう言ってビールの入ったグラスを呷る。そう、あれから3年が過ぎたんだ。
目が覚めると自室の天井が目に入った。親父は「無茶しやがって」と怒鳴ってきた。2日も寝たきりなら無理もないと思った。お袋は相当心配したのだろうか、かなりやつれていた。そして、お袋が倒れてしまった。ただの過労だったらしい心配かけたことに反省した。そして居候二人はというと、クレアは向こうの『世界』で親父たちに挨拶はしたらしい。リムに関することを聞くと決まって「元気にしてる」しか親父たちは答えなかった。後で聞いた話だが、リムの活躍のおかげで、『世界』を結ぶことができたそうだ。これからは異人交流ならぬ、異世界人の間で交流があるとのことだ。
ニュースで流れる三年前の事件はたむろしてた若者の煙草による火災による事件と済まされた。
リムがなにも言わずにどこかに行ったのが気になったが、また会えると思う。
そして、自身の体にも異変があったりする。
「…う、蒼青」
「は、はい!」
振り向けば主任がビール瓶を持っていた。
「どうした。酔ったか?」
心配してるみたいだがビール瓶を持ってるあたり大して心配はしていないみたいだ。俺はコップを出す。
「そろそろ、あいつ助けた方が良くないか?」
主任は後輩の方を見る。
「も、もう勘弁してください・・・」
後輩はガイドさんと飲み比べをしていた。むろん、ガイドさんの勝利で後輩はぶっ倒れている。
「「ハハハハハッ」」
みんなが笑う。不意に手元が冷たくなった。ビールの入っていたグラスが割れていた。
「またか・・・」
いまだに力加減ができないでいる。3年でましになったとはいえ、不意に力が入ると、グラスを握るだけで割ったりしてしまう。割れたグラスを適当な机の上においておき、主任に話しかける。
「すんません、ちょっと外であたってきます」
「そろそろ、暖かくなって欲しいものだ・・・」
外はかなり寒い。浴衣を着ているのもあるだろうけど、寒いと思う。だが、アルコールが入って体が火照ってるとちょうどよい感じだ。
「はぁ・・・」
右手を見る。わずかながら、血が出ている。俺はその血をしばらく眺め、ある程度たまったら舐めて味わう。それを数回繰り返すと、血は止まり少しイライラする。
あの日から感じる自分の体の異変。それは、人間ではありえない力と、時たま起こる吸血衝動。つまり、下層吸血鬼になっていたのだ。とはいえ、元がホムンクルスだからなのか、『抑止力』の影響は無かったりする。だが、吸血衝動だけは抑えることができない。
普段は親父が処方した薬で吸血衝動は抑えているが、アルコールが入るとあまり効果がないみたいだ。だから、最初に比べれば飲めなくなっていた。
一気に完結まで書きました。文法が乱れてたりしてるかもしれないのでご指摘よろしくお願いします