三話
カテゴリーでコメディを選んでるけど実際のところ笑えるのかな
今日はすっきりと目が覚めた。物干し竿には昨日の蝙蝠がまだ居た。
「こんなところに居たら暑さでへばるぞ。少し窓開けておくから、いつでも入って来いよ」
俺は手早く朝食の準備をして洗い物をせずに出勤した。
「おはようございます」
「あ、おはようさん。今日はこれとこれの検査と、こいつの修繕頼めるか?」
「わかりました」
珍しく多めに仕事が入っていた。整備会社では仕事の多い少ないが極端すぎることがある。日によれば朝から夕方までビッシリ予定が組まれてる日もあれば、まったく仕事が入ってくることが無いこともある。適度に仕事が入ってるほうが俺としてはありがたいけどね。
「ただいま〜。今日は疲れた〜」
「おかえり〜。早いけど晩ご飯にする?お風呂にする?」
なぜか反応があった。
「じゃあ、先にお茶にする。戸棚にインスタントのコーヒーがあるから」
冗談めかしに言ってみた。これで反応があればさっきのは気のせいではないだろう。
「あ、あった。カップは適当に使うね〜」
マジかよ。まぁいいや。
「お湯沸いてるか?」
「うん沸いてる」
部屋で着替えを終わらせてリビングに向かう。声の質からして女性だろう。物盗りとも思えないので武器等は持たない。リビングには湯気が立つコーヒー一つと少女がいた。俺は気にせずにいすに座ってコーヒーを一口飲む。
「ふぅ、やっと一息ついた。君の分が無いみたいだな。淹れるよ」
俺は席を立つと来客用のカップにコーヒーを入れて角砂糖とお茶菓子を机におく。
「あ、ありがとう…」
彼女の顔から戸惑いの表情がみえる。うわっおもしろい。彼女はおそるおそるコーヒーを飲む。熱さと苦さをみてるのだろう。
「あ、あの!」
「あ、クリームは大丈夫か?」
一瞬なにを言われたかわからないみたいな顔をしていた。
「大丈夫です」
「そうか」
短く答えて自分のコーヒーを飲む。
「あの〜なにも聞かないの?」
「なにを?」
少女は何か変な物を見たかのような顔をして、
「だって家に帰ってみたら通い妻よろしく家事をしてくれて、さらにコーヒーまで淹れてるのよ。何か聞くべきじゃない?ふつうは」
一気にまくし立てる。俺はカップを持つ反対の手で彼女のカップをスプーンで指す。
「いいから飲んで落ち着いたら?」
「う、うん。って何であなたがそんなに落ち着いてるのよ」
いい加減からかうのも飽きたからカップを机に置く。
「とりあえず、君はこの家か俺に用があって来た。そうだろう?」
「う、うん」
「課程はどうあれ君は『来客』だ。そうだろう?」
「うん」
「俺の家では『来客』には最低限のおもてなしはするようになってるから」
「お、おかしいよ。私が泥棒だったらどうするのよ」
「一度空き巣と鉢合わせになってコーヒーとクッキーを出して小一時間ほど話し込んだこともあったな」
そういえば、その後帰る間際に盗もうとした物を返してくれたな。
「何かがおかしいわ…」
彼女の俺を見る目はかわいそうな人を見たかのような目だ。
「そんな目で見るなよ。照れちまうぜ」
ヒロイン登場。碧は天然じゃありません。馬鹿です