二十八話
最近はいい感じでアイディアが思い浮かんでます。でも、やっぱり話の矛盾があったりするのが気になったりする。
『世界はそれ~でも、変わりはしない謎のまま』
俺は携帯ゲーム機でとあるノベルゲームをプレイしていた。仕事は今日も休みだ。最近では不況のせいで休みを多く取り、給料を減らすという企業が増えている。うちのところもそんな感じだ。だが、もうひとつ休みの理由があった。俺はテレビをつける。ニュースではバラバラ殺人の犯人像を評論家が話していた。
『ですから、この犯人は快楽殺人の傾向があって大変危険で・・・』
『犯人の精神状態は不安定になっており、殺人を起こし始めたではないかと・・・』
「これが、人間だったら確かにそうなんだろうけどね」
俺は先週のことを思い出す。
『今朝、商店街の近くで一人の変死体が見つかりました。死体は首と右腕のひじから先を切り下ろされている模様です』
会社の休憩室で流れていたニュースをみんなが凝視していた。
「何かあったのですか?」
俺は先輩に聞いてみた。
「ああ、殺人事件だとさ。まぁこの町で起こるのは珍しいからな」
『被害者は近くの教会に勤める神父で・・・』
「神父を殺すとは、罰当たりだな」
「信者じゃなければ罰当たりではないと思いますよ」
「違いない」
先輩は笑ってニュースを昼のバラエティ番組にかえる。が
「って、昼休み終わりか」
いつの間にか昼休みは終わっていた。先輩はしぶしぶと言った感じに席を立つ。
「さ、仕事仕事。案外この近くに殺人犯がいたりしてな」
おどけて先輩が言ってきたが、ありそうなので怖かったりする。
「へんなこと言わないでくださいよ」
「ただいま・・・、あれ?」
玄関の靴がかなり多い。
「だから、早急に手を打ってだな」
「かと言ってみすみす『代行人』に手を借りるのは」
リビングのほうでリムと親父が話をしていた。
「親父、一ヶ月ぶりだな」
「ああ」
親父の目が真剣だ。それに、リムまで考え込んでる。二人そろって重要な話ってまさか・・・
『実はお前には兄さん以外にも姉さんが居たんだ。いや、いるんだ』
『そ、そんなこといきなり言われても・・・』
『俺の父さんの隣にいるのが君の姉さんだ』
『なっ、まさか』
『紹介しよう。蒼青家の長女バーリム・C・マーカーだ』
「んなわけないでしょ!!」
リムに突っ込まれてしまった。リムに・・・?
「って人の思考を読むな。恥ずかしい!!」
「恥ずかしいならそんな思考をしないでよ。と言うか、なんでファミリーネームがそのまんまなの?」
「蒼青バーリムだと変だろ。その辺考慮してくれ」
「ああ、仲いいのはわかったから俺の話させてくれるか・・・」
親父の寂しそうな一言で俺たちは聞く体勢に戻る。
「で、碧にも話すつもり?」
「そのほうがリムのほうとしても役立つだろう。まぁ、事情は知ってたほうがいいだろう」
「それも、そうね・・・」
「さて、今日のニュースは見たか?」
「見た」
「お、感心感心。社会人として立派にじりt」
「確か、首相がまた交代してしまうっていうのだろ?まったく迷惑だよ。就職試験を受ける高校生の身になって欲しいもんだ」
「そのニュースじゃない!」
親父が切れた。
「それに、碧は高校生でもなければ就職活動してるわけでもないでしょ」
二人からの強烈な突込みだ。意外と息ピッタリな親父とリムだ。
「それじゃあ、あれか。神父が殺されたって言う、罰当たりな事件?」
「そうだ。それだよ。碧」
「重要なことなのか?まぁこの町で殺人事件は珍しいけど、そこまで重要とは・・・」
「碧、実はその神父はね『代行人』なのよ」
「なんだと!!」
リムと親父がうつむく。
「ところで、『代行人』ってなんだ?」
二人そろって机に突っ伏す。そして、リムが俺の後ろに回って首を絞めてくる。
「おじ様、今碧を殺していい?むしろ殺させて。でないと気がすまないの」
「ああ、っといいたいが、息子だからやめてくれないか」
だんだんと意識が遠ざかってくる。
「リ、リム。一ついいか・・・」
「なに。遺言なら聞くけど?」
「む、胸が当たってる。背中にあたった感触で言うならば・・・」
「きゃあっ!」
首は開放されて安堵のため息がでた。だが、それだけでは終わらなかった。
「こ、この、バカ。変態!」
あごに一撃が決まった。見事なアッパーカットだ・・・。
「さて、話を戻そうか」
「はい」
俺は朦朧とする意識でなんとか聞こうと構える。リムはと言うと顔を真っ赤にしてそっぽを向いてる。
「まず『代行人』について話しておこうか。『代行人』とは『抑止力』を行使する人間のことだ。一般的には神父のごく一部が『抑止力』を使えて、『代行人』となっている。そして、今回のニュースで取り上げられてる神父は『代行人』の一人だ」
「でもさ、その『代行人』が死んだってことは・・・、まさか」
「そうだ。吸血鬼が『世界』に影響を与えていて、『代行人』を返り討ちにしたんだ」
リムはいつの間にか目が真剣になっており、唇をかみ締めている。
「どうして、リム。顔が悪いぞ?」
左のストレートが俺のテンプルを捉えた。かなり痛い。
「顔色ね。か・お・い・ろ!」
親父が咳払いをする。
「ああ・・・。まぁ、なんだ。ここからが、本題だ」
「本題?」
「前にも手紙で言ったが、リムの補佐を頼みたい。まぁ仕事の合間でいいから」
「そりゃあ、いいが・・・。補佐される人が拒否をしてきたんだが・・・」
隣をチラッとみる。手助けなどいらんという表情をしている。
「はぁ。リム、確かに碧はバカで使い物にならないとは思う。でもな、何とかと鋏は使いようと言うじゃないか」
「そういうのを言ってるんじゃないのよ。そういうのを・・・」
リムはうつむく。親父は「ふむ・・・」と何かを納得して話を続ける。
「まぁ。戦力にはならんだろうな。それはそれとして、碧にはリムに無いものがある」
「「それは?」」
二人して聞いてしまう。親父の得意顔がなぜか癇に障る。
「碧はこの町で長く暮らしているから土地勘がある。それに、知り合いに警察関係の人間、真君だっけ。いるそうだな」
「まぁ。いるっちゃいるけど・・・」
リムは何かピンときたみたいだ。
「なるほど、碧は真さんを利用して情報をもらって、私がヴィオレを捕縛すると言うことね」
「そういうことだ。一つ付け加えておく。リム、マーカー家から伝言がある」
「実家(マーカー家)から?」
「脱界した吸血鬼『ヴィオレ』は捕縛ではなく、その場で死刑を行ってくれとのことだ」
「死刑・・・。わかったわ」
『一人の勇気が~大きな力に変わる~♪』
そんな感じが一週間前にあり、その次の日から有給を積極的に使ってくれと言われて、3連休を取ったりもしている。そして、今日が最後の日と言うわけである。
「久々に落ち着いてゲームが出来たから、結構進んだな。さて、真相はなんだ・・・「そのゲームの真相はね・・・」」
えっ?
「あ「言うんじゃな~い!!」」
俺は大声を出してネタバレを止める。
「耳キーンってなったじゃない!」
「うるさい。人が楽しんでゲームしてるのに、何で横からネタバレするかね」
俺はネタバレをしようとした犯人リムを問いただす。
「そのほうが面白いからじゃない」
まったく、この吸血鬼め・・・。実はお前は悪魔じゃないのか?
「ねぇ、碧」
「なんだ、今度は」
「暇」
抑揚の無い声で言われてしまった。
「じゃあ、他のゲームでもしてれば?」
学生時代はゲームをよくしており、古いソフト等の在庫は結構あったりする。その上、仕事が忙しいのに買い集めてしまうから山積みになってたりもする。
「え、全部してしまったけど?」
はい?今ナント・・・
「ぜ、全部?」
「全部」
こともなげに言うリムである。
「据え置き型ゲーム以外もやったけど、一つあたり一週間もあればすぐ終わるじゃない」
「据え置き以外のゲームって、まさか・・・」
俺の背中に冷や汗が流れる。
「うん、碧のパソコンに入ってるノベルゲーム。でも、あれってちょっと変わってるよね・・・」
「そ、そうか。そう見えただけじゃないか?」
冷や汗の量が増す。やばい、こいつは知っている。どうする?どうするよ?
「そんなこと無いわよ。パソコンのゲームって大体は、「ああっとそうだ。きょうはでかけようとおもったんだ。どこにいこうかな。リムもくるかい?(キリッ」」
ごまかした。と言うか、無理やり捻じ曲げた。これに食いついてくれ、リム。俺の尊厳のために!
「えっ、どこに連れて行ってくれるの。私、ゲームセンターって言うところがいいな・・・」
確信犯だ。絶対こうなることを見越してあんなこと言ったに違いない。
「そ、そうだな・・・。あっと、クレアはどうしてるんだ。俺ずっと部屋にいたからわからなかったが」
冷や汗をぬぐいながらリムに聞くと
「クレアなら朝からいないわよ。確か、藍さんが買い物に誘ってくれたって言ってたわ」
なんと、珍しい組み合わせ。
「親父は?」
「久しぶりにバイクで出かけるって言ってたわ。この寒いのに変な人よね・・・」
「そうか・・・」
誰かに代わってもらいたかったが無理か・・・。
「そういえば・・・」
「今度は何?」
リムが少しイラッとした返事をする。
「お金なかったよ「そうだ。一つ面白いゲームがあったんだ」」
何かを思いついたような仕草をするリム。
「何だ、いきなり」
すると、リムの目が狂気に染まった紅に変わる。
「碧を殺し続けて、何回で消滅するかを確かめるゲーム」
「さぁて、ゲームセンターに直行だ~」
思わず即答してしまった。やっぱ、命は大事にしないとな。
「さっすが、碧。話がわかるわ~」
「おう、任せなって」
リムの目は元に戻っていた。
ゲームの元ネタ「428~封鎖された渋谷~」
元ネタもくそも無いです。