二十四話
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三が日も無事(?)に終わって仕事が始まる。俺は正月気分を抜くために早朝のランニングをすることにした。
「やっぱ冷えるな。太陽も出てないし・・・」
5キロほど走って帰宅する。三人分の朝食を適当に作り、俺一人で食べる。またこの毎日が始まるのだなと、考えてしまうとなんだか味気ないと感じてしまう自分に嫌気が少しさす。
「何故、俺はあの時リムに協力を申し出たのだろうか・・・?」
こればっかりが頭によぎる。リムたちの問題なのに俺が協力したところで意味が無いのは解っていたはずなのに。親父に頼まれたから協力を申し出たのだろうか?それとも別の理由があるのだろうか・・・?
『正直になればいい、主は今の生活を味気ないと感じておるのだろう?』
ふと声が頭をよぎる。この声は俺の中に住む奴の声だ。
(だからどうしたというんだ。俺はそれでも今の生活に満足している)
『主は面白いことを言うな。さっきは味気ないと思っていたのに。我にはわかるぞ。今の生活に満足はしているが、刺激は無い。だから、リムが受けた依頼というスパイスを自分もあやかろうとしたのだろう』
(黙れ)
『恥じることは無い、所詮ホムンクルスといえど、人間にもっとも近い神秘だ。貪欲なのが人間ならば、主もその貪欲さを持っていても不思議は無い。さぁ、受け入れるんだ』
(黙れ!!)
俺は机を思いっきり叩きその勢いで立ち上がる。
「俺は・・・、俺は今の生活を続ける。向こうの『世界』のことにはかかわるものか」
俺は朝食を胃に押し込んで家を出た。しかし、その決意もすぐに揺らぐことになろうとは思わなかった。
「あ~、よく寝た。朝食は・・・、よし、ちゃんとある」
私は机の上にある朝食を見つけて満足する。朝なんだかんだで忙しい碧はたまに朝食を作らずに家を出るから困る。
「さてと、今日からはじめようか」
朝食を食べた後、私は誰に話すと無く気合を入れる。
「クレア、出かけるから。何かあったら連絡してね」
「ん~」
愛すべき妹は私以上の寝ボスケだ。だから平気で夕方まで寝てることも多い。
「とりあえず、町を歩くとしますか・・・」
外に出る。結構な寒さだ。しかし、寒いから家でおとなしくしていようとは思わない。この依頼は私の使命でもあるのだから。
「終了点呼を行います。特に連絡は無しです。みなさん、おつかれさま」
終了点呼を聞いて俺はロッカールームに行こうとするが、途中で主任に捕まる。
「あ、悪いけど少し残ってくれないか。急に仕事が入ってな。人手が足りないんだ」
「あ、いいですよ」
俺は主任からどういった仕事か聞き、必要な工具を工具箱から腰掛のかばんに移す。
「それじゃ、いってきます」
「頼んだぞ・・・」
「この町には居ないのかな・・・。早く見つけないと・・・」
吸血鬼と吸血鬼はこっちの『世界』に来るとなぜか引き寄せあうらしい。理由は定かではないが、一説ではよりおいしい血があるところに集まるのかも知れないとのこと。かと言って、本当に引き寄せあうかは私自身もわからない。そもそもこっちの『世界』に来てからの正式な依頼はこれが最初だし。
「お、そこの姉ちゃん俺とお茶しない?」
人間の男がする求愛行為だ。所謂ナンパ。それをされるということはそれだけ自分に魅力があるからなのか、それとも相手は誰でも言いと思ってるのか解らない。
「結構です。忙しいので」
「そういわずにさ、30分でいいから」
意外としつこい。その上目つきが妙にいやらしい。男って言うのは人間にしろ、ホムンクルスにしろどうしてこうなのか。吸血鬼の男はもっと紳士的なのに。
「いいって言ってるじゃないの!!」
「え、マジで。じゃあ、そこの喫茶店にでも・・・」
「何言ってるの?私はいやって言ったのに」
「はぁ?照れるなって」
この男は都合のいいように解釈したみたいだ。ここは商店街の往来。再起不能になるまで痛めつけても良いけど、そんなことしたらいろいろと面倒になりそう。
「そこの青年。そのお嬢さんは嫌がってるではないか。離したまえ」
そこに居たのは貴族風の紳士だ。年はかなり取ってるがその眼光はまるで鷹を思わすほどだ。
「あん、おっさん。空気読めよ。俺が先に目つけたんだ。横取りは良くないぜ?」
青年と呼ばれた男は紳士に向かって詰め寄る。
「まったく、最近の若い者は女性の誘い方も、マナーも知らないのか」
そして紳士の襟をつかむ。どうやら、暴力に訴える気だ。
「ごちゃごちゃうるせぇよ。言っておくが、俺はこの町で結構なの知れてんだぜ?覚悟しろよ」
紳士は抵抗しようとしない。
「出来るのかね?その一発は重いと私は思うが。その一発を繰り出せば、君も一発もらうことになるだろう」
「はっ、仕返しする前に一発で伸させてやるよ」
男はそのまま紳士の横っ面を殴った。乾いた音が商店街に響き渡る。買い物客が一斉にこっちを向く。
「へっ、ざまぁみやがれ。おい、お前らもじろじろ見るんじゃねぇ。同じように殴られたいか!!」
男は周囲の人間に威嚇をする。殴られた紳士は襟をつかまれて横を向いたままだ。気でも失ってるのだろうか。
「ふむ、いい一撃だ。だが、それゆえに惜しい」
紳士はつぶやくように言うと、つかまれた腕を握る。
「ちっ、一発で気を失えばいいものを」
「さて、さっきの話だが、あの一撃は重いぞ?」
「ふざ・・・『ゴキャ』」
ふざけるな、とでも言おうとしたのだろう。途中で乾いた音によって言葉が途切れる。
「ああ、う、腕。俺の腕が・・・」
「どうかしたのかい?」
男の腕がありえない方向に折れている。前腕が途中から折れ曲がって手の甲が顔のほうに向いている。
「先に言っただろう。その一発は重いと」
男はまだ戦意があるのだろう、折れた左腕をぷらぷらさせながら紳士を殴ろうとする。
「懲りないようだね。だが、一発は返したからもう去りなさい」
きわめて冷静に言ってるようだが、その目はまだ鋭く光ってる。ここで騒ぎを大きくされるのはまずい。私は男の頭を思いっきり殴って気を失わさせた。
「ふむ、女性が殴るのは感心しないね」
紳士はあごに手を当てて私をたしなめる。
「あのまま傍観してると青年のほうを殺すつもりだったのでしょう」
「さて、それはどうかな」
紳士は肯定でもなく否定でもない返答をした。
「さて、とりあえずお礼は言わせてもらいます。ありがとうございました。ジェントルマン」
「いやいや、女性を助けるのが紳士の役目でね」
「ではこれで。人を探していますので」
「ほう、人探しとな。はて、不思議なものだな。目の前に探し人が居るのに人探しとは」
「どういうことかしら?」
とたん、紳士の気配が変わる。これは人間が出せるプレッシャーじゃない。男とのいざこざの時に気づくべきだった。彼は
「挨拶をしてもらうとしよう。マルーン・ボルドー。お会いできて光栄です。バーリム・C・マーカー。いや、この場合はこう呼ばせてもらいましょう。『クリムゾン・ブラッド』」
この名前を知ってるとなれば紳士の正体は吸血鬼でしかありえない。
書き溜めてた小説全てを投稿してしまったので、連載を休止します。出来次第、復活しますので気長に待ってやってください