二十話
なんだかんだで二十話です。まぁ一つ一つの話は短いですけどこれからもお願いします
「じ、地獄だ・・・」
暴走した翌日、睡眠不足と筋肉痛を抱えながら会社へ出勤。仕事の量が少ないことを祈ったが、人間ごときの祈りでは無駄だったようだ。
「今日は大仕事が二つ入ってるから、気合入れろよ」
勘弁してください・・・。
昼休み、俺は真に電話を入れる。
「今電話大丈夫か?」
「あ、ああ」
「お前んとこに居候がいるか?」
「ああ。昨日から居ないけどな」
「今俺の家で預かってる」
「身代金の要求か?」
「違ぇよ。お前リムと会っただろう。あいつの妹で俺の家に遊びに来てたんだ」
「なんだ、そういうことか。夕方お前の家にいくから。話したいこともあるし」
「りょーかい」
俺は電話を切る。
「蒼青、仕事がまた来たぞ」
「は、はい!」
夕方のことは仕事がひと段落ついてから考えるとしよう。
「ただいま」
ヘロヘロになって俺はなんとか帰宅できた。しかし、面倒ごとと言うのは結構続くものだ。
「お、碧お帰り。邪魔してるぞ」
「帰れ」
真が家でくつろいでいた。くそ、あいつ今日は休みか・・・。
「酷いな。うちの居候迎えに来ただけなのに」
「ああ、そういえばそうだったな」
昼休みに電話したことすっかり忘れてた。
「ところで、お前ってロリコンなのか?」
「まさか。偶然俺の家の前で倒れてただけで、それを助けただけだ」
「ふ〜〜ん」
当のクレアとリムは俺のコミックを勝手に読んでいた。
「ねぇねぇ。この吸血鬼みたいにさ、私たちも時間を止めれたらいいのにね」
「そうね」
クレアは俺のコミックを気に入ったのか、リムに話題を振ってる。リムも疲れた顔をしている。
「で、早く連れ帰らないのか?」
「そう。そのことで相談があるんだが」
「あん?」
「なに!一月ほど預かってくれ!!」
「うるさい。とりあえずそういうことだ」
「何でまた?」
「それがさ、ちょっとした出張でさ。一月ほどこの町に居ないんだよ。あいつ一人で留守番頼んでも良いんだけどさ、見ず知らずのやつに家を任すのもアレだと思ったんだ」
「それで俺のところに置いとくわけか」
「そういうことだ」
したり顔で言う我が友人に軽く殺意を覚えたが、今はクレアについて真がどこまで知ってるかが気になる。
「そういえば、クレアが何者か知ってるか?」
「いや。単なる行き倒れだろ?」
どうやら真はクレアが吸血鬼ということを知らないみたいだ。このまま黙ったほうがよさそうだ。
「・・・ああ、そうだ。仕方ない、お前の頼みだ。引き受けよう」
「そうか、助かる」
かくして俺の家に(一月の間)吸血鬼が二人暮らすことになった。また波乱の予感。
「で、寝るところはリムと一緒でいいか、クレア?」
「うん。どこでも良いよ。何ならお兄ちゃんの部屋でも・・・」
クレアは顔を赤く染めながら言ってきた。
「ところでさ、その『お兄ちゃん』ってのは何なのさ?」
俺の率直な質問に、
「だって、お姉ちゃんのパートナーでしょ?」
「「はい?」」
「疑問を疑問で返すな〜。って漫画の敵が言ってたよ」
どうやら、クレアはかなり俺の漫画が気に入ったようだ。じゃなくて、
「お姉ちゃんのパートナー=私のお兄ちゃんになるんじゃないの?」
「「いやいやいや」」
ほぼ同時に拒否する俺たち。実際のところリムは俺をどう思ってるのだろうか?
「碧はね、その・・・わ、私にとっての保存食なの。それ以上でもそれ以下でもない!」
きっぱりと『保存食』とされた。
だが、この日から年末まで波乱は続くのだった。