十六話
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「ハ、ハックショイ!!」
くしゃみが出た。乱取り中だ。そして目の前には・・・。
「蒼青さん、せめて顔を背けてくしゃみしてください・・・」
「わ、悪い・・・」
柔道着を着た高校生がいた。
「つまり、あなたは碧の中学時代からの友人ってこと?」
「まぁそうなるな・・・。ところでこのクッキーうまいな」
「あ、それ碧が作ったやつ。暇だからって作ってた」
「へぇ。あいつ変に器用だからな・・・」
私が話してる相手は、橙堂真。碧をたずねてきた友人。そして、この家のしきたりどおり、来客にはお茶を出せを実行している。
「それにしても、あいつ柔道続けてたんだな」
「みたいね。私もここで住み始めて初めてみたけど・・・」
すると真は私に指差す。
「そう、それを聞きたかった」
「な、何を?」
「どうして君みたいな美女がここで住んでるんだ?」
どうやら、碧そっちのけで私に興味を持ったみたいだ。
「えっとね・・・、私碧の父の親戚になるのかな・・・。それで、おじさんを頼って来たのだけど、碧しか居なくて追い出すわけにも行かないから、住んでもいいって言われたから」
とりあえずごまかす。相手はそれで納得するはず。
「なるほど・・・。ところで、どこまでいった?」
はい?
「そりゃ同居してるとなると、あんなことやこんなことを・・・」
一人ぶつぶつ考え込む。どうやら変な方向に話を持っていこうとしている。碧とは食物連鎖の関係なのに。
「ヒ、ヒックショイ!」
くしゃみがまた出た。今度は横を向いてくしゃみをすることが出来た。しかし、
「俺に恨みでもあるのですか・・・?」
さっき乱取りしてた高校生にかかってしまった。
「うらみは無いけど、偶然が重なっただけだ。許してくれ・・・」
本気で申し訳ないと思った。
「あいつとは、いろいろ馬鹿やったな・・・」
「例えば?」
今の碧を見る限り、まじめなイメージしかないけど。いや、話せば話すほど、ところどころ馬鹿なこと言ってるかな。
「夜の学校でモデルガンを使ってサバイバルゲームとか、放送室に忍び込んでアニソン流してみたりとか」
「とりあえず、変な性格だったんだね。碧も真も」
「変な性格とは酷いな。そうでなければ学校なんてつまらないじゃないか」
「そうなのかな・・・」
「まぁ大体怒られてたのは碧のほうだけどな。あいつを見捨てて逃げたりなんて何回もやったな」
人間としてどうかと思うが・・・。
「今のあいつはまじめだけしかないからな。あいつをこれからもよろしく頼むよ」
「ええ、まぁこちらこそ・・・」
「じゃあ、今晩はあいつ遅くなるみたいだから後日改めてくることにするわ」
「はい、お気をつけて」
彼は玄関から出ると振り向かずに片手を挙げて挨拶をした。
「おもしろい御仁だったな・・・。あ、あれは・・・」
彼の持っているかばんからちらりと見えた。一匹の蝙蝠を。
「今日はここまで、皆おつかれさま」
「おつかれさまでした!!」
柔道教室を後にして、帰路に着く。
「ただいま」
「お帰り。今日、真っていう人が来てたよ」
「真が?珍しいな。あいつ、何のようだったんだ?」
俺は柔道着を洗濯機に放り込みながら聞く。
「さぁ。たぶん、夕食にでも誘おうとしたのじゃないかしら?」
「ああ、なるほどね」
「それと・・・。私の気のせいかもしれないけど、一応話しとく」
「なに?」
「私以外の吸血鬼があなたを狙ってると思うわ。どこからか、あなたのことを聞いたのでしょうね」
洗剤を入れる手を止める。
「彼のかばんの中に蝙蝠が入っていたわ。ペットには見えなかったし・・・」
「真が吸血鬼と内通してるって言うのか?」
「そういう意味ではないわ。でもね、彼と一緒にこの家に入ったというのが問題なのよ。吸血鬼は一度も招かれた家には入れない。でも一度でも招かれて入ってしまえば・・・」
「もういい!!」
俺はカッとなってしまった。リムはびくっと驚く。無理も無い。でももう止めれない。友人を、馬鹿にされた気分だ。
「真はそんなことしない。たとえどんなことがあっても俺を売るようなまねはしない」
「彼のかばんに潜り込んだだけかもしれない。彼を疑ってるわけじゃないの。もし、あなたが狙われるようだったら、私があなたを守るわ」
彼女の目は真剣だった。
「相手が同族でもか?」
「私たち吸血鬼にとっては同族殺しなんて当たり前のことよ。獲物の取り合いが主だけどね」
だんだん俺の頭に上った血が下がってくる。
「つまり、俺はえさで、そのえさをとられないように守るってことか?」
「うん」
「もう、寝る」
俺は手短に言うと部屋に戻る。
しかし、俺はリムの警告を聞いておくべきだった。俺は今の立場を完全に理解していなかった。
ついでに評価の方もよろしくお願いします。難しいとはおもいますけど