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丙午の巫女 ‐前書‐
1966年の夏の思い出は、あれから55年が経とうとしている今でも、決して色褪せない。
大学で日本史を専攻した後、地方の新聞社に入社したばかりだった当時の私は、初めて貰った取材任務に胸を躍らせていた。
取材先は、田舎のとある村。ネタは、60年に一度、丙午の年だけに行われるという珍しい祭事。
私は路線バスを降りた後、喧しい蝉の鳴き声と目の中に垂れてくる汗滴に煩わしさを感じながらも、若さとモティベーションに身を委ね、夢中になってひたすら畦道や山道をぐんぐん進み、あの村に辿り着いた。
私は祭事の開催までに、祭事についての予習も兼ね、村中の寺社を手当たり次第に訪ねてまわり、村の歴史、祭事の背景を解き明かすことに努めた。
これは、後に自分がその時に集めた情報を咀嚼し、それまでに学んできた日本史の知識を活用しながらも自分なりの解釈を加え、物語風に纏めた、この村と丙午の珍祭にまつわるお話。