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おしい!

チギットリアの看板娘エマです!今日の日替わりパスタは「春野菜とリッツァ貝のパスタ」です。おすすめのお酒ですか?リッツァ貝とならやっぱり白ワイン!ちょうど安くていいのが入った所なんですよ!


「エマちゃん注文いい~?」


 今は夜の酒場営業の時間、ジッロさん達のパーティ―が勢揃いでいらっしゃいました。


「お疲れ様です!今日はどうされますか?」

「とりあえず、エール3つとフィッシュアンドチップスで」


ジッロさんの所のリーダーのフランコさんが注文されました。フランコさんはお家で食べられることが多いのでこの時間にいらっしゃるのはとても珍しいです。


「は~い!」


フィッシュアンドチップスは作り置きなので、忙しい時間とっても助かります。カウンターに戻って、木樽の栓を抜いて、木のコップにエールを注いで…。


「あっフランコじゃ~ん久しぶり~!」

「モニークさん、レンピ姉さん、ヘレナさん!お疲れ様っす」

「エール3つとフィッシュアンドチップスです、どうぞ~。レンピさん達もいらっしゃいませ」


ジッロさん達に飲み物を持っていくと、ベテラン傭兵のレンピ姉さん達もいらっしゃってました。


「エマちゃん、白ワインボトルでお願い。グラス3つね。あとゾワッグ牛のホルモン炒めも」

「シーホースのレバ刺し」

「ルーク豚の串盛り合わせで」

「白ワイングラス3つ、ゾワッグ牛のホルモン炒め、シーホースのレバ刺し、ルーク豚の串盛り合わせですね!少々お時間頂きます~」


お姉さまたちのチョイスは今日も肉一色です。


「レンピさん聞きました?ノシクさん達の話」

「ん?どの話?」

「オルグ地方の魔窟全踏破したって話っす!」

「あ~あれね。」

「やばくねえっすか。全踏破って始めたの今年の年始からですよ?魔窟九地点、四か月で踏破って!聞いたことないっすよ」

「何やってんだろうね~」

「ノシクさん達の噂聞いて、今年のうちの入団希望者の数、過去最高らしいよ~」


傭兵さん達が噂してるのは、ノシクさんとジークさん達パーティーの噂です。冬に伝説って言われてた竜の涙を大量に採掘されてからノシクさん達はちょっと有名なパーティになりました。


「そんな目立つ噂立てちゃって、ノシクさんってばどうしちゃったんだろ~」


興奮気味のジッロさんや、のほほんとした雰囲気のフランコさんと話ながらレンピさんの隣でモニークさんが呟きました。


「あれだけ目立ったらもう開き直っちゃったんですかね~?」


ヘレナさんが白ワインを飲みながら遠い目をして呟きました。

 そう、ノシクさんと言えば選ぶ仕事は基本秘密の絶対単独行動。ここ数年は夜は基本娼館で過ごされていて傭兵さん達の情報共有の場にもあまり出てこないので、表舞台には立たない人なんだとみんな思ってたんです。でも去年竜の涙を採掘された後、ある事があってすっごく目立っちゃったんですよね。



「おいお前!どうやって竜の涙を採掘してきた!」


その日、どこかの商人さんから依頼をうけたよその傭兵ギルドの傭兵さん達が、食堂でご飯をされていノシクさんとジークさん達の所に殴り込みにいらっしゃいました。傭兵さん達には情報の秘匿権があります。竜の涙の採掘主について、ノシクさん達は秘匿事項で処理されてたそうなんですけど、竜の涙と言えば相当の価格のものですから、ルーメンの傭兵ギルド連盟の中で情報統制がとれてないうちに情報を聞きつけて、力業に出ちゃった商人さんがいらっしゃったみたいです。


「馬鹿な奴ら…」


というのは、その時来た傭兵さんを遠巻きに見ていたうちの傭兵さん達の呟きです。えーっとそのノシクさんはベテランさんの間ではふれちゃいけない人で有名な傭兵さんだそうです。私はその…女性関係の方の噂しか存じ上げませんでしたが、コホン。


「適切に距離とってたら、危ないことはないんだけどね」


とおっしゃってたのはレンピ姉様。


「とりあえず、外でるか…」


あの日ノシクさん達はめんどくさそうに外に出ると傭兵さん達と通りで対峙しました。よその傭兵さんのリーダーらしき人はノシクさんに詰め寄ると、ノシクさんの胸倉をつかんで首にかけてたチェーンを引っ張り出しました。


「ふん、なんだ。みんな依頼を受け渋ってるっていうから期待したら、A級じゃないか。」


傭兵さんは誇らしげに自分の首にさげた金の認識票と見比べました。S級の傭兵さんですね。


「…おーおー。満足したかい?」


ノシクさんはげんなりした様子でされるがままです。S級傭兵さんはノシクさんのやる気ない態度に腹をたてたみたいで、いくつかののしった後、拳をふりかぶりました。


パシッ


「なっ!なんだお前っっ!」


ふりかぶったS級傭兵さんの手を掴んだのはジークさんでした。


「俺達はしてない。食事中だから帰ってくれ。」


えっ…。その場で事態を見ていた人たちはみんな(それは無理なんじゃないの)と思ったそうです。隣でノシクさんは顔を掌で覆っていたとか。


「ふっふざけるな!お前らだってことはわかりきってんだよ!俺が聞いてるのは採掘の方法だ!」

「違う。ひとくじこうだ。」

「秘匿ってやっぱやってんじゃねえか!おい!離せよっ!」


S級傭兵さんは手を振り払おうとジタバタされましたがジークさんはびくともしなかったそうです。


「?ひとくじこうなんだぞ!」

「それがやったって言ってんのと同じだろうが!」

「あー。すまん、こいつ馬鹿なんだよ。わりいが今日は帰ってくれねえか?パスタの麺が伸びちまう」

「バカって何だ!」

「わかった。お前の努力は認めるからちょっと黙ってくれる?話がややこしくなる。」


馬鹿だと言われて憤慨するジークさんと呆れるノシクさんの会話に圧倒されてS級傭兵さんは自分が無視されてると自尊心が傷ついたみたいですね。それでもう一方の手で杖を振りかぶられたんです。


「A級のくせに!僕を無視するなあああ!メアーーーーー」




「傭兵っきりで鞘抜いたら、そういうことだからねえ」


後日ことの顛末を聞いたモニークさんは、冷めた目でそうおっしゃってました。あの日通り前に響いた悲鳴に驚いて見に行くと、片腕を抑えて泣き叫んでいる傭兵さんがいらっしゃいました。その後ろには座り込んで粗相されているパーティーメンバーと思しき方々。傭兵さん達の前では杖を持った手を咥えて尻尾をふるジークさんのわんちゃん(大狼)。



街の声『何がどうなったのかはわからなかったけど、気付いたら泣いてた。』



仮にもS級傭兵さんの手が一瞬で屠られたということで…ノシクさんは触れてはいけない傭兵さんから、触れてはいけないパーティーのリーダーさんとしてランクアップしました。(この後以降、竜の涙について話すこともタブーになりました。)


 

「って噂してたら来た来た」


お店の入り口を見ると、ノシクさん達がいらっしゃいました。


「おーそろってんな。エマちゃん白ワインと今日のパスタお願い。」

「俺も同じので、飲み物はミルクを、俺とこいつに頼みます。」


ジッロさんはノシクさんから話を聞こうとぐいぐいとノシクさんにすりよります。つっ強い。


「ノシクさん、ジークさん!オルグ地方の魔窟の全踏破最短記録更新おめでとうございます!お話効かせてくださいよお!」

「記録更新って…、なんだよそれ」


ノシクさんは当惑した様子です。ヘレナさんとモニークさんはジークさんを囲んでわんちゃんのモフモフをわっわしゃわしゃされています!あっ!私もしたい!


「四ヶ月で九地点て踏破は最短記録らしいわよ」

「そうなの。」

「お先飲み物どうぞ~」

「ありがと」


ノシクさんに白ワインと、ジークさんにミルクの入った木カップと…わんちゃんに中鉢を渡したいのですが…うう、モニークさんとヘレナさんの距離が近くて割り込めません!お姉さまはわんちゃんのモフモフに顔をうずめてうっとりされています。


「は~かわいい~うちの子にしたいい」

「なんでこんなに毛並みサラサラなの~」


ああッくんかくんかまで。私も仕事中でさえなければくんかくんかわしゃわしゃしたいのに!


「それ受け取ります。」

「ああっすみません!ミルクどうぞ!」


私としたことが、お客さんであるジークさんに気をつかわれてしまいました。ジークさんはノシクさんと組むようになってからオーガの仮面を外すようになって、今はゴーグルをつけてらっしゃいます。


「ありがとうございます」


ジークさんは、カップを受けとるとぼそりとお礼を言ってくれました。


「ゆっくりしてくださいね!」


はじめてラッザロ傭兵ギルドにいらした時は血みどろでびっくりしましたが、ジークさんは料理を持っていくと必ずお礼を言ってくれるんですよね。最近思うんです、ジークさんって結構かわいい人なんじゃないかなと。


「フランコ、本面白かった。ありがとう」


ジークさんは雑嚢から一冊の本を取り出すと、フランコさんに手渡しました。


「へ~二人本の貸し借りしてるの?」


モニークさんがシーホースのレバ刺しにソースをつけながら尋ねられました。


「この前古本屋であったんですよね、どうでした?これ。」


温和なフランコさんがニコニコしながら尋ねました。


「先が読めなくて面白かった。わからない単語もあったが。」


二人が貸し借りされてたのは数年前に流行った恋愛小説でした。私も読みましたよ!


「へえ何て単語ですか?」

「ニャンニャンだ」


「はい?」

「“ニャンニャンする”って何だ」


「……」


ニャンニャンって…きゃ~恥ずかしい!私はそっとその場を離れました。押し黙るみなさん。フランコさんは笑顔をはりつけたままノシクさんを見ました。ノシクさんはけろりとしています。


「どういう意味だっけ?ヘレナちゃん。」

「ふふ、ノシクさんはよくご存知ですよね?」

「主人公が住んでる寮の大家が二人でニャンニャンするかって聞いてた。ニャンと言うのは猫のなき声だろ?大家が猫を飼ってるって説明はなかったけど、猫をかわいがるって意味か?」

「おしい!もういっちょ!」


ノリノリのレンピさんとモニーク、ジークさんニャンニャンの意味を知らないって…えー?


「もう一つは…主人公が断ってたから」

「から?」

「何か…悪いことか?」


ブーっ。隣でロッコさんがフィッシュアンドチップスを噴出しました。


「あははははっ」


お姉さま三人組も大笑いされてます。その後ニャンニャンの意味をしりたがるジークさんとはぐらかすノシクさん。二人の会話にレンピさんが入って間違えた意味を教えたりして、みなさんとっても楽しそうにお話されてました。



最後まで読んでくださった皆様本当にありがとうございます。

お気づきの方もいらっしゃるかと思いますがこの話はもう一つの話と合流します。

途中更新が順序よく更新ができなかったり、登場人物を上手く活用できなかったりしましたが色々勉強になりました。

二回目になりますが、読んでくださったかた本当にありがとうございます!!

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