表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/12

9話 漢、ワイバーン。

ご無沙汰しております、長らく更新が途絶えておりましてもうしわけありませんでした。

この回限定でワイバーン視点でお送りします。よければ読んで下さい。


★この回限定の登場人物紹介★


漢、ワイバーン(へっぽこバーン)  ワイバーン集落の底辺のワイバーン。子だくさん。大狼の友達。

金輪の大親分(大物バーン)     ワイバーン集落のドン。へっぽこバーンに肉を貸している。

赤頭の兄ちゃん(ノシク)

緑頭の兄ちゃん(ジーク)

パカラオ  ワイバーン好きな魚、タラみたいな魚類

 ぎ ぎゃお? 《へたれやないか、何のようや》


俺。漢、ワイバーンは、傭兵の(あん)ちゃんらと一緒に『ジズ様の(うなじ)』に来た。手にはよく肥えたパカラオが一匹ある。


ぎゃお!《これ、全部替えてくれ!》


玉の管理してる兄貴にパカラオを差し出す。


ぎゃおぎゃお 《全部やと?ツケ残っとるんちゃんか》

ぎゃお 《今日はいける気がすんねん、あるだけ全部で勝負する…》

ぎゃお…ぎゃおーぎゃ《えらい強気やな、また借肉してもしらんで…七個や、とってき》


玉の兄貴は、パカラオを神棚におくと、岩玉の山を鼻でさした。選ばせてくれるらしい。


ぎゃお 《おおきに…》


俺は慎重に岩玉を見繕った。


わん わん! 《漢さん、大丈夫ですか?》

ぎゃお 《あんちゃん、おおきにな。大丈夫や、こちとら何百回も勝負しとんねん、どの玉がええか、玉が教えてくれる》


 狼の兄ちゃんが心配して岩選びに着いてきてくれた。この兄ちゃん、最初はけったいな奴やと思ったが知れば知るほど気持ちのいい漢や。賭けのイロハもしらん若造やと思っとったが、これが意外に商売ってもんをわかっとる。ええパカラオが手に入ったんも、この兄ちゃんのおかげやしな。この兄ちゃんは俺に勝利のジズ様を運んでくれる気がする。


 俺は両手で岩玉を抱えて『ジズ様の項』の列にもどった。緊張で目が乾燥するわ。俺が目をぱちぱち瞬いてたら、赤頭のあんちゃんと緑頭のあんちゃんがジズ様の項を眺めて話だした。


「`+*L`KPL+K<}P*KOP*``+*+{`L{`*{」

「`*}>*+>+*L`+}*?*_}*P+`{}+}*」


赤頭の兄ちゃんのつぶやきに緑頭の兄ちゃんが頷いた。柔肌の魔族の言うてる言葉はいまいちわからんが多分、あの穴に入れるのは難しいて言ってるんやろ。


ぎゃーお《普通はそう思うやろな》


大当たりの穴はてっぺん少し下、真横についてる。『ジズ様の項』は首の下部分は風化し岩玉で研磨され扇形のすり鉢状、最頂部は塔状になってる。


ぎゃっ ぎゃっ!《父ちゃん がんばれ!》


今日は子どもたちが応援に来てくれた。今は狼の兄ちゃんの背で遊んでる。


ぎゃっ! 《まかせとけ!》


『ジズ様の項』のルールはシンプルや。買った玉を穴に入れる。初発は尻尾で叩く。このシンプルな球技の中に、俺の全宇宙がある。

 前の奴が七十点の穴に入れた。俺がつぎこんだパカラオを持ってって喜んで帰りやがる。


ぎゃお ぎゃーお《へたれがえらい数の玉もっとるのお》


後ろから野太い声が聞こえた。


ぎゃ《…金輪の大親分さん》

ぎゃお ぎゃお ぎゃぎゃーお《いいかげん身の程を知ったらどうや?》


金輪の大親分や。今日こそお前の天下をワシがもぎとったるからな!いつもアホな利肉をとりやがって!


ぎゃお… ぎゃぎゃお《こどもらには…わての背中みて育ってもらいたいと思っとります》

ぎゃーお ぎゃおぎゃーお 《はん、逃げた上さんに着いてったほうが幸せやったかわからんで》

……ぎゃお、ぎゃおぎゃお 《…言っていいことと悪いことがあるんちゃいますか》

ぎゃーお ぎゃーお 《はん、お前の尻尾買ったってるのは誰やおもてんねん》


ぐるるるるるるるる


狼の兄ちゃんが威嚇の声を出した。


ぎゃおっ ぎゃおぎゃおぎゃお《ええんや兄ちゃん…勝ってるもんは負けとるもんをいびってええ。それがジズ様のルールやからな》


 ついに俺の番が回ってきた。そそりたつジズ様の項の前に立つ。ここから見ると、ジズ様はでかい。百パーセントの馬力でいっても、項の半分もいかんやろう。それにここは空に浮かぶ岩島、いつも強い風の中、風の抵抗もある。まずは初投。玉置き場に岩玉を置いて、そっとその横に尻尾を置く。


ばいーん!!


この後のために、俺は四割位の力で玉をしばいた。岩玉はごろごろと上がり、ジズ様の項の半分もいかんと帰ってきて、下に落ちていった。


ぎえっ ぎえっ ぎえっ 


後ろから金輪の親分たちの笑い声が聞こえてきた。


ぎゃお ぎゃーお《きばれよ!父ちゃん!》

ぎゃお…《おおっ ぶるってへんぞ…》


そうや、この日のために、俺は昨日兄ちゃんたちと猛特訓をしたんやからな!俺は買ってきた玉を一列に並べた。


ぎゃお ぎゃおぎゃーお!《あの並べ方!あいつワイバーンブレスをするつもりか!》


俺の作戦に気が付いた玉の兄貴が唾飛ばして叫んだ。


わふ!《漢さん!》


狼の兄ちゃんが俺にとっておきの一匹を投げてくれた。マミ兎の肉や。俺は気合を入れてマミ兎の肉を食らう。


ぎゃお!《あいつ本気や!みんな見たってや!》

ぎゃっ ぎゃお《おお、久しぶりやな》

ぎゃお《これで外したら恥ずかしいどお》

ぎゃお ぎゃっ ぎゃおっ《へたれは何してもへたれやがな》


玉の兄貴が、たまげた声をあげる。見物の奴らが笑いながら見とるけど、そんなんどうでもええ。




ぎゃ ぎゃ ぎゃ ぎゃ ぎゃ ぎゃああああああー!




固有魔法の捕食による身体強化で尻尾を限界まで強化する、尻尾の骨がミシミシと音を立ててでかくなり、筋肉が皮膚を突き破って腫れあがる。新しい皮膚が強い筋肉を覆うように生えていく。くぅ~っ目がちかちかしよる!




ぎゃっ ぎゃおーーーーーー!!!《見晒せ!俺の漢気やあああああ》




ドドドドドーーーオオオオオオオオオオオオオッッッ



俺はいきりたった尻尾で並んだ岩玉を連打ちした。体を回しながらスピンで玉を打っていく。玉は後ろの玉に突かれてどんどん高く崖をさかのぼっていった。


ぎゃおおおおおおおお《おっらあああああああああ》


最後の一投を渾身の力をこめて打ち切ると、玉は連鎖して打ちあがり、一番上の玉がさらに加速した。


わん わんわん!《上がれ!上がれ!》

ぎゃっ ぎゃっ《いけー!!》


玉は登っていく。


ぎゃお…《頼むで…》


赤頭「{_{*+>>+*_」


玉は落ちることなく、てっぺんまで打ちあがった。


ぎゃおおおおおおお《ダメ押しやああああ》


俺は残りの魔力を全部つかって、ブレスを吹きかけた。


ゴオオオオオオオオオオ


俺の口から炎の波が吹きあがり、落ちようとする玉の逆風を吹きかける。まがれ!まがってくれ!俺はジズ様だよりでぎゅっと目をつぶった。去って行った上さんの後ろ姿が目に浮かぶ。


ぎゃお 《父ちゃん…》


いつも腹好かせてる子供達にお腹一杯食わせてやりたいんや!


……《俺は、俺はどうなってもええ!》


祈るワイバーンの隣でノシクがジークに目配せをした。


そよそよ


風の吹く音と共に、球は不自然なほど綺麗に岩肌にそって真横に行き、入るはずのない大穴に玉が入った。






ぎぇ?《えっ?》

ぎゃっ?《はあ?》

ぎぇぎぇ《えええ??》





ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ~ カンカンカンカンカン~






 大当たりの穴に入った岩玉は、『ジズの項』とワイバーン達が呼ぶ遺跡の脊髄に当たる骨の穴と滑りぬけ、中央の尻尾の末端につけられている鈴をならした。


鈴の音はワイバーンの空島全島になりひびいた。


ぎゃっ ぎゃぎゃぎゃ??《えっうそ?ほんまに?大当たりいれたん?》

ぎゃお ぎゃお《誰が入れたん?だれだれ?》

ぎゃお!《へたれや!へたれがやりよったらしい!!》

ぎゃおぎゃお!!《嘘やん!ほな代替わりか?あいつが大親分になるんか??》

ぎゃお ぎゃお~《えらいこっちゃあ~》


大どんでん返しにワイバーン達は混乱し、辺りは騒然となった。今だに自分がなした偉業が信じられず、口をあけてつったっている漢、ワイバーン。


…《ほんまに俺が、やったんか?夢やないんか?》

ぎゃお ぎゃーお《父ちゃん…》


彼の所に子供達がおそるおそる近づいてきた。


ぎゃっ 《お前ら…》

ぎゃお ぎゃお《父ちゃん…やったね》


ぐすっ 子ワイバーンが涙を流しながら漢ワイバーンにかけよる。



ぐぎぎ…ぎゃ ぎゃ ぎゃひ~《うっ くそっ こんなんで涙が…涙がでよる~!!》



漢ワイバーンは、子供達を抱きしめて泣いた。それは漢ワイバーンにとって初めてながした感動の涙。


「あ!うそ!」

「まじか!」


チリーン カンっ カンッ カンッ


漢ワイバーンの熱い涙は、こぼれだすと共に、みるみるうちに形を持ち、青紫色の宝石となっていくつも足元に零れ落ちた。


「わん わんわん!」


ノシク、ジークと大狼は這いつくばってその宝石を拾い集めた。漢ワイバーンの目からは、まだまだ零れ落ちようとしている。


ぎゃぴ~


ぼろぼろと零れ落ちるそれは、まごうことなき竜の涙だった。転がりおちた石の中には、運悪く空中へ投げ出されてしまうものもある。二人と一匹は目を見合わせた。


「一粒五〇〇万ーーー!!!!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ