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第430話:伝説級スキルドラゴニカ。


「シルヴァ殿の協力により、自分の魂の記憶に触れる事が出来た」


 魂の記憶……? 自分の魂の記憶に触れる?

 俺が自分の前世の記憶を引き出すようにシャイナもシルヴァの力を借りて……?


「自分の前世を思い出したのか?」


「そこまで完璧に……じゃない。それに思い出した、というよりその人物の記憶を覗き見しているみたいな感覚だった」


 自分っていうイメージがわかないのは理解できる。

 俺だって最初は違和感凄かったし。でも深く対称を理解すればするほど自分との繋がりの深さを感じるんだ。

 だって元はそいつも俺なんだから当然だ。


 多分シルヴァの力で無理矢理魂に刻まれた記憶を閲覧した形なんだろう。


「それで……以前の私はその、サムライ……という職業だったようだ」


 サムライだって……? なんでここでサムライなんて日本の文化が出てくるんだ?


『別におかしい事じゃないわよ。シャイナの前世がこの世界とも限らないし、別の世界には君の世界に似た要素があったかもしれないし』


 ……そうか。

 そうなるとサムライって名前が同じでも別物の可能性もあるし、その世界に日本のサムライが転生して……って可能性もあるしこりゃもう分かんねぇな……。


「私のパーティーにはドラゴニカ使いが居たんだが、彼はジュードという名前で……それはもう恐ろしい力だった」


 ドラゴニカ……ドラゴンの血肉を百体以上喰らった者にのみ発現すると言われている伝説級のスキル。

 俺が一時期偽装の為にドラゴニカ所有者という事にしてた事があったが、本物はどんなんだったんだろう?


「彼は……ジュードはドラゴンキラーと呼ばれていて、その過程でドラゴニカを習得したらしい」


 やはりドラゴンを山ほど討伐していた事が何かのトリガーになっていたんだろうか?


「しかし……ドラゴニカというスキルは竜の力を身に宿して超強化されるのと引き換えに、恐ろしい副作用があったんだ」


 シャイナは遠慮がちにこちらをチラチラと見ながら、何か言いたそうにしている。


「副作用ってのはなんだったんだ?」


「……ある意味ミナトもドラゴニカのような状態だろう? だから心配なんだ……。ジュードは、竜の力を使いすぎて……」


 シャイナの語る副作用というのは、予想外の物だった。

 てっきり身体に負担がかかって心身がボロボロになっていくとかそういう類だと思った。

 ある意味ではあっているのかもしれないが。


「自らも竜になってしまうのだ」


「竜になる……? ドラゴニカの使い過ぎで自分が竜になるってのか? だとしたら俺の心配はしなくていい。俺はもう六竜の一人……とっくに人間なんかやめちまってるさ」


「そうか……。六竜の力を使う事がミナトにとって負担でないのならいいんだ」


 俺もママドラの力を使うのが負担に感じていた時期はあった。

 人の身体のまま竜の力を使うというのはそれだけ代償も大きい。

 俺はママドラが時間をかけて俺の身体を適応できるようにしてくれたおかげで問題なかったが、一歩間違えばジュードという男と同じ未来を歩んでいたかもしれない。


「竜になったジュードは、どうなったんだ?」


「自我を失い、それは恐ろしい竜となって世界を荒らしまわったと聞いている。私が知っているのはそこまでで、彼がどうなったのかは……」


 当時のシャイナはそのジュードってやつとどういう関係だったんだろう。別に知りたくもないけど。


『聞くのが怖いの?』

 世の中には知らなくていい事ってのがあるんだよ。


「きっと前世の私はジュードの事が好きだったんだろうな」


『あらら』

 うへぇ……聞きたくもねぇ内容だよ。なんでそんな事俺に言うかね。


「私はミナトに彼のようになってほしくない。でも……その心配は要らないんだな。良かった……必ず、無事に帰ってきてくれ。ミナトなら魔王を倒せると信じてるよ」


 そう言い残しシャイナは部屋から出ていってしまった。

 俺に妙なもやもやを残して。


 そんなもやっとした俺に声をかけてくる奴がいた。

 ママドラではない。


 俺の記憶の中にいる、前世の一人なのに一切俺に主導権を握らせようとしない変わった奴。

 明らかに俺の前世の中では異質な存在だ。


『ふん、無事に戦いから帰ってきたらあの小娘に教えてやれ。ジュードは自らを呪って死んだとな』


『うわ、出たわね邪竜、ひっこめーっ!』

『黙れ年増め』

『キーっ!』


 まてママドラ。……邪竜、お前ジュードとシャイナの事知ってるのか?


『……ジュードという男はドラゴニカの副作用で自我を失い、今まで殺してきた竜の怨念に憑りつかれて世界を荒らしまわった。人間共はその竜を恐れ、その禍々しさからこう名付けたのだ……邪竜、とな』


 は、はは……なんだよそういう事かよ。

 それならシャイナに言ってやれば良かったのに。


『儂は最早あの少女に合わせる顔など無いよ。思い出していないようだがあの者を殺したのは儂だ』


 ……なんだって?


 俺も、シャドウ……ゲイリーの作った空間内で奴の精神汚染をくらい、シャイナをこの手で殺してしまったと錯覚させられたが……。


『本当だ。儂が殺した……そして、愚かな事に自我を取り戻してしまった。目の前には自分を慕ってくれた女の死体が転がっている。儂の手は、牙は、血にまみれていた』


 ……。

 俺は何も言えなかった。


 疑似的にとはいえ、俺は邪竜と同じ気持ちを味わった事がある。


『しかしあの少女も輪廻転生……生まれ変わったようで良かった。出来る事なら儂の事など忘れたままでいてほしかったがな』


『あーあ、つまんないの』


 ドシリアスな空気をママドラが破壊する。


 なんだよ急に……。


『だってミナト君ってば他の男の話されるのがつらいとか嘆いてたくせに結局自分の話だったじゃないの』


 ……あ、そうか。そういう事になるのか。


 シリアスな空気の中こんな事を想うのは邪竜に申し訳ないのだが。


 とてもすっきりした気分だ。



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