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第402話:災厄の始まり。


『ミナト、ミナト聞こえるか?』


「ん? シルヴァか」


 ちょうど良かった。お前に話があるんだよ。


 リリィの力の事やデートを取り持つ事になってるからその辺の話を纏めておきたかったのでシルヴァからの連絡は非情にありがたい。


『ミナトから僕に話があるというのはとても興味深いがね、現在それどころでは無くなってしまった』


 じわりとシルヴァの声から焦りが伝わってきた。これまた珍しい事もあるものだ。

 リリィがここに居るというのに何をそんなに焦ってるんだこいつは。


『今同時多発的にあちこちの街が魔物の群れに襲われている』


 ……はぁ?


「ちょっとどうしたんですー? シルヴァ様から通信なんですよね? わらわも話したいですーっ!」


「ちょっと待て、今かなりまずい事になってるらしい」


 というか各街に障壁発生装置はどうした? せっかく設置してきたってのになんでそんな事になった?

 それとも障壁の周りに魔物が集まってるって話か?


『いや、それがな……どうやら障壁の内側から発生しているらしい』


 なんだって……?

 何をどうやったら街の中から魔物が湧くんだよ。


『それが分かれば苦労はしない。その調査も含めて早急に対処にあたってほしい』


 それは確かに急がないとまずいな。街の人達は魔物から逃れようと思ったら障壁の外に逃げるしかなくなる。


『リリアは英傑達がいるから問題無い。現在拠点にいるメンバーでシュマル全域をなんとかカバーする。君は先日と同じくダリル方面を何とかしてくれ』


 俺一人でダリル全部をか!?


『幸い今の所ダリルで襲われているのは王都とシャンティアだけだ。転移が出来る君ならなんとかなるだろう』


 今リリィが一緒なんだがこいつはどうする!?


『正直手が回らない。その場に置いていくか連れて行くかミナトの判断に任せる』


 分かった。とりあえずシュマルの防衛隊にも協力を要請しとけ!


『既にしてある。その辺は抜かりないよ。君はとにかく早くダリルへ向かってくれ』


「いったい何がどーなってるんですー!?」


 リリィが我慢できなくなって俺の袖を無理矢理引っ張り出した。


「今あちこちの街が魔物に襲われてるんだよ。悪いが俺と一緒にダリルへ来てもらうぞ!」


「えっ、ダリルですか!? 一度行ってみたかったんです……ってうわっ、ここどこーっ!?」


 まだリリィが話している間に王都ダリルへ転移した。


 真っ先に城の中へ移動し、玉座のある間に行くとライルが兵士たちに指示を飛ばしている所だった。


「ライル! 状況は!?」


「おお、ミナト殿! 緊急事態故に手短に説明させてもらうぞ。魔物が百体近く街の中に現れた。現在騎士団の方で対処している」


「戦力は? 対処しきれそうか? 強力な魔物がいるかどうかも教えろ!」


 俺がライルにまくし立てると、隣りから「強力な魔物はいないですねー」とリリィ。


「そうか、索敵系の力があるんだったな。この街の中に強い魔物は居ないんだな?」


「いないですねーびっくりするくらい雑魚っぽいですよー?」


 リリィは両こめかみに人差し指を当てて自分をぐりぐりやるように指を動かしながら答えた。

 その仕草が索敵中の動きらしい。見るからにアホっぽい。


「信じていいんだな?」

「わらわ嘘つかない!」


「ライル、強力な魔物は王都内には居ない。その辺にいるような危険度の低い魔物百体なら兵士だけで対応できるか!?」


「うむ、それなら問題無く対応できるだろう。いや、なんとしてもこちらで対応させてもらう。もし他の街も同じ事が起きているのならそちらへ行ってやってくれ」


 俺はライルの言葉を信じ、王都を後にした。


 兵士がそれなりに居る王都ならば問題無いだろう。

 それよりもシャンティアが危ない。


「うわわーっ! 目が回りますーっ! 今度はどこですかー?」


「ここはシャンティアって街だ。……くそっ、魔物だらけじゃねぇか!」


 シャンティアは既に人の姿はほとんどなく、魔物が溢れていた。

 人間の死体がいくつか転がっているが、どうにも人の気配が少なすぎる。

 街の外に避難しているのならばいいのだが……。


「ミナトミナト、ここの魔物達なんだか変ですー」


「何が変なんだよ」


 俺は飛び掛かってくる魔物を切り伏せながら言葉の続きを促す。


「だって、よく見て下さい。この魔物達……」


 リリィに言われて気付いた。

 いや、もしかしたら気付いていたけれど気付きたくなかったのかもしれない。


 街にあふれた魔物達はそのほとんどが中型サイズ。

 大体俺達と変わらない大きさの魔物ばかりだ。

 そして……。


「魔物なのに服着てるなんて変ですよねー?」


 魔物でも服を着ていたり鎧を着ていたりというものは存在する。

 それなりに知性がある魔物ならばそれくらいの事はよくある事だ。


 しかし、ここに居る魔物達は……どう見ても知性を感じる事が出来なかった。


 狼型、猿型、爬虫類型、その姿は様々だが、皆同じように奇声を発しながら暴れ回るだけだ。


「うわっ、こっちきますよーっ!? やっちまいますか!?」


 リリィの奴急に好戦的になりやがって……。

 さっき俺が褒めまくったからその気になっちまったらしい。


「待て……待ってくれ」


 ここに居る魔物達は……おそらく全て街の住人だ。


 どうする? どうしたらいい?


「ママドラ、何かいい方法は無いか?」


『ジンバの時にやったような事が出来るなら対処は出来るでしょうけど……この数を相手に君はそれを出来る自信あるかしら?』


 ……無理だ。


 あの時はジンバの精神力、ネコの回復力などいろいろな要素が合わさって初めて成り立っただけだ。


 俺だけでどうこうできる問題じゃない。


「どうするんですか早く決めてくださいーっ! やっちまいますよーっ!?」


「ダメだやめろ!」


 俺は今にもよく分らん呪文を唱えようとしているリリィの腕を取り、走った。


 どうしていいか分からない。

 逃げるしかなかった。


 クソが! キララの野郎がまさかこんな陰険なやり方をしてくるとは……。


 いや、どちらかというとこれはギャルンの仕業かもしれない。

 奴が俺に対する嫌がらせでやったと考えるのが一番しっくりくる。


 畜生め……!


 ……街の住人が魔物化?


 だとしたら。


 レイラ達は、どうなった……?




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