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第398話:純潔が散った日。


 クソッ、くそっ、糞がぁっ!


『荒れてるわねぇ』


 これが荒れずに居られるか!

 俺が今までずっと苦労してもなかなかできなかったってのにあいつにちょっと教えてもらっただけで出来るようになるとか……っ、くそっ……!


「ご、ごしゅじん……ちょっと飲みすぎじゃないですかぁ?」


「よっぽど嫌な事でもあったのかのう?」


「嫌な事があったの! 酒だーっ! 酒をくれーっ!」


 俺が催促すると傍らのレナがグラスに酒を注いでくれた。


「ミナトも酒におぼれたくなる日があるんだねぇ。はい、どうぞ♪」


「うぐぅ……ぢぐじょう……あの、ばかやろうめぇ……」


 レナが注いでくれた酒をグイっと一気に流し込む。

 ちょっと気持ちよくなるだけでなかなか酔う事が出来なかった。


 でも今の俺にはこの【ちょっと】が大事だった。

 それこそ危ないお薬にでも頼りたくなってしまうような精神状態だったのだ。


「何があったか知りませんけどよーしよーし、もう大丈夫ですよぉ? いーこいーこ♪」


 ネコが俺の背後に抱き着き、やたらと優しく頭を撫でる。


「あっ、ずるい私も」


「た、たまには儂も……」


 両側からレナとラムまで俺の頭を撫でまわしはじめて、俺はなんだか情けなさと気持よさでとても複雑な気持ちになった。



「な、なんだこれは……一体何がどうなっている?」


 俺が頭をわしゃわしゃとやられている間にいつの間にか誰かが家に入って来ていたらしい。

 顔を上げると、そこにはアリアが眉間に皺を寄せていた。


「ミナト殿……何があったか知らないしいい大人にあれこれと言う気はないのだが……辛いからといって酒におぼれるのはよくないぞ?」


「やっとまともな奴きたぁぁぁぁっ!!」


 思わず叫んでいた。

 何故だろう。アリアの真面目さが今はありがたい。

 もっと怒ってほしい。


『……どんな性癖?』


「なっ、ど、どうしてしまったんだ? みんな、誰でもいいから説明してくれ。ミナト殿はいったい……」


「エクスさんと外で二人きりだったんですけどぉ」

「帰ってきたらこうなっておったんじゃ」

「絶対エクスに何かされたんだよ。トラウマになるような事を。ミナト可哀想……」


 ネコとラムはともかくレナは俺の事を分かってくれているようだ。

 そうなんだよエクスの馬鹿野郎がね……?


「なっ、まさか……ミナト殿はエクスにやられてしまったのか!?」


「そんなはっきり言わないで……つらいから」


 こてんぱんにやられてしまったのは事実なのだが、どちらかというと精神的にボコボコにされた感が強い。


「なんという事だ……まさか、まさかミナト殿の純潔が散らされてしまうとは……! 許せん!!」


「「「……えっ?」」」

 ……えっ?


「ご、ごごごごしゅじん!? どういう事ですかぁ!?」

「ミナト、本当なのか? それが本当なら儂も許せんのじゃっ!」

「ミナト、可哀想……!!」


「待て、いやいやいや待て待てそうじゃないだろ! なんでそうなった!?」


「ミナト殿……! 無理矢理酷い事をされたんだな。隠さなくてもいいぞ! 私達は皆ミナト殿の味方だ! みんな、一緒にエクスを殴りに行こう!」


 おかしい。アリアだけはまともだと思ったのに!


「……私も、キレちまったですぅ」

「許すまじエクス……地獄を見せてやるのじゃ」

「いくら元英傑王だからってやっていい事とダメな事があるのを分からせてやる!」

「皆の者行くぞ! 殴りこみだーっ!」


「まてぇぇぇぇぇっ!!」


 いくらなんでも酷い勘違いだ。

 俺があの野郎に無理矢理やられちゃった事になってるとかその誤解が辛すぎる……!


「そんなんじゃないから! 勘違いだからっ!」


「そんな……まさか泣き寝入りするつもりか!? ダメだぞミナト殿! そんな横暴を許しては……ハッ……まさか、ミナト殿……エクス殿を庇って……?」


「ちょ、ちょっとアリアさん……?」


 なんだかこの子の頭の中でどんどん俺とエクスの関係がこじれていくのを感じる。


「そうだったのか……そんな目にあったというのにそれでもミナト殿はエクスの事を……ぐぅっ……歯痒いぞ! しかし健気だ! 悔しいが……応援、させてもらおう。私にも酒をくれーっ!」


「ごしゅじん……私がいくら積極的になっても相手してくれないのってそういう事だったんですかぁ?」

「け、けしからん! けしからんのじゃっ! 儂は認めんぞ!?」

「み、ミナト、嘘だよね? ミナトがエクスの事……違うよね?」


「お前らいい加減にしろーっ!!」


 俺の悲痛な叫びはなかなか信じてもらえず、怒りに震える皆を押さえるのは本当に大変だった。

 それと、頭の中でゲラゲラ笑い転げているママドラに軽く殺意を覚えたのは言うまでもない。




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