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第385話:ヤバみの片鱗。



 オリオンに妙な誤解をされながらも俺は今世界各国で同盟が締結された話や障壁発生装置の事を説明した。


 オリオンは既に同盟の話は知っていたようで、むしろその同盟話に俺が関わっていた事を驚いていた。


「本当に君という人は大きな事件の裏に必ず居るな」


「人を諸悪の根源みたいに言うのやめてくれる?」


「はは、すまない。しかし君が関わっているという事は同盟という眉唾だった話も本当のようだな。新たなダリルの王が一人でそこまでできる訳ないと思っていたのだ」


 こいつもひでぇな。ライルはなかなか出来るやつだぞ?

 もうすぐ嫁……? さんだって出来るぞきっと。


「まぁそういう訳だからコレの扱い方はさっき説明した通り。後の事は頼んだぞ。それと……」


 俺はオリオンの隣で固まってるライアンにジト目を向けながら言う。


「こいつに悪さされないような場所に置いておけよ」


「そ、そんな事しませんってば!」


「どうだかな……人の性根ってのはそう簡単に変わるもんじゃねぇんだ。お前はこれから先、人は変われるってのを俺に証明してみせろ」


 ライアンはしょんぼりしていたが、俺の言葉の真意に気付いたのかパァっと顔を明るくしてこちらを見つめた。

 その眼はやめてほしい。どう反応していいか困る。


「分かりました! 俺、ミナトさんの期待に必ず応えてみせます!」


「いや、悪ささえしなけりゃなんでもいいから」


「そんな冷たい事言わないで下さいよ。本当は俺期待されてるって分ってますから! 頑張ります!」


 ……勝手に勘違いしてキラキラした目で見ないで。

 ほんと俺はお前を疑ってるだけだから……。


「オリオン……念のためにそれの安置場所はこいつに教えるなよ」


「そ、そんなぁ~っ」


「ははは、君が警戒する気持ちも分からないでもないがね、実際ライアン君はよくやってくれているよ。君が国の英雄だと知って自分の罪を悔い、自ら私の元で働きたいと申し出てくれたのだ」


「だから俺はそういう背景とかどうでもいいんよな。だったらオリオンが責任持ってこいつを更生させてくれよ?」


 ライアンは「日々精進しますっ!」と眩しい笑顔を向けてくるし、オリオンはただ笑うだけ。


 後はこいつら次第ってところか。


「じゃあ俺の用は済んだからもう行くわ。他の街も回らなきゃならないし」


「ああ、あの少女も一緒じゃ無いようだし食事でもと思ったがそういう事なら仕方ないな」


「ふふ、今度来る時はネコ連れてくるから腹いっぱい食わせてやってくれよ」


「か、勘弁してくれ」


 未だに前回ネコが暴食の限りを尽くしたのがトラウマになっているようだ。


「じゃあまたな」


 二人の元を後にした俺は、次の目的地シャンティアへ向かう。


 ノインに貰った元自分の家があった場所の前に転移すると……新しい家が建ってた。


「おぉ……なんだか複雑な気持ちだな……」


 ここを出て行った身だから自分勝手な感想なんだが、昔住んでた家があった場所を覗きにいったらもう違う人が住んでたみたいな気持ちになってる。


「……ミナト、様?」


 振り向くと、そこにはレイラが立っていて、俺と目が合うと胸に抱えていたパンの入った袋をぼとりと落とした。


「ひ、久しぶ……ぐわっ!?」


 言い終わる前にアメフト選手のタックルばりの勢いでレイラが俺に飛びついてきた。


「あぁ、ミナト様、ミナト様、本物のミナト様ですよね? ずっと待ってました私ずっといい子にしてましたよ? 褒めて下さいミナト様……!」


 レイラが俺の腹に顔を押し付け頭をぐりぐりしてきた。

 お腹がなんだかしっとりしてきた気がする。


「れ、レイラ……泣くなって」


「だって、だってぇ……ミナト様全然帰ってきてくれないんですもの……私が幾夜枕を濡らしていたかご存知ですか……?」


 ……れ、レイラってこんなに俺の事好きだったの?

『それは前からじゃないの……どうして気付くのが今更なのかしら』

 そ、そうだったのか……。好意を向けられてるのは気付いていたけれどここまでとは……。


「お、おいレイラ……その、なんていうか……悪かったな」


「ミナト様はずるいです。私は戦う事なんて出来ないから待つしか無い……なのに私の所にまったく帰ってきてくれないし家ごとどこか持っていっちゃうし……」


 レイラは俺をぽかぽか叩きながらボロボロ泣き続けた。

『今までずっと我慢してきたんだからこうなっても仕方ないわよ』


「なかなか会いにこれなくてごめんな」


 レイラの頭を撫でると、レイラはやがて泣き止んだが、「帰ってこれなくて、とは言ってくれないんですね」とボソリと呟いた。


「もうミナト様の帰るべき場所は他にあるんですね……」


 ど、どどどどうしたらいい? ママドラ、頼むから女性視点でアドバイスを……!


『ふふ、自分で考えなさいせーしょーねん♪』


 お、おいママドラ、ママドラ?


「ミナト様がどんどん遠い人になっていくのを感じます……」


 ぐっ、ママドラは頼れない。


「た、確かに今俺はリリアの家を拠点にしているが……そうだ、レイラ、お前も今度連れていってやるよ!」


「……お前、も。って事はみんなそこにいらっしゃるんですね。今ミナト様って何人の女性と一緒にお住まいなんですか……?」


 えっ? な、何人だろ。


「えっと、ひー、ふー、みー、よー……」


「もう結構です」


 レイラの声がワントーン低くなり、俺の身体にしがみ付く手に力が込められていく。


「れ、レイラ?」


「ミナト様。今日は絶対に帰しませんから」


 あれっ、レイラの目が、どこかのサイコ女みたいになってる……!?





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