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第377話:アホ女の本気。


 夜になるとやたらご機嫌なリリィと、難しい顔をしたシルヴァが帰ってきた。


 彼は俺の顔をチラリと見て何か言いたそうにしていたが、リリィにずるずると引っ張られて消えていった。


 これはいよいよ間違いが起きてしまうかもしれない。


 俺も自室に帰りベッドに転がって休んでいると、軽いノックの後ドアが開く。


「返事もしてねぇのに勝手に入ってくるなよ」


「ふふ、すまない。だが僕とミナトの仲だろう? そのくらいは許容してもらいたいものだね」


「俺はお前が相手なら尚更しっかり確認してから入ってもらいたいもんだが?」


 どうせ部屋から追い出した所でこいつの力で俺を監視するだろうから言う事を聞いておいた方がまだマシなのだが。


「で、試してみたんだろ? どうだった? リリィのあの様子じゃ上手くいったんだろうけどな」


「ふむ、確かに劇的な効果があった。しかし何故だ? 僕には理解しかねる」


 俺がシルヴァに教えた魔法の言葉はこれだ。

【上手く出来たらなんでも一つ言う事を聞いてやる】

 俺の予想が正しければこの言葉だけでリリィは手を抜かなくなる。

 あいつがもし本当に才能に溢れているようなら劇的な効果が出るだろう。

 そして、俺の予想は見事に的中していたらしい。


「しかしあの言葉で成果をきっちり出してくるって事は……認めたくないがリリィは余程器用なんだな」


「僕も驚いているよ。君に言われた通りに言ったら新しく教えた事を一度で再現してみせたからね……今までの苦労は一体なんだったのかと思ったよ」


 ……よほどマリウスの能力と相性がいいのか、それとも奴の吸収能力の性能がいいのか分からないが、そんなにほいほい上手くいってると腹立ってくるな。相手がリリィじゃ無ければこんな気持ちにはならんだろうけど。


「でもお前本当に大変なのはこれからだぞ」


「大変? 僕が? どうして?」


 シルヴァは平然と笑っている。


「だってお前なんでもいう事聞くって言ったんだろ? でリリィはそれに応えたわけだ。あの女がお前にどんなアホなお願いをしてくるか見ものだなと思ってな」


 きっと頭真っピンクお花畑できっついお願いをしてくるに違いない。


「もう今日の分の願いは叶えてきたが? 特に困るような事は無かったよ」


 ……なんだって? まさかこいつ意外と人間とアレしてアレする事に抵抗が無いんだろうか? あんなにリリィの事迷惑そうにしていた癖にもう済ませてきたとはどういう事だ。

 事と次第によっちゃ俺はこいつの事を許せないかもしれん。


『君って人は……自分でけしかけておいてそれは違うんじゃない?』


 馬鹿野郎。俺はシルヴァが困るだろうと思ったからけしかけたんであって、ただこいつがおいしい思いをしただけだったら到底許せるもんじゃないぞ。


『……君って本当に他者の幸せに敏感よね?』


 そりゃそうだろ。ずっと俺と一緒にいるママドラなら分かってくれるよな?


『うーん、分かりたくはないけれど、君が根暗で陰険で嫉妬の塊って事は理解してるわ』


 ごめんやっぱり分からなくていいから忘れてくんない?


「しかしまさか手を繋いで歩きたい、なんてお願いされるとはね。普段の態度に似合わず随分可愛らしいお願いだなと微笑ましさすら感じてしまったよ」


 ……は?


「ちょっと待って。もう一回言ってくんない?」


「だから可愛らしい願いだなと……」

「そこじゃねぇよ。何を頼まれたって?」


「だからそれは、手を繋いで歩きたい。だがどうかしたかね?」


 ふふ、ふはははは。


「そうかそうか、それでお前は仲良くリリィとお手手繋いできたって訳か? そりゃよかったリリィも可愛い所あるじゃねぇか」


「そうだろう? 僕は彼女の事を少々誤解していたのかもしれないね。理解に苦しむ性格なのは変わらないが」


 ふふ、そうかそうか。

 手を繋いで歩いただけね。なるほどなるほどそりゃあ良かったじゃないか。


 ふふふふ。


『めっちゃ嬉しそう……』

 嬉しいんだよ! シルヴァにばかりいい思いさせてたまるか!

 六竜で有能で顔も良くていい思いまでされたらたまらんわ!


『君、それ口に出して言ったら他の男性陣から殺されるんじゃないかしら……』


 ……なんで?


『自覚が無いってのはそれだけで罪なのよ?』


 ……ママドラが何を言ってるのか分からんが俺ももっと幸せになるために頑張らねば。


 それにな、俺が本当の意味で幸せになる為にはネコもラムもレナもポコナも、それにティアだってそこに居なくちゃいけないんだよ。


『……そうね。確かにそれはそう。頑張らなくちゃね』


 ああ。その為にも俺は現状で満足などしてられんのだ。


『本格的にハーレムでも作る気なのかしらねこの人』


 な、何を言いだすんだいきなり。俺にそんな甲斐性があるかよ。


『……それなのよねぇ。周りにいる子達が可哀想になってきたわ』


 なんでそうなるんだ。あいつらだけじゃなくてだな、俺はこの街に居る連中皆を幸せにしてやりたいんだよ。


 ……俺の次にな。


『正直でよろしい♪』


「何をにやにやしているんだ?」


「ん? いや、こっちの話だから気にしないでくれ」


 俺も本腰入れて精神障壁をマスターしないとな。段々コツは掴んできたし明日は出来る気がするぜ。


 そして、お約束のように俺は翌日地面をのたうちまわる事になる。



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