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第370話:夜這い。


 なんとなくとても嫌な予感がしている。


「シルヴァ、一応、念の為、万が一の場合の為にそのマリウスって奴の核が無事かどうかを確認しておいてくれ」


 俺の妙な言い回しが気になったのかシルヴァが首を傾げる。


「どういう事だ? マリウスの核を何者かが嗅ぎ付けて狙っていると? あれを知っているのは僕と、代々それを守っている一族だけの筈だが」


「違う。お前は思い違いをしてる。俺が言ってるのはそういう何かしらの目的があって狙われたとかではなくてだな、突発的アクシデントが起きてないかどうかって事だよ。とにかくいいから早く確認を取ってくれ」


 こいつなら離れた場所の人物にでも直接声を届ける事が出来るはずだ。


「……? まぁ、そこまで言うのであれば。確認を取るくらいはすぐだからね」


 シルヴァは自分のこめかみあたりを指でとんとんと叩きながら目を瞑る。


「…………」


 もごもごとシルヴァの口が動いているが、相手の精神に直接語り掛けているのに癖で口が動いてしまうというのはなんだか妙に人間味がある。


 初めてこいつに人間らしさを感じたかもしれない。


「……、……? ……!?」


 くわっとシルヴァが両眼をかっぴらいて俺を見た。


 シルヴァは眉間に皺を寄せながらしばらく通信を続け、やっと口を開いた。


「……ミナトは、これを知っていたのか?」


 その言葉だけで十分だった。

 俺の嫌な予感ってのはどうしてこう当たるんだろうね。


「これ、じゃわかんねぇよ。何がどうなってたか教えろ」


「……代々マリウスの核を管理している一族に直接連絡を取ったんだが……愚かな事にその使命を忘れていたよ」


 ……ん? 思ってたのとちょっと違うな。


「使命を忘れてたって……もう管理はしてなかったって事か?」


「元々マリウスの核は祠に安置して厳重な結界を施してあったから管理者とは名ばかりで看視者というのが正しいのだが、彼等は代替わりをして自らの使命を迷信の類か何かだと思い蔑ろにしていたようだ。僕らの時間間隔と人間のそれを一緒に考えていたのが甘かったよ」


 確かに六竜からしたら数百年なんてそこまで長い時では無いのかもしれないけれど、俺達人間は百年もあれば死んじまうからな。

 その辺を一緒にされても困る。


「で、だ。ここからが重要なのだがとにかく祠へ確認しに向かわせたよ」


「そんなにすぐ近くなのか?」


「わざわざ監視しやすいように僕がわざわざ近場に祠を用意したんだ。しかしね、確認させた所結界は既に壊れていて祠は暴かれていたらしい」


 ……マジかよ。


 シルヴァは頭を抱えて机に両肘をつき、呻き出してしまった。


「なんという事だ……万が一マリウスの核が敵の手に落ちるような事があればどのように悪用されるか……そうでなくてもマリウスの復活はほぼ絶望的なものになってしまう……ここまで隠して来た意味が……」


 こいつにとってマリウスってのは割と仲のいい相手だったのかもしれない。

 シルヴァにしては相当狼狽しているし、顔色なんて真っ青になっている。


 でもなぁ。


「なぁ、六竜の核ってのはどんな形をしてるんだ?」


「……僕らの核はそれぞれ形も様々だよ。マリウスの場合は……そうだね、簡単に言えば星型をしている結晶だよ」


 ……なるほど。星型ねぇ……。


「ちょっとここで待ってろ」


「待て、どこへ行く?」


「いいからそこにいろ。言っておくが覗き見はやめとけ」


「……用でも足しに行くのか? 早く行ってきてくれ」


 俺はシルヴァに背を向けたまま軽く手を振って、目的の場所へ向かう。


 とある部屋の前まで行くと、どこからともなく声をかけられた。


「一応聞いておきますがこの部屋になんの御用ですか?」


「うぉ、どこから声がするのかと思ったら天井に張り付いてたのかよ……」


 ジーナが忍者らしく天井に張り付いていて、俺が気付くのと同時にしゅたっと降り立つ。


「姫に害を成すおつもりならばさすがに通す訳には行きません。夜這いならどうぞご自由に」


「お前はそれでいいのかよ……ちょっとアホに用があってな。場合によっては軽く殴るかもしれん」


「どうぞお通り下さい」


「もう一度言うけどそれでいいのかよ……」


 俺が呆れながらそう言うと、無表情で大きく頷いてジーナの姿が消えた。


 なんだったんだいったい……。


 まぁいいか、とりあえず用を済ませてしまおう。


 軽くドアをノックする。


「入るぞ?」


 返事を待たずに部屋へ踏み込むと、なんというか……。


『うわぁ……さすがというかなんというか……』


 そこにはベッドの上で大の字に手足を広げた状態で「ぐーすかぴー」とかいうこれでもかっていうくらいの寝息を立ててるリリィ。


 しかも上も下も下着しか身に着けていない。


『……本当に夜這いでもする?』


 アホか。いや、アホはこいつだ。


「おい起きろリリィ」


 適当にベッドを蹴ると、振動で「ぐがごっ!?」とリリィが目を覚ました。


「……んぁ~? あ、ミナトだ~」


「ちょっと話があるんだ。寝ぼけてないでさっさと服を着るなり毛布羽織るなりしてくれ」


「ん~? なんらぁ~?」


 リリィが寝ぼけ眼を擦りながら視線を自分の身体に向け、固まる。


 そしてゆっくりとこちらに向き直り……。


「ぎゃーっ! 誰か助けてーっ! 犯されるーっ!! わらわ犯されるーっ! ジーナ! マァナ! 誰でもいいから助けげぼぶっ!!」


 あまりに突然叫び出すからつい頭をぶっ叩いてしまった。


「はらほろひれはれ……」


 こいつ……それわざとやってんのか?





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