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第362話:魔王再臨。


 空気が一変する。


 真っ先に反応したのは勿論俺だった。


「ギャルンてめぇ!!」


 そう、俺達がシャドウの空間から戻った時、その場にはギャルンが上座、ライルの席にふんぞり返っていた。


 即座に飛び掛かり、魔力を全力で込めたディーヴァで切りかかる。


「おやおや、気の早いお方だ」


 ギャルンは掌をこちらに向け、何か呟くと俺の目の前は真っ白になって激しく吹き飛ばされた。ディーヴァも俺の手から離れ床を転がる。


「ぐおっ!?」


 なんだこの力は……今までのギャルンとは、違う気がする。


「別に今日君達と争うつもりはありませんよ」


「だったら何をしに来たというのかね」


 皆を下がらせ、シルヴァが一歩前に出る。


「ふふ、久しぶりですねシヴァルド」


「僕は君など知らんよ」


「そちらが知らなくとも私は知っています。ええ、よく知っていますとも」


「僕と対等な話をしたいのならば分体などではなくカオスリーヴァを連れてこい。貴様と話す事など何もない」


 シルヴァが今までに感じた事のない程の圧力を発している。

 それに怯む様子もなく、ギャルンは笑う。


「ふふ、そうしてやりたいのは山々なのですがね、残念ながら私はカオスリーヴァの記憶は持ち合わせていれど本体とはほぼ無関係ですからねぇ」


「おいギャルン、次に俺の前に姿を見せた時は必ず殺すと言わなかったか? 随分早く覚悟を済ませたらしいな」


 ここには俺とティア、ラムにシルヴァまでいる。

 ギャルン単騎に負ける気はしない。


「だから何度も言わせないで下さい。今日は事を構える気はありません」


「だったら何をしに来やがったんだよ」


 ギャルンはゆっくりと立ち上がり、そのままふわりと宙に浮いた。

 天井ギリギリまで浮き上がった所で、言い放つ。


「私は今日各国のトップが集まっているこの場を利用して……宣戦布告に来たんですよ」


「宣戦布告……だと?」


 本格的に世界に牙を剥くと宣言しに来たのか?

 だとしても今更過ぎる。

 今までだって十分それぞれの国で暗躍してきたくせになぜ今更……。


「それにあたり、ミナト氏に預けていた物を返して頂きたく参上した訳です」


「み、ミナト……」


 ティアが虚ろな目で俺の背中にぴったりとくっついてくる。

 そうだった、こいつは今具合が悪いんだった。


「生憎だが俺がお前から預かった物なんて心当たりがねぇな。イリスやネコは渡さねぇぞ」


「ふふ、我々が作り出した存在が今そこにいるではありませんか」


 ぎゅっと俺の背中をティアの手が掴む。


 ……そうだ。ティアはリリアの大臣に化けていたベルべロスによって現代に蘇った。

 そして、勇者を現代に蘇らせる手段は……ギャルンがベルべロスに教えたと……。


「てめぇの狙いはティアか!? 次から次へと俺の仲間に手を出そうとしやがって……!」


「彼女に至っては元々ここに居るべき人間では無いでしょう? 私のおかげでこの時代に生きている虚ろな存在。ティリスティア本人もミナト氏もそれを忘れているのではありませんか?」


「知った事か! てめぇなんかに渡すかよ!」


「みなと……嫌……わた、し……」


 ティアは余程具合が悪いらしく、今までに聞いた事がないほど細々とした震え声で俺に助けを求めてくる。


「た、すけ……て……」


 そんなティアを見たギャルンは能面のようなのっぺりとした顔のまま、愉快そうに腹を抱えて笑った。


「何がおかしい!」


「いえいえ、滑稽もここまで来ると大したものです。……さぁ、御迎えに参りましたよ」


 ギャルンが両腕を広げ、ティアへ呼びかける。


「安心しろ! お前は必ず俺が守ってやるからな……!」


「……ほんとう、に?」


 ティアの腕が俺の身体に回され、後ろから抱きしめられる形になった。


「ああ、絶対に……お前は俺が守ってやる」


「嬉しい、嬉しいわ……やっと抱きしめる事が出来た」


 ……?


「おい、いったいどうしたっていうんだ。とにかく今はあの野郎……を……」


 顔だけ後ろに向け、俺に抱き着いているティアを見た。


 ティアは恍惚の表情を浮かべている。


「……てぃ、あ?」


 その髪の毛はじわりじわりと青から深い紫へと変化していった。


「お、おい……なんの冗談だ……」


 ママドラ、答えてくれ。これはいったいどういう事だ……!


『私だって分からないわよ……でも、これは……』


「私を守ってくれる? 一生、この先ずっと、私と一緒に居てくれる……?」


「は、離せ……!」


 俺は、自分の身体に回された腕を思い切り跳ね除け、距離を取った。


「なんで、なんでお前が……!」


「あら、私ならずっとミナト君の傍にいたじゃない……今更そんな態度、悲しいわ」


「お戯れはその辺にして下さい……魔王様」


「ふざけるな! ティアはどうした!?」


『ミナト君、しっかりして! 彼女はもう……』


「ティアをどこへやった……答えろキララ!」


「……うふふ、こーこ♪」


 キララは自分の胸元にとんとん、と指を当て、にっこりと笑った。


「嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ! 頼む……嘘だと言ってくれ……」


 なぜ、さっきまで一緒に居たはずのティアが、俺の仲間としてずっと共に行動してきたかけがえのない仲間のティアが、キララになっちまったんだ。


「まーだ現実を受け止められないの? 私は私、ずっとミナト君と一緒に居たわ。ミナト君だって知ってたはずでしょう?」


 ティアは、いや……キララは呆然としている俺に近寄り、耳元で囁いた。


「私が……勇者だってコト♪」




お読み下さり有難うございます。

この物語も終盤戦。

思えば魔王討伐が53話、ティア初登場が152話。

そう考えるとこの362話まで随分と時間がかかってしまいました。

お暇な方はティア関連の話を見直すとあちこちに伏線があったのが分かると思います。

というより勘の良い方はとっくに気付いていたかもしれませんね。


ついに魔王キララ復活です。個人的にはキララもティアもお気に入りなのですが自分で書いててかなり心苦しくなっております(^_^;)


これでやーめた! とならずにどうか最後までお付き合いくださると嬉しいです。m(_ _)m

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