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第361話:団結と襲来。


「細かい国交の方法、お互いの国同士を繋ぐ通路の確保等考える事は山積みだが、その辺はおいおいきちんと進めていくとして……今回は各国の意思が一つの方向へ向いた事を感謝する」


 シルヴァが纏めに入るが、何かを思い出したように続けた。


「そうそう、すぐに対処可能な最低限の方法として各地に障壁を張り巡らそうと思うので各国魔法の知識に明るい素質ある者を出来るだけ多く集めておいてくれると助かる」


 シルヴァの言葉にリザインとライルは頷くが、それぞれ反応は違う物だった。


「幸いにもダリルには近年魔法の素質に溢れる若者が増えてきている。集めるのは簡単だろう」

 これはライル。


「魔法で障壁を張り続けるのはかなりの負担になるだろうから勿論言われたように魔法の才ある者を集めるのも進めるが、何か一歩進んだ対策が欲しい所だ」

 こちらがリザイン。


「そうだね。それならついでだから魔道具について話をしておこうか。リリア帝国には旧時代の文明による魔道具がそれなりに残っていてね、僕はそれについて研究を進めていたのだが、現代の科学を組み合わせる事によって魔法の封入と継続発動を可能にできるよう検討している最中だよ」


 それなら一人面白い人材が居るな。

 リザインも俺と同じ事を考えたらしく、シルヴァに人材の紹介をした。


「シュマルにはミナトと同郷のタチバナという技師がいる。彼の発想と技術力は現代においても頭三つほど抜けているから参考になる部分もあるのではないかと思うのだが」


「ほう? ではシュマルのあの建物の様式や路面を走るあの交通手段についてはその者が?」


 シルヴァは俺の様子を遠くから見ていたので映像としてはその辺の事も理解しているのだろう。


「そうだ。もしシルヴァ殿の言う魔道具が完成すればそれを各地に配置するだけで安全性が格段に上がるだろう。こちらとしても出来る限りの協力をさせていただこう」


「ふむ、であれば各国の協力の元早めに魔道具を完成させる方向に力を注いだ方がよさそうだね。個人的には魔道具を完成させるまでの繋ぎとして魔法師の件を頼んだつもりだが、これは思ったよりも話が早く進みそうだ」


「……というか何か道具に魔法を封入する、という手法であれば儂が提供可能じゃと思うが……?」


 ラムの言葉に皆黙る。


「……物に魔法を封入できると?」

「そうじゃのう」

「一次的に魔法を纏わせる、ではなく封入して貯蓄しておけると……?」

「そうじゃよ」


 シルヴァの言葉にラムは即答。さすがうちのお嬢様だ。


「ふふ、エルフの魔法というのは侮れない物だ……それならば後は継続力、魔力を定期的に注入するなり付与した魔力を溜め込んでおけるシステムさえ構築できればあっさりと完成までこぎつけるぞ!」


 珍しくシルヴァのテンションが上がっている。

 聞いた事が無いくらいには声が大きくなってる。


「そういう事でしたらラヴィアンの鉱山で採掘されていたローズストーンなどは媒体として使えるのではないでしょうか?」


「ふむ? 確かにローズストーンは魔力を帯びやすい石と言われているな。だが稀少価値が高く採掘量が少ないと聞くが……」


 そのローズストーンってのなら俺も聞いた事があるな。確か大昔にあったとか言われてる魔力を帯びた大樹の花が化石のようになったもので、魔力のブースターとして使用できる魔法使いなら誰でも欲しがるという逸品だ。


「問題ありません。ラヴィアンでは秘密裏に大量採掘できる鉱山……という言い方はおかしいかもしれませんね。地下鉱脈、とでも言えばいいでしょうか。とにかく、採掘の当てはあります」


「なるほどなるほど……ローズストーンが大量に用意できるというのであればそれを交換していく方法で継続性もクリアできそうだな……これはもはや完成したも同然だぞ! 各国の力が合わさる事でよもやここまでスムーズに話が進もうとは!」


「……」


 さらにテンションの上がるシルヴァとは対照的に、やはりティアの様子がおかしい。


「ではここを出て実際にその装置の設計、製作等に取り移ろうではないか。シュマルの技師とやらを紹介してもらわねばな」


 もう会談自体はこれで終了と見てよさそうだ。

 だったら定位置についている必要もないだろう。


 俺はティアの隣まで移動し、小声で話しかけた。


「おい、顔色が悪いぞ。大丈夫か?」


「……う、うん。なんか……ちょっと体調が良く無いんだゾ」


 そう言ってティアは作り笑いを俺に向けてくる。


「……おい、お前が弱音吐くなんてよっぽどだな。会談が終わったらダリル城で少し休ませてもらえ」


「うん……そうさせてもらおうかな」


 ティアは俺の身体に寄り掛かる。その視線はかなり朦朧としているようだった。


 その額に手を当てると……。


「うおっ、なんだこれめちゃくちゃ熱いぞ!? こんな状態で我慢してたのかよもっと早言えアホ!」


「あ、アホは酷いゾ……」


「皆聞いてくれ、ティアの具合が悪い。もう話が済んだならさっさと休ませたいからここを出ようぜ」


 皆に向かってそう告げると話に花が咲いていた連中が一瞬固まって、一斉に立ち上がった。


「そういう事ならばダリルの医務室を貸そう」

「シャドウ、この空間を解除したまえ」


 ライルとリザインの対応は迅速。

 リザインの命令に従いシャドウがこの空間を解除した。


「やぁ諸君、随分遅いので待ちくたびれてしまいましたよ」




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