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第340話:黒鎧の正体。



「おい、なんだ今のは。二人とも大丈夫か?」


 ロゼノリアの入り口に到着するなり先ほどの違和感の確認を取るが、ラムは不思議そうな顔で「大丈夫じゃが?」と言うだけ。


 残るティアは、「なんともないんだゾ?」といいながら背中を気にしていた。


「ティア、背中見せてみろ」


「特になんとも無いってばー」


 ティアを無理矢理ひっつかんで後ろを向かせるが、確かに何かがどうにかなっている感じはしなかった。


「ちょっとこの辺りがチクってしただけだゾ」


 ティアが一生懸命手を背中に回し、ある一点を指さした。


 そこをよく見ると、確かに服がわずかに切れている。


「お前こんなとこに小さな傷があるぞ」


「そうなの? それで動いたらピリっとしたのかな……でも全然なんともないから平気だゾ。それより先を急ごうよ」


「お前も身体にダメージが蓄積してるんじゃないのか? 一応ラムちゃんに回復してもらっとけ」


 俺が言い終わるよりも早く、ラムがティアに回復魔法をかける。仕事が早い。


「だ、大丈夫だってば。でも……ありがとね。さ、ネコちゃんが待ってるよ」


 俺達の手を引くように街の中へと進むティア。

 その背中を頼もしく、そして微笑ましく眺めていたら……。


「し、ししょーっ!」


 奥の方からリリィが顔面べしょべしょにしながらこちらに向かって走ってきた。


 まったく相変わらずやかましい奴だ。


 ……しかし、そのすぐ後ろにはマァナやジーナまで一緒になって走ってくる。


「ど、どうしたのじゃ? 何かあったのかのう?」


「そ、それがっ……し、ししょー……あの、ユイシスちゃんが……ッ!」


 ……は?


 俺はこいつの話に振り回されたくないのでマァナへ視線を移し、確認を取る。


 マァナは説明を求められている事に気付きながらも、慣れない全力疾走に息を切らせていて、なんとかそれを落ち着かせながら言った。


「ユイシス、さんが……っ、私、達を……庇って……」


 嫌な汗がどっと噴き出した。

 思考が鈍っていくのを感じる。


 頭に濡れた綿でも詰められたようだ。


「……どこだ。ネコは何処にいる!?」


 リリィが泣きながら街の中心部を指刺す。


 マァナはそれを見て静かに頷いた。


 それを確認した瞬間、俺は走り出していた。

 ラムとティアの反応を待たず、全速力で。


 ママドラ、加速系スキルだ。なんでもいいからよこせ!


『……その必要は無いわ。もうすぐ、そこよ……』


 視界には街の中央にある広場が。

 そしてその傍らには……。


「……!! ネコ! おいネコ! 何があった!?」


 ネコが、あちこちボロボロの状態で転がっていた。

 抱き起すが、意識が無い。


「……! ネコちゃん!?」

「ユイシス! すぐに回復をかけるのじゃっ!」


 後からついてきた二人もネコの様子に気付き、ラムが回復魔法をかけてくれた。


「……息はある。だが、意識が無いのじゃ」


 少し休めば回復するだろうか?

 しかし、アルマがついていてこの状況とは……。


「……お前か?」


 ゆっくりと立ち上がり、そいつへ視線を向ける。


「……来ちゃったんだ? でも少し遅かったんじゃない?」


 黒鎧。あの、黒鎧だ。

 あの凄まじいオーラも殺気も、不思議と今は感じる事が出来ない。


 そう言えばこいつは、最初から俺達とはあまり戦おうとはしなかった。

 いつもギャルンの命令で他の事ばかり。


『ね、ねぇ……ミナト君』

 うるせぇ。


「出来ればこんな事はしたくなかったんだけどね」


「ならするんじゃねぇよ」


『ミナト君ってば……!』

 うるせぇって言ってるだろ分かってんだよ!


「ギャルンは死んだぞ。もう……いいだろう?」


「へぇ、そうなんだ? 死んじゃったか……別にどうでもいいんだけどね」


『ミナト君……』


 ギャルンの奴が死んでも洗脳が解けたりは、しないのか。


「……帰ってくれないかな? 出来れば戦いたくないんだけど」


「そうはいかねぇよ……」


「うーん……でもあの子は連れていかなきゃならないし……邪魔するならやっぱり戦わなきゃいけなくなっちゃうよ」


 目的はネコ?


「ネコを連れ去る事がギャルンから与えられた命令なのか?」


 あの野郎様子を見に来ただけだとか言っておいてしっかりこっちに刺客を送り込んでるじゃねぇかよすっとぼけやがって……。


「ギャルンは関係無いかな。他からお願いされてるだけ」


 他からお願いされている。

 ギャルン以外がネコを狙う理由はなんだ?

 ……もしかして既にキララが復活しているのか?

 だとしたら俺の近くに居るネコを排除しようというのは分かるが……。


「ねぇ、本当に邪魔するの? あたしはあまり気が進まないんだけど」


「俺だって気が進まねぇよ……! でもネコを連れて行くつもりならやるしかないんだ。正気に戻させてやるよ」


「そっか……それなら仕方ないね」


 黒鎧越しに発せられるその声は、とても平坦で、感情の起伏は見られない。


 それでも俺と戦うのを躊躇っている、出来れば避けたいと感じている事に妙な安堵を覚えてしまう。


『……ミナト君……私……』

 情けねぇ声出すんじゃねぇよ。何とかするぞ。


「じゃあいくよ?」


 黒鎧はストレージから禍々しい一振りの剣を取り出し、大きく一度素振りをして、切っ先をこちらに向けた。


「まぱまぱ、覚悟してね」






とっくに中身に気付いていた方もいるかと思いますが、とうとう黒鎧の中身が明らかになりました。

ミナト君は大切な物を取り戻す事が出来るでしょうか?

もし取り戻せたとして、何も失わずに乗り越える事が出来るでしょうか?

物語り上でもここの一件はかなり大きなポイントになってきます。

ミナト君に待ち受ける未来を見守って下さい。

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