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第338話:ギャルンの企み。


「ネコ! マァナ達と先に街に戻れ。出来るか?」


「えっと……はい! 大丈夫ですぅ!」


 ネコがぴょんっと軽くジャンプして慌ててリリィの手を掴みマァナの方へ走る。


 あの様子だとアルマがロゼノリアにチェックつけてるようで安心した。

 これならあいつらだけでも避難する事ができる。


「ごしゅじん! すぐに来て下さいね……?」


 ネコがいつになく真面目な声を吐くのでちょっと驚いてしまった。


「……ああ、だから待ってろ」


「はい! 約束ですよぉ!?」


 その言葉の後すぐにネコ達の姿は消えた。


「わざわざ人払いですか……もし私があちらにも刺客を用意していたらどうするつもりなんです?」


「違うな。お前は戻ってこないダンゲルの様子を覗きに来ただけだ」


 そう言いながらも俺の心臓は跳ねていた。

 ギャルンの野郎に指摘されて初めてその可能性に気付くなんて情けない。

 奴を前にした事で思考が鈍っている。


 落ち着け……大丈夫だ。

 まずは黒鎧を呼ばれる前にこいつをぶっ飛ばす。

 万が一黒鎧が来るようなら纏めて相手するしかない。


「おやおやバレていましたか。……とはいえ、ダンゲル君の反応が消えた時点でここにミナト氏が居る事は気付いていましたよ」


「分かってて俺の前に面出したのか? 良い度胸してるじゃねぇか……」


 俺がどれだけお前をぶっ殺してやりたかったか……それを知ってる癖によくぞ出てきてくれた。

 今日ここで終わらせてやる……。


「しかしこんな僻地にまでご苦労な事ですね。せっかくの苦労が水の泡ですよ相変わらずナメたガキだ」


 最後の言葉だけ語気が荒くなり、珍しく本心が漏れていた。

 こいつにとってもあまり余裕がない状態なのかもしれない。


「テメェがここにあった兵器でロゼノリアを消し飛ばしたのか?」


「……消し飛ばした? ふふ、ふはははは……何を言うかと思えば。今もロゼノリアは存在しているでしょうに」


「お前が何を企んでるか知らないがあの影人間共は一体なんだ? 住んでいた住民達は何処へ行った!?」


 本当はすぐにでもギャルンと戦闘を開始したい所だが、マァナの件があるからこれだけは聞いておかないといけない。


 答えなんて返ってこないの前提での質問だったのだが、予想外にギャルンはあっさりと教えてくれた。


 意味は全く分からなかったけれど。


「何か勘違いしているかもしれませんがここで建造していた物はランガムのとは全く別物です。破壊兵器ではありませんよ」


「だが一度ロゼノリアは消えた。それは事実だろう?」


「ふむ、そんな事まで知っているのですか。ロゼノリアは消えた、のではなく移動していたんですよ。こことは異なる次元へとね」


 異なる、次元……?


『そんな、時空間移動の実験だったって言うの!?』


 時空間移動……?


「街ごとどこかに転移してたってのか?」


「違います。先ほども言ったでしょう? 別の次元だ、と……本当はもっと小規模な実験をするつもりだったんですがね、手違いで街全体を対象にしてしまったようですね……実験としては半分成功、半分失敗……といったところでしょうか」


「またろくでもねぇ事を企んでるのかお前は……」


「人聞きの悪い事を言わないで下さい。私はただこの世の多層世界に干渉する実験をしていただけです」


 また分らん単語だ。多層世界??


「分かりやすく説明して差し上げましょうか? ミナト氏は並行世界という言葉は知っていますか?」


 こんな奴の講義を受ける気にはなれなかったが、聞ける時に聞いておいた方がいい類の情報なので我慢するしかない。


「……こことは同じようで少しだけ違う世界があるっていうのか?」


「さぁ? 私はソレがあるのかを確認したかった。有ると分かれば利用できますし、無ければ諦めもつきますからね」


 ギャルンは楽しそうに自分の実験成果を語った。

 それにしてもこの世界の住人であるギャルンが並行世界なんて言葉を口にするとは思わなかった。

 そもそもその概念にどうやって辿り着いた?

 こいつの言ってる事には違和感しか感じない。

 何か裏がある気がするが……。


「先程半分半分だと言ったでしょう? 結論から言うと多層世界を確認する事は出来ました。しかし並行世界は存在しなかった」


「多層と並行で何が違うってんだよ」


 俺だって並行世界なんて単語漫画かゲームでしか聞いた事が無い。

 仕組みなんてこれっぽっちも分らん。


「おそらくここでは無い軸の異なる世界を見つける事は出来たがそこは同じような世界、という訳では無かった……そういう事じゃろう」


 ラムの説明は分かりやすい。ちゃんと俺に分かるように説明してくれた。


「ほう、賢いですねぇ。その通りです。ここでは無い別次元を観測する事は出来ました。そこへ数人飛ばして経過を見るつもりが魔物共のミスなのかロゼノリア全体が飛んでしまった。元に戻した時には……既に人間は肉体が耐え切れずに焦げ跡だけが残されていた。これは興味深い結果ですよ」


 焦げ跡というのはあの影人間の事だろうか?


「なるほどのう……肉体を失い消滅した人間達は意識だけその場に焼き付いて帰ってきたという事じゃな」


 全く理屈は分からないが言いたい事はなんとなく分かる。


「人の身では時空間移動に耐えられずにその時の意識だけを残して存在が失われたのです」


 ……って事は、その時空間移動ってのが起きた時にやっていた事をひたすら繰り返しているって訳か。


 つまり……。


 リリィやマァナにとっては残念な事に、やはりこの国は滅んだのだ。




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