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第324話:残念なお姫様。


「この度は、その、ごめん……」


「リリィ様?」


「こ、怖い顔しないでちゃんとやるからっ!」


 こいつ本当に姫様なのか?

 完全にジーナという忍者の方が権力ありそうな振舞いをしている。


 ……いや、どっちかっていうと姫がアホ過ぎるだけか。


「こ、この度は……話も聞かずに、突然襲い掛かってしまって……ほ、本当に……ほんどうに……もうしわげ、あじばぜんでじた……っ!」


 号泣謝罪会見かよ。


「ごしゅじん……なんだかこの人可哀想ですぅ」


 ネコはリリィを見てまるで他人では無いかのようにソワソワしている。


 可哀想って、どっちの意味だろうな……。


 部下から酷い扱いを受けているのが可哀想なのか、それともこいつ自身が可哀想な奴だという意味か……。


 もしかしたら自分に似た部分を感じたのかもしれない。

 残念な所がよく似ている。


「おーよしよしもう大丈夫ですよぅ? ごしゅじんは優しいので許してくれますからねぇ?」


「えっぐ、うぐっ、あ、あじがど……あじがどう……っ」


 ……なんだこの絵面。

 ネコがリリィの背中をさすって慰めている。

 それを俺達……ジーナも含めて冷めた目で眺めている。


「で、なんとなく事情は察したけれど一応本人の口から聞かせてくれよ。あんた何者だ?」


「わらわの事? 知りたい? ねぇ君知りたい?」


「うわ、急に元気になりやがってなんなんだこいつ……」


 ネコとティアが混ざって良くない所だけを煮詰めたような女だな……。


「わらわは~このラヴィアン王国の第二王女ヴィクトリア・アイゼン・リリィ・ロゼノリアですわっ! 控えおろうっ!」


「へー。で、その第二王女がなんでこの街の状況を把握してないんだ?」


「うぐっ、姫だって言ったのに、言ったのにぃ~っ! ジーナ、こいつ不敬ですわ!」


「はいはい不敬不敬、それより答えて差し上げたらいかがですか? 自分が馬鹿だから何も分かりませんごめんなさいって」


「ご、ごめんなさ……ってちがーうっ! わらわは丁度こいつらと一緒にお忍びで外に遊び……視察に出ていたのよっ!」


 今絶対遊びに出てたって言おうとしたよなこいつ……。

 二十七歳でこの残念さか……確かに哀れではあるなぁ。


「なるほど、それで帰ってきてみれば街がこんな事になってた、と……本当になんにも知らないんだな……役に立たねぇ……」


「ひ、ひどっ、私だってちょっと遠出して遊びたかったんだもん! パパが心配だからって護衛沢山つけたりするから息苦しかったけど海楽しかったんだもん!」


「だもん♪」


 ティアが語尾だけ繰り返す。

 こいつもティアももんもんやめなさい。


 というかこんな砂漠のど真ん中から海まで行ってくるとは相当バカンス楽しんで来たみたいだな……。


「そしたら、帰ってきたらみんな真っ黒だしパパもママも私の方なんて見もしないし……! お姉ちゃんはずっとエアお紅茶してるし……」


 エアお紅茶ってなんだよ……。


「ちょっと待て、お前の両親ってつまり王様だろ? 王達はどういう状態なんだ?」


 俺の言葉に答えたのは忍者のジーナだった。


「街の人と同じでしたよ。二人とも真っ黒で、王は玉座に座りっぱなし。王妃は自室でお花を弄り続けています」


 って事はエアお紅茶ってのは影人間状態の第一王女がひたすら紅茶を飲む動作をしてるってことなんだろう。


「なるほどな……結局何も分からないって事か。ちなみにジーナ、この国に巨大な兵器はあるか?」


 ジーナは首を傾げ、何の事だと悩んでいる。


「この国はこんな場所にあるせいで他国からの侵略はほぼ無いですので……兵器の類は特に所有していないと思いますよ。それこそ王城にある幾つかの砲門程度かと」


「砲門……その大砲は普通の大砲か?」


「普通じゃありませんっ! 我が城の魔導砲はなんと街の外まで届くんですのよ!」


 急にリリィが割って入ってきた。

 急に下から生えてくるのやめてほしいびっくりする。


 魔導砲、か……普通の大砲よりはアレに近いのかもしれないが、街の外まで届く、を売りにする程度の代物なら関係ないだろうな。


「期待した情報、ではなさそうですね?」


 リリィに比べてジーナは聡明だ。こちらの意図もある程度汲んでくれる。


「ああ、俺等が探しているのはそんなちんけな砲台じゃなくて国一つを吹き飛ばすほどの破壊兵器だからな」


「うへっ? そ、そんな馬鹿みたいな兵器がこの世にある訳ないじゃないですのさては君馬鹿ですねぇ?」


「……ジーナ、こいつ叩いていいか?」

「どうぞ」


「えっ? ちょっとジーナ? なんで即答でオッケーだしてるんです!?」


「いや、ぶっ叩かないと分からないかなと」


 うん、それは言えてる。


「じゃあ一応俺達が知ってる情報も教えといてやるよ。これは確かな筋からの情報だからいちいち疑うなよ?」


「なによ確かな筋って……別にいいわ。わらわにも早く教えなさい!」


 腹立つなこいつ……。


「この首都ロゼノリアは謎の光が立ち昇った後、一度消滅しているらしい」


「はははは! 消滅した都市が今ここにある訳ないじゃないの君ィ! ばっかだ、ばっかだわこいつひゃははぶごべっ!!」


「ぶっ叩いていいか?」

「どうぞ」


「叩いてから言うのはマナー違反ですわっ! 何考えてるんですの!?」


 ダメだこいつと話してても埒が明かん。


「お前に話したのは間違いだったかもしれんが……とりあえず王城を調べさせろ。案内してくれ」


「ふふーん、べっつに良いけど……ってちょっとその振り上げた拳は誰を殴る為の物なのかよく考えてからいだいっ!!」


「ナイスです」


 なんだろう……マジで疲れる。


「と、とにかくお城に行くならわらわについてくるがよかろうですわーっ! 君達ぃ~? さぁ行くわよっ! しゅっぱーつ♪」


 ……なんなんだこいつ。

 身体が大人で頭が子供……やっぱりネコと同類か……?




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