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第270話:めんどうなふたり。


 立て続けに女性陣があくびをしているが、確かあくびが伝染するのはきちんとした理由があって、共感性がどうのこうの。


『なによそれ』


 なんだったかな。人の気持ちを推測できる生き物だからこそあくびを見ると自分の身体も反応しちゃうとかなんとか。


『あー眠そうだな、私も眠いなー的な?』


 ……よく覚えてないから違うかもしれないけど、確かそんなんじゃなかったかな。


『私は違う説を聞いた事があるけどね』


 へぇ、どんなのだ?


『聞きたい? 聞きたい?』


 ……やっぱいいや。嫌な予感するし。


『あのね、実はね』


 聞いてないなこいつ……。


『性的な事に関する興味とかストレスとかによっても出るって……』


 どこで聞いたんだそんな話……。


 俺は一切聞いた事がないんだが、この世界特有の何かだったりするんだろうか?

 それとも俺が知らないだけでほんとに……?


 とりあえずこれ以上掘り下げても何も得る物はなさそうなのでこの話はこの位にしておこう。


『ちぇっ、つまんないの』


 俺を暇つぶしの道具にするのやめてくれない?


『君でしか暇を潰せない哀れな私を慰めてよ!』


 ……それは、なんていうかごめん。


『マジ謝りやめて。反応し辛いわ』


 どうすりゃいいんだよまったく……。


「ミナトさん、とにかく一度防衛隊と合流しましょう。魔物の討伐に協力して頂けませんか?」


 俺がママドラと夫婦もどき漫才をやっているうちにルークが護衛の人達に説明を終えたようだ。


「別に討伐に参加するのは構わないぞ。直接見た方が俺達の事も分るだろうし」


「おお! それは助かります。もう長い事手が付けられずに放置されていた案件なのでここでケリをつけてしまいたいと思い防衛隊の半分を投入した大作戦ですからね!」


 ……長い間手が付けられずに放置されていた案件。どこかで聞いた事があるような話だな。


「一応聞いておくけどその討伐対象ってゴリリアの森とかいう場所に居るドラゴンじゃないよな?」


「なんと、既にその情報をご存知でしたか! さすがですね」


 俺とティアは顔を見合わせて苦笑い。

 ネコはそもそも何の話をしてるのか理解してない。多分ゴリリアの森って名前も忘れてるんだろう。

 ラムは、車椅子で小さな寝息を立てていた。


 天気もよく温かいので気持ちよくなってしまったんだろうか? こうやっていると普通の可愛らしいお子様なんだけどなぁ。


「防衛隊を半分連れてきたところ悪いんだけどさ、なんていうか……その……」


「ご心配には及びません。精鋭揃いですから防衛隊の半分だけでも討伐は可能のはずです!」


「いや、そうじゃなくて……」


 なんて伝えるのが一番刺激が無く受け止めてもらえるだろうか。


「その森に居るドラゴンならもう私が殺っちゃったわよ?」


「やっちゃ……え?」


 もうこの展開もそろそろ見飽きてきたんだが、ルークは俺とティアの顔を交互に見て、「じょ、冗談でしょう?」と肩を落とした。


 俺達の言っている事が事実だというのは信じてくれたようだが、防衛隊をこれだけ投入してきたのもあってやりきれない気持ちになっているのかもしれない。


「ちなみに、なのですが……それもこの四人だけで?」


「倒したのはそこのティア一人だよ」


「えへへ、私は強いんだゾ♪」


 ルークは額に手を当てながら天を仰ぐ。


「今までずっと、長い間誰も討伐する事が出来ずに放置していた案件だったというのに……まさか少女一人で……」


「念の為に言っておくけどきちんと遺体は丸ごと運んでレイバンのギルドで素材に加工済みだから調べれば間違いないって分るはずだ」


「い、いえ……疑っている訳では。しかしそれでは我々は完全に無駄足だったようですね」


 彼はかなりの意気込みでこの討伐を成功させようと出陣してきたようで、顔から覇気が消えてしまった。

 強い冒険者が居るという話を聞いてわざわざ俺達をスカウトしに来たのもドラゴン討伐の為だったらしい。


「この国の情報伝達の遅さについてはもう少し改善していかねばなりませんね……」


「でもまぁルークが俺達を探しに来てくれなきゃこうして会う事も無かったからな。俺は防衛隊に誘ってくれて感謝してるぞ」


 嘘ではない。

 きちんと感謝はしている。その後のための踏み台として、だけど。


『そこは足掛かり、っていいなさいよ』


 足をかけるんだろ? 踏み台じゃねぇか。


『君は表向きは優しいいい人っぽい癖に中身のベースがろくでなしでやさぐれすぎてるのよねぇ……質が悪いわ』


 それが俺だし今のお前だよ。

 それに六竜が人間の常識を説くなよ。


『それもそうね。君があんまりにめんどくさい根暗野郎だからって私の善良な意見を押し付けるのはちょっと違ったかもしれないわね』


 拗ねやがった……。

 めんどくさいのはママドラも一緒だろうが。


『お似合いの二人って事ね♪』

 はいはいそうですねー。


「これ以上防衛隊を前進させる意味もなさそうですし合流して一緒に首都ガリバンへ行きましょう」


 ガリバンねぇ? それがこの国の中枢か。意外とスムーズにここまで来る事が出来たが、その先はどうだろうなぁ。


「ちなみになのじゃが……ふぁぁ……その首都とやらにはどの位かかるのじゃ?」


 いつの間にか目を覚ましていたラムがとても大事な事を聞いた。これだけの人数で出発してくるくらいだからここから近いとは思うが。


「そうですね、ここから三日という所でしょうか」


 ……この国って無駄に広いんだな。




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