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第230話:ランガム教の洗礼。


「ドアのカギは……まぁ、閉まってるよなぁ」


 さて、それならどのスキルで鍵開けをしようかなと考えていた時、ラムが扉に思い切り飛び蹴りをかました。


 足に魔法を付与して自分の身体を弾丸のようにして体当たり。


 ドガァァァァン!!


「おいおい……いくら周りが無関心だからって騒ぎすぎだろ」


「討ち入りじゃーっ! 覚悟せよーっ!」


 ダメだ話聞いてねぇ。

 ラムは完全にノリノリ状態になっちゃっててストレージから取り出した杖を振り回しながら突入していった。


「な、なんだ貴様はっ!?」


 すぐに中から声が聞こえたので入り口の先はすぐロビーのようになっていたんだろう。

 あまり心配は要らないと思うが俺もラムに続き中へ入ると……。


「はーっはっはっは! 敵将討ち取ったりーっ!」


 魔法で生み出したであろう光るロープみたいな物でぐるぐる巻きにされた男が地面に転がり、ラムはそれに片足をのっけて杖を天にかざしていた。


「仕事が早いな……」


 というかこいつ雑魚すぎだろ。


「くっ、ミィナ、何を考えている! 離せ! ……おお、ミウも居るじゃないか、こいつをなんとかしてくれ」


 ……ミィナとミウ? それが俺達が借りてる姿の持ち主の名前だろうか? それを知ってるって事は……。


「お前がガングって奴か?」


「何を当たり前の事を……おい、ふざけてないで……」


 当たりだ。俺が拉致った二人はこいつの部隊の人間。そして部隊長クラスならまともに会話が出来る奴も居るって事だな。


「残念ながら俺達はそのミィナとミウって奴等じゃねぇよ。この姿は借り物だ」


「……なんだと? 貴様ら……二人に乗り移っているのか?」


 乗り移る。そう来たか……でも外見が全く一緒ならそう思ってもしょうがないかもしれない。


「儂らはこの外見を借りておるだけじゃ。身体を奪った訳ではない」


「……お前ら、まさかとは思うがレジスタンスか? よもやこんな所にまで……」


「余計な話はしなくていい。それより、教えてもらいたい事がある」


 俺がその先を告げる前に、ガングは「フッ」と笑った。


「何がおかしい」


「たった二人で何ができると? どうせ教祖の居場所を教えろとかそんな所だろう?」


 ガングはげしげしと蹴り続けるラムに足蹴にされながらも俺を睨んだ。


「残念だけどよ、俺達は二人だけでもこの大神殿を塵に出来る程度には強いぞ? 巻き込まねぇようにしてやるって言ってんだからさっさと口を割っとけ」


「……それだけの力がある保証がない」


 ……こいつ、もしかして?


「ミナト、こうなったら拷問にでもかけて無理矢理吐かせるしかないのじゃっ!」


「ラムちゃん、ちょっとストップストップ、こいつ……多分敵じゃないぜ」


 ガングは幾分視線の鋭さを緩めつつ、「何故そう思う?」と聞いてきた。


「なんとなくだよ。お前俺達の力量次第じゃ味方してもいいと思ってるだろ」


「力量次第では、だ。しかしその保証などどこにも……」


「ちなみに俺は一人でお前らの砦を一つ塵にしたぞ」


「なっ……」


「ちなみにそっちの子も俺の連れと二人だけで砦を一つ落としている。これでも不満か?」


 ガングは少し悩んでから、「これを解いてくれ」と言った。


 ラムが俺に許可を求めるような視線を送ってきたので頷き返すと、光るロープが消えガングが自由になる。


 念の為に警戒はしたがゆっくり立ち上がって椅子に座りなおすだけだった。


「お前らが強いのは分かった。しかし所詮は砦一つ。尋常ならざる力を持っていたとしてもランガム教全てを相手にするなど……」


 まだ納得しねぇのかこいつは……。

 それだけ慎重にならざるを得ない相手って事なんだろうけどな。


「儂はランガム教全てを敵に回すつもりはないのじゃ。教祖さえ討ち取れればそれでよい」


「しかし……」


 もう、しょうがねぇなぁ。めんどくせぇしここであまり時間使いたくないから切り札を切ってしまおう。


「一度しか言わねぇからよく聞け。そして疑うな。聞き返すな。俺は六竜イルヴァリースの力を宿している」


 そう言って右腕を竜化させてガングに突きつけた。


「そ、そんな馬鹿な……いや、なんでもない。疑う事は許されないのだったな」


 そう言って彼は「くっくっく」と笑いをこらえきれずに声を漏らした。


「怒らないでくれ。いや、愉快でな。とうとう六竜がランガム教を落としに来たかと思うとな」


「そういえばお前らはカオスリーヴァを信仰しているんだったな」


「お前ら、じゃない。ランガム教がカオスリーヴァを信仰しているだけだ。俺達はカオスリーヴァを信仰している奴等に服従させられているだけに過ぎない」


 似ているようでそれは全く違う。

 つまり、いやいややらされているだけだという意味だろう。


「いつかこんな日が来たらいいと思っていた。下手に逆らえば死ぬだけだからな。お前らのような奴が来るのを俺はずっと待っていた」


「それは協力する、という意思表示と取っていいんだな?」


「当然だ。ただ一つだけ聞かせろ。この質問の返事が俺の望むものでなければ死んでも協力はしない」


 そう語るガングの目は殺気すら籠っていて、本当に殺されてもその意思は揺るがなそうだ。


「何じゃ、言うてみい」


「ラムちゃん待て、多分こいつが聞きたいのはミィナとミウがどうなったかだろう」


「話しが分かるな。嘘は許さんぞ」


「安心するのじゃ。神殿から少し離れた高台で寝ておるよ。気を失っていてしばらくは目覚めぬじゃろうがそれ以上の危害は加えておらん」


 ラムがそう説明する間もガングは俺から視線を移そうとしなかった。


 俺も無言で頷いてやる。


「……信じるしかあるまいな。あの二人はまだ洗礼も受けておらん、犠牲になるにはまだ早すぎる人材よ」


 洗礼……? それによって自我を奪われているのかもしれない。


「よし、じゃあガング、俺達が教祖をぶっ殺してやるから詳しく聞かせな」



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