表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

200/477

第193話:消えたメイド服の謎。


やはりローラがここに来ているというのであれば今話を聞いておくのが一番効率がいい。


コックから聞いたメイドの名前を城の者に聞くと、すぐに割り当てられた住込み用の部屋を案内された。


ドアをノックすると中から聞き覚えの無い声で「はーい、どちら様ですかー?」という声。


「ここにローラが来ていると聞いたのだが今は居るだろうか?」


「え、私? 誰だろ……」


中からローラの声がする。そして無警戒にドアを開けてくれた。


出来ればもう少し警戒心を持ってほしい。せめて来客が誰なのかを聞いてから開けるくらいの慎重さはあっていいだろう。


「やぁローラ。元気にしてたかな?」


「ふぇっ、み、ミナトさん……? なんだか、雰囲気が……」


「今の僕はミナトであってミナトでないからね。昨日この城で起きた事件について君は知っているかな?」


ローラが初めて会った時とはまた種類の別の、不審者を見る視線をこちらへ向ける。


「はい、先ほどリーア……あ、この部屋の子なんですけど、リアに聞きました。……というか本当にミナトさんですか? なんだか前より賢そう……」


賢そうとは酷い言い様だが、実際そうなんだろうし仕方ない。


「さっきも言っただろう? ミナトであってミナトではないんだ。僕の名前はジャーロック・ホムホム。昨日の事件について調べている。君が疑問に思うのも分かるが今そんなやりとりをする事に意味は無い。君にはいくつか質問に答えてもらうよ?」


「えっと……いろいろ聞きたい事はありますけどとりあえず分かりました」


「では形式的に一応聞かせてもらうが昨日次期王候補数人の食事に毒が盛られてね、それは君も知っての通りだが何か心当たりはあるかな?」


念の為にローラの様子を注視しながら質問する。勿論答えはノーだった。


「まぁそうだろうね。勘違いしないでほしいが君がやったとは思ってない。出来た可能性がある人物には一応聞いておかないと、というだけだよ。ちなみに食糧庫に納品した食材は誰でも手を付けられる状態なのかな?」


これは既にコックにも聞いた事。

矛盾が無いかどうかの確認だ。


「私は直接倉庫まで納品するのですが、その後は……多分その気になれば誰でも触れられるのではないかと……」


「ふむ、まぁそれもそうだろうね。では本題なのだが……食糧庫、あるいはこの城の人々の事で最近何か変わった事はあったかい?」


これも具体的な話が得られるとは思っていない。ただの可能性潰しと、偶然いい話が聞ければめっけもの、程度だ。


「それなんですけど……私は特に気付いた事は無いんですが、リーア。あの話一応しておいた方がいいんじゃないかな?」


ローラはそう言って部屋の主に声をかけた。


「いや、あれは関係ないでしょ」


リーアと呼ばれた少女は少しだけそばかすのあるおとなしそうな雰囲気の見た目に反し、性格はなかなかサバサバしているようだ。


「リーアと言ったね、一応聞かせてもらえるかな? 何が手掛かりになるか分からないからね」


「まぁ私としてもローラが疑われるのは癪だから協力したいけど……ほんとに関係無いと思うよ? 一週間くらい前に私のメイド服が盗まれたんだ」


……メイド服が盗まれた?


「なるほど……それはまた、確かに関係はなさそうだね。ちなみにその後犯人は?」


「ぜーんぜんだめ。誰が盗ったのかもわからないし、同じメイドがやったのか変態に盗られたのかも分かんない」


自分のメイド服が何に使われているのか分からないというのは気持ち悪いだろう。


「しかし城内での犯行ならば全員の持ち物を改めればすぐに分かる事なのでは?」


「それがさぁ、メイドと兵士は全員調べてもらったんだよね。なのにどっからも出てこないから仕方なく新しいメイド服を用意してもらったよ」


リーアはそう言いながら舌を出し掌をぴらぴらと振った。


……ずさんな調べではなくそれなりにしっかりした調べが入った事を前提に考えるならばメイドと兵士以外、という事になるが……この城でその両方を除外してしまうと後は調理関係者、ローラのように品物を外部から納品しにくる業者、あとはそれなりの立場のある人間という事になってしまう。


出来る事ならば毒殺未遂の犯人を突き止めるきっかけが盗んだメイド服、なんて事にならないといいなぁ。


「話してくれてありがとう。城で働く君達も不安だと思うが出来る限り迅速に解決にあたるつもりだ。念の為に身辺には気を付けるようにね。特にローラ、来客が誰かも分らないうちにドアを開けるんじゃない」


「ご、ごめんなさい」


「今朝城の外でもちょっとした事件があったからね。何かと今は物騒だから一人で行動するのは避けた方がいい。……とりあえず僕から聞きたい事も聞けたしこれでお暇するよ。それではね」


ローラは僕のこの状態についていろいろ聞きたそうな顔をしていたが無理矢理話を打ち切ってリーアの部屋を離れる。


……とりあえず一番疑わしい辺りから潰していく事にするか。


食材関連を詳しくあたってもこれ以上の情報は出てこないだろう。


毒を盛る事が可能なポイントは限られている。

だが、毒を盛る指示をする事が出来る人間ならそれなりに居るからな。


待っていろ犯人。

このジャーロック・ホムホムが必ずや追い詰めてみせるぞ。


『私はこういうのを見てみたかったのよ! 真実はいつも一つか二つ!』


真実はいつだって一つだけとは限らない。それぞれの中にそれぞれの真実を抱えているものだ。

僕はその中から一番その場に相応しい物を引きずり出すだけさ。


『ミナト君もノリノリねぇ♪』


う、うるさいなぁ……。

今の俺はジャーロックでありミナトでもあるんだから多少性格が変わってもしょうがないだろ。完全に他人任せにするつもりはないよ。


こいつに全部任せっきりにするのは危険だからな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ