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第139話:アリアは犠牲となったのだ。


「じゃあクイーンが連れてきたわけじゃ無かったのか……」


 ジオタリスが難しい顔をして悩んでいるが、頭にほっかむりをして白いエプロンを付け、手にはたきを持った状態で難しい顔をされても……。


「おい何サボってるんだこっちがまだ残ってるだろう!? 世話になってるんだから掃除くらいしっかりしろ!」


「あ、あぁすまんロリナ」

「ロリナって呼ぶんじゃない殺すぞ!」


 ……戻ってくるなりこの騒ぎである。

 こいつら楽しそうだなぁ。


 俺達がガルパラから帰ってきたら、何やら大掃除が始まっていた。

 発案はロリナらしい。ここに世話になっている事をそれなりに感謝していて、それを負い目に感じている部分があるらしく出来る事はしよう、という事らしい。


 そしてジオタリスがこき使われているわけである。


 二人がせかせかと掃除をするのを見て他の皆も、それなら……という流れになってみんなで大掃除が始まったという感じのようだ。


 正直俺が引力魔法で埃等を全部引き寄せてしまえば綺麗にはなるが、片付けという意味では人力でやるしかないからなぁ。


 家中ドタバタしていて落ち着いて話も出来そうになかったのでその後三時間程度大掃除に付き合った。

 ネコは意外とやる気でジオタリスと同じようにエプロンとほっかむり装備でせわしなく動き回っていた。

 イリスもガルパラで特に出番がなかった事を気にしていたのか、それともただ単に暴れたりないだけなのか床の雑巾がけなんかを重点的にやってくれた。

 たまに力が有り余って壁に突っ込んで破壊したり、床をぶち抜いて破壊したりしていたが掃除を頑張れるのはとてもいい事だ。

 そのまま健やかに育ってほしい。


 で、一番困惑してるのが誰かと言えば……。


「あっ、あのっ、わたくしはいったい何をしたらいいんですのっ!?」

「姫はソファに座っていて下さい。私達でやりますから」

「姫は動かなくていいですよ。俺達がやっておきますからね」


 ロリナとジオタリスから動くなと言われソファに座ったものの手持無沙汰というか、一人だけ休んでるのが後ろめたくなったようで、しきりにソワソワしていた。


「なぁ、俺の部屋がちょっと散らかってるんだけどさ、適当に一か所に纏めておいてくれると助かる。頼めるか?」

「わ、わたくしがやっていいんですの!?」

「おう、俺は他にやる事あるからさ、頼むよ」


 ぽんぽこは満面の笑みでスキップしながら俺の部屋へと吸い込まれていった。


『やるわね』

 手持無沙汰で暇してたからな。この場合は何か仕事くれてやった方がいいだろ。

『その事じゃないわ』

 じゃあなんだよ?

『いろいろ理由を付けてサラっと女の子を自分の部屋へ向かわせるなんてやり手だなって思ったのよ』

 馬鹿なのか……?


『意外とぽんぽこちゃんも今頃期待して待ってるかもしれないわよ?』

 それはない。そもそもあいつはタヌキだ。

『タヌキである以前に女の子でこの国の姫様よ?』

 だったら余計俺なんか待つ意味がないだろうが。下らない事言ってないで掃除の続きやるぞ。


『……かわいそうに』

 まだママドラが何か言っていたが気にせず掃除を続けているといつの間にか引っ込んでしまった。


「ふぅ……こんなもんか? おーい、もういいだろそろそろみんな集まってくれ」


 ……集まらねぇな。


 どうやらロリナが妙なスイッチ入っちまって掃除の鬼と化しているようだ。

 ついに屋根裏にまで手を出し始め、小柄なおっちゃんやオッサを引き連れてドタバタやっている。


 ぽんぽこは俺の部屋をある程度片付けて出て来たところでロリナに引っ張られて連れていかれてしまった。


「おいジオタリス。お前でいいからちょっと話聞けよ」


「お前でいいからって所がちょっと引っかかるけど……丁度良かった。俺も話の続きが気になってたところだ」


 イリスやネコの姿が見えないのはきっともう自室で休んでるんだろうなぁ。


「ミナト殿、私も居るぞ」


「おっ、アリアか。この二人が居ればとりあえず十分だな」


 その言葉にアリアはちょっと嬉しそうな表情を浮かべていた。俺の気のせいかもしれんが。

 アリアはどうにか役に立とうとしてくれているようなのでいろいろ助かる。


「み、ミナト様っ! ナージャから匿って下さいましっ!!」


 ドタバタとぽんぽこが俺の背後に飛び込んできた。


「なんだどうした?」

「しーっ、ですわっ!」


「ひーめーさーまー? どーこーでーすーかぁぁ?」


 まるで赤ずきんでも食おうとしている狼のように目を光らせて白いわんこ……もとい、ロリナが部屋を徘徊する。

 お掃除スイッチが入ったロリナはついにぽんぽこまで顎で使うようになってしまったようだ。


「……姫様を見なかったか?」


 ぽんぽこからの圧力を感じてその場にいた全員が首を横に振る。


 そして悲しい事件が起きた。


「そう、ですか……でも人手が必要なのでもう貴女で構わない。ちょっとこっち来て」


 そう言ってロリナががっちりと掴んだのは、アリアの腕だった。


「いや待ておかしい、ジオタリス殿がいるではないか!」

「そいつは役に立たないので。貴女の方がよほどいい働きをしてくれそうだ」

「それは嬉しいが今は大事な話を……おい、聞いているのか!? ミナト殿、助けてくれ! ミナト殿ぉぉっ!?」


 アリアはそのままロリナに引き摺られて行ってしまった。


 ……アリア、すまん。


 アリアのおかげで難を逃れたぽんぽこが俺の背後で何か言っている。


「アリア……貴殿の尊い犠牲、痛み入ります。わたくし、貴女の事は忘れませんわ……」


 死んだみたいに言うのやめてあげて。



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