馬子にも衣装のお正月
お正月の過ごし方って色々あると思うんだけれど、僕は今、多分、滅多にないお正月の過ごし方をしています。
「……トウゴが馬に転がされてらぁ」
「うん……あの、そろそろ目が回ってきたから、止めてもらえると嬉しいんだけど……」
「だってよ。おーい、馬達ー。そろそろ止めてやれ……あ、聞いてねえなコレ」
僕はさっきから、ころころころころ、馬の背中の上を転がされ続けているんだよ!
お正月だから、森の皆に挨拶して、ちょっとのんびり過ごして、ゴルダとグリンガルの精霊様のところにもご挨拶に行って……それで戻ってきたら、これ!
一角獣は角を使って器用に僕の位置を調整しながら転がしてくる。
天馬は羽を使ってダイナミックに。或いは、落ちそうになる僕を羽で包んでリカバリーしながら。
ううーん、多分、テクニカルなことをやっている馬達なんだとは思うんだけれど、転がされる僕からすると、たまったものじゃないんだよ。
だというのに、馬は僕を転がすのが気に入ってるのか、さっきからずっと、僕のことを降ろしてくれない!ひどいよ!
「おーいトウゴー!リアンとカーネリアちゃん連れてきたぞー!」
と思っていたら、フェイが強力な助っ人を呼んできてくれた!ああ、ありがとう!ここの馬達は、お世話をしてくれる可愛い弟分のリアンの言うことは大体聞くし、力強く凛々しく可愛らしいカーネリアちゃんの言うことも大体聞くから……この2人が来ると、大体、馬達は言うことを聞く!
「あー、最近の馬はなー、あんまり人、転がしてなかったから……ほらほら、そろそろトウゴがかわいそうだろ、やめてやれよ」
「お馬さん達!トウゴが目を回してしまっているわ!かわいそうよ!次からはもっとゆっくり転がして頂戴な!……あっ、そうだわ!きっとこれは、るーる改定ってやつが必要なんだわ!るーる改定よ!ウヌキ先生が言ってたわ!」
……リアンとカーネリアちゃんが来て、無事に馬は僕を転がすのを止めてくれた。ああ、よかった。
でも、ルール改定、というのは……。
「今のるーるは、『1分間に5回転まで』だったけれど、次からは『3回転まで』にすることをおすすめするわ!」
「次からはそれで記録狙って頑張れよな」
……カーネリアちゃんの裁定に、馬達はちょっと不満げに、でもふんふん頷いて納得はしている様子だ。
あの、いいんだけれど、いいんだけれどね?その……どうしてそんなに人を転がしたいんだろうか!いつの間にか、ルールが決まっているみたいだし!もう!
「おー……よかったなぁ、トウゴ。降ろしてもらえて……」
「うん……」
そうして僕は無事、馬から降ろされて地上に戻ってこられました。ああ、よかった……。
けれど……馬に転がされていた弊害は、確実に出てる。地上に戻って来たのに、まだちょっと地面がふわふわしているような感覚だし、それに……。
「あ、トウゴぉ。お前、その服、大丈夫か?」
「え?ああ……うん、ちょっと、直さなきゃ駄目だね……」
僕、着物と袴に、森の紋が入った羽織、っていう恰好だったんだけれど、転がされに転がされてしまったせいで、すっかり着崩れてしまった。あああ……。
「えーと、こっち引っ張ればいいのか?」
「あっ、あっ、そこ引っ張られたら脱げちゃう……あの、そっち、中に手を入れて引っ張るかんじなんだけれど……あああ」
フェイが手伝ってくれるんだけれど、着物の構造をあんまり理解できていないフェイなので、『こうか?こうか?』とやっている内に、ますます酷い恰好になってしまうんだよ!
「あっ!トウゴ!フェイ様!なにやってるのー!?」
「ああああ!ライラ!今は来ちゃ駄目!ちょっと酷い恰好になってるから!駄目!駄目!」
しかもそこにライラが来てしまって、僕はもう、どうすればいいのやら!あああああ!
「ま、結局はウヌキ先生頼みよね」
「うん……」
そうして僕らは、ライラが『描かせて!ちょっとでいいから!5分だけ!着崩れてるあんたと困ってるフェイ様、なんかいいのよ!』と描くのを止められず、そのまま描かれてしまい……それから、『まあウヌキ先生のところに行くのが一番いいわよね』ということで、先生の家へ向かうことになった。
……あの、ライラの『なんかいいのよ』って、一体何なんだろう。僕、本当に彼女のこれについては、よく分からないままなんだよ。
「おお、トーゴ!すごい恰好になってるなあ!」
「うん……。あの、ちょっと直させてもらえると嬉しい」
先生は僕の恰好を見るや否や、けらけら笑ってくれた。まあ、笑ってもらえるなら何より。
「羽織は……黒の羽織だと、毛が目立つなあ。馬の毛かい?」
「うん……。ええとね、多分、天馬の羽毛がくっついてしまった」
先生は僕の肩と片腕になんとか引っかかっていただけの羽織をそっと回収していって、『結構毛だらけ、馬羽だらけ!』とまた笑う。黒い服を着た状態で馬や鳥に囲まれると、どうしても羽毛だらけになってしまって目立つんだよなあ。どうしようもないけれど……。
「ウヌキせんせー、これ、羽毛だけササッと消せねえかなあ」
「うむ。まあ、これなら書いて消すより、ブラシをかけてしまった方が早いかもしれないが……うーん」
僕は『先生が書くのと僕が描くのとどっちが早いかなあ』と考えながら、洋服ブラシの形を思い出そうとして……。
「そうだ。ならいっそのこと、着替えていくかい?」
……先生がそんなことを言い出したので、ぽふん、と洋服ブラシのイメージが消えてしまった!
「見たまえ、トーゴ。僕が文豪ごっこをするために出してしまって、それきり着られることなくしまわれている着物だよ」
「わあ……」
それから、僕とライラとフェイは、揃って先生の家の和室の一画、和箪笥の前で歓声とも呆れともつかない声を上げている。
いや、だって……たくさんあるよ、先生!これを全部、特に着ないのに出してしまっているということは、大分、計画性が無いよ、先生!
「サイズは君に丁度いいと思うぜ、トーゴ。たった今『和箪笥の中にあった着物は、トーゴにぴったりの大きさになっていました』と書いたからな」
ああ、先生は仕事が早い。確かに、そういう書き方ができるから、こういうのは描くより書く方が早いよね。
「わあー!すっごくいい!すっごくいいわ、ウヌキ先生!」
そしてライラは、和箪笥の中を見て、目を輝かせている。彼女、布が好きだからなあ。今は、青海波が染め抜かれた青灰色の着物を出してみて、『綺麗ねえ』なんてやってる。
「そうかい。もしお気に召したものがあれば持って行ってくれて構わないぜ。ここで不要なようなら、妖精さんのリサイクルに出しちまうからな。とはいえ、ここにあるのは全部男物だが……」
「うん!私でも着られそうだし、問題無いわ!ほら、ぴったり!」
そっか。ライラ、これで着丈、概ねぴったり。ええと……。
「あの、少し丈、短くない?」
是非そうであってほしい、と思いながらライラに聞いてみたら……ライラは、はっ、と気づいたような顔をして、それから、むにゅ、とした顔をした。
「……あんたの方が身長高いっていっても、誤差みたいなもんでしょ」
「……それはそうなんだけれども」
僕もなんだか、むにゅ、とした顔になってしまいつつ、なんだかちょっぴり、遺憾の意……。
うう、僕の身長、ここでおしまいだろうか。せめてあともう、3㎝くらい……ライラと比べてはっきり身長が高い、ってなるくらいまで、伸びないだろうか……。
「なーなー!ウヌキせんせー!俺、これ着てみたい!」
僕が遺憾の意をひっそり表明していたところ、フェイが和箪笥を見て、そこから1着、着物を引っ張り出していた。
ええと、赤いやつ。やっぱり、フェイは赤い色がよく似合うなあ。
「おお、そうかい。じゃあそれ、一旦こっちへおくれ。フェイ君にぴったりの着丈にしてこよう」
「ありがとな!……ウヌキせんせーの魔法、本当に便利だよなあ……へへへ」
いそいそと部屋を出ていく先生と、それについていくフェイはなんとも楽しそうだ。まあ、そうだよね。折角だし、楽しまなきゃ損、損……。
……とは思うのだけれど、自分の着物を選ぼうかな、となると、なんとも難しい。僕って、どういう服が似合うんだろうか。
先生の家は魔法の家なので、襦袢だけでうろうろしていても寒くはない。けれど、やっぱり落ち着かないから、早く何か、着なきゃなあ、とは思うのだけれど……。
「あ、トウゴ。折角だからあんた、これ着てみなさいよ」
「えっ、あ、うん」
と思っていたら、ライラから『はい』と手渡された着物が一着。
……それは、濃い緑色の着物だ。無地なのだけれど、太さがまちまちの糸で織ってあるから凹凸がある。そんな、ちょっと表情がある布地。これが『紬』と言われるものだということは、先生に教えてもらったから知ってるよ。
「帯はこれね!」
「うん」
ついでに渡された帯は、黒と白の糸で、菱模様が出るように織られたものだ。ちょっと大胆な柄なので、僕1人で選んでいたらまず選ばないと思うのだけれど、確かに、無地の着物にはこれが合うね。
ちょっと奥に引っ込んで、そこで着替えて、ライラのところに戻る。
「どうでしょうか」
ライラが選んだ着物なので、まあ、間違いはないと思うのだけれど。普段、自分で選ばない色柄なので、ちょっと緊張する。不思議な感覚だ……。
……すると、ライラは、きゅっ、と唇を引き結んで、ちょっと難しい顔をした。
なんだろう。お気に召さなかったんだろうか。
……と、思っていたら。
「駄目だわ。この楽しみ、私1人が独占するのは勿体ないわ」
えっ。
「ちょっと待ってて!クロアさん呼んでくる!クロアさーん!ちょっとー!」
ええっ!
クロアさんが連れてこられちゃうの!?となると……僕、その、どうなっちゃうんだろうか!あああ!
……それから、30分後。
「やっぱりトウゴ君、色白だから色物が何でも似合うわね。儚げな色も似合うし、ぱっきりとした色も似合うし……ふふ、楽しいわ」
「ラベンダー色も合うわね!じゃあ次!こっちの卵色!あ、ウヌキ先生!もうちょっと派手な色のも出しといて!あと、大き目の柄物も着せてみたいからそれも!」
すっかりはしゃいでいるクロアさんとライラによって、僕は着せ替え人形にされています……。
「ウヌキせんせー!こっちのやつ!こっちのやつ、ルギュロスの体躯に合わせてくれるか!?」
「あ、うん。ちょっと待ってくれ。ご婦人方の注文を済ませたらそっちも……いや、もうサイズ合わせは全自動でできるようにそういう魔法のクローゼットを出そう。きっと今日のファッションショーが終わったら、妖精さん達が引き取ってくれることだろうし……」
気づいたらルギュロスさんも連れてこられてしまっていたし、先生はすっかり便利に使われてしまっている。あああ……。
「先生、すっかり妖精達に大人気だね」
そんな先生は、今や妖精達から『変なものをどんどん生み出す変な人!とっても面白い!』とばかり、大人気なんだよ。ほら、今も『今度は何を作るんですかね』と言わんばかりの妖精達が数匹、先生の肩や頭の上に停まっている……。
「トーゴ。君も人のことは言えないみたいだぜ?」
「えっ」
……そして僕も、気づいたら妖精達に停まられている!
更に、『こっちのガラス玉の飾りがいいんじゃないだろうか』『いやいやこっちの竹の細工物も悪くない』みたいな具合に、根付や羽織の紐を持って、ふわふわパタパタしている始末!
「……あの、ライラ」
「何?あ、次これね」
ライラは僕に、『はい』と、さも当然と言わんばかりの様子で、紫紺の着物を渡してきた。ああ、なんだか目が輝いている……。
「あの、君、これ、楽しいの……?」
あまりにも不思議なので、そう聞いてみたら……ライラは、『はて』というような顔で、首を傾げた。
「そりゃ楽しいに決まってるじゃない。何言ってんのよ」
「あ、そうなんだ……」
そんな、『当たり前じゃない』っていう風に言い切られてしまうと、僕としても、最早、何も言えません。
「クロアさんも?」
「ええ、勿論!ふふふ、トウゴ君、何を着せても可愛いんだもの。とっても楽しいわ!」
「あの、可愛いってことは無いと思う……」
でも、クロアさんにはちょっとだけ、遺憾の意を表明させてもらいます。可愛くはない。可愛くはないよ、僕は……。遺憾のい、不満のふ。それからちょっとだけ、恥ずかしい、の、は……。
そうして、クロアさんとライラが『ああでもない、こうでもない、これもいいしあっちもいい……』とやった結果。
「じゃ、トウゴ。あんたこれで馬に乗って!」
「えっ」
「そこ描くから。ほら急いだ急いだ!」
「ええっ!」
僕は、また馬の群れに戻されてしまった。ああ、馬に囲まれたせいで着替えたのに!なんてこった!
「はーい!注目ー!今のトウゴの恰好に似合う自信のある色味のお馬さんは集まってー!」
更に、ライラがそんなことを言うものだから、馬達が『なんだなんだ』とばかり、わさわさ集まってきてしまった!あああ!
「うーん……じゃあ、そこのあなたに決まり!真っ白な毛並みで、鬣は金髪、っていうの、ちょうど今のトウゴに似合いそうなのよね!よーし、描くわよー!」
ライラがにこにこ満面の笑みで画材を準備し始めたので、僕はもう、諦めて馬に乗ることにした。馬は、真っ白な羽を、ぱた、とさせて、『大変ですね』みたいな顔をしてる……。そうなんだよ。ちょっと大変なんだよ……。
……でも、馬に乗ってみたら、ライラがそれはそれはにこにこ楽しそうに目を輝かせて描き始めるものだから、まあ、付き合わないとなあ、という気分になる。
僕も絵描きの端くれなので……。絵描き仲間の描きたいものがあるなら、協力しなきゃな、とは、思うので……。
……でもやっぱりちょっと恥ずかしいので、もうちょっとお手柔らかにしてほしい!
「はー、描いた描いた。中々いい出来だわ」
そうしてライラが描き終わったので、僕は馬から降りて、馬に『ご協力どうもありがとう』とお礼の林檎を進呈する。馬は林檎を咥えると、僕を羽で一撫で、尻尾でも一撫でしてから飛んでいった。お疲れ様でした。
「見せて見せて」
「こんなかんじ。どう?」
折角だから、ライラが描いたばかりの絵を見せてもらう。
のだけれど……。
「……絵はとても素晴らしいのだけれど、自分が描かれているとなると、複雑な気持ちです」
その、ライラの絵、やっぱり好きなんだよ。今回のは水彩っぽく描いてあって、大胆に白く残した部分と陰になっている部分のコントラストが激しくて、それが面白い。馬の尾なんて、筆による掠れで上手に表現してあって……ああ、ライラっぽいなあ、というかんじ。
でも、僕が描かれているので……それも、大層立派に描かれているので、その、やっぱり恥ずかしい……。
「そうよね。ちゃんとした格好させたら、ちゃんとして見えるもの。やっぱりあんた、ちゃんと精霊様なのよねえ」
ライラはあっけらかん、として嬉しそうにしているけれど、僕としては益々恥ずかしいような、そんな気分……。
「まあ、その、『馬子にも衣装』っていうやつかもしれない……。ライラとクロアさんが選んだ着物だから、ちゃんとして見える、というか……」
なんだか恥ずかしいので、ちょっと縮こまりつつ、『これは衣装のせいだよ』と主張させてもらう。じゃなきゃ、どんな顔をしていいんだか分からないから!
「へ?『まごにもいしょう』……?」
……と思ったら、ライラに首を傾げられてしまった。あああ……。
「あ、伝わらないか。ええとね、『まご』っていうのは、『馬の子』って書くんだけれど……」
「馬の子?じゃあ本当に、馬に乗ってもらったのって正解だったってこと?」
「ええと、それもなんだか違うんだけれどね……」
ライラに一生懸命説明しようとはしてみるのだけれど、そうしている内に馬達が『自分達の話をしているようだ』とぞろぞろ集まってきてしまった!ああ、この森の馬達は揃いも揃って皆、とても賢いから!『馬』と聞こえてきたら、『呼んだ?』とやってきてしまう!
……ということで、集まってきてしまった馬には『お年賀です』ということで林檎や人参を配布して、お帰り頂いた。そうしながら、ライラとクロアさんに、『馬子にも衣裳』の説明をして……。
「まあ、衣装によって人の見え方って、かなり変わるわよね。分かるわ。私も密偵として仕事をする時に、顔を変えるより服を変える方が効果的なこと、沢山あったもの」
クロアさんに、実に実感のこもった納得をされてしまった。そうか、クロアさん、顔も服も変えられる人だもんなあ。うーん、すごい。
「だからこそ、服を着るのって大事よね。偶には普段着ないような服を着てみるのって、自分の幅を広げるのにとっても有効だもの。ふふふ、私もウヌキ先生に何か、出して頂こうかしら……」
クロアさんはそんなことを言ってにっこり。そうか。普段着ない服を着るのも、まあ、経験の内で、そして、経験は心の餌……。うん。そうだよね。
「……私も何か、着てみようかなあ」
ライラもそんなことを言うので、僕と同じようなことを考えているのかも。うんうん。とてもいいと思う。
……けれどね。
「あら!だったら早速、ウヌキ先生に女の子用の着物も出して頂かなくっちゃ!」
「えっ、あの、クロアさん?私、男物のでいいんだけど……」
「そういう訳にはいかないわよ。ね?あ、ウヌキせんせーい!」
……クロアさんの前でそんなことを言ってしまったら、君が次の着せ替え人形にされてしまうんだよ。
「あああ、行っちゃった……。もう、クロアさんったらぁ……」
ライラはなんだか、ちょっと恥ずかしそうな、ちょっと呆れたような、そんな顔をしているけれど……あのね。君だってさっき、あんな顔をしてたんだからな。
……そしてなんだか、むにゅ、という顔をしているライラを見ていたら、僕の中でいたずら心がむくむくしてくる、というか……。
「……あの、クロアさんと一緒に、僕も選んでも、いい?」
「え?あんたも選ぶの?ま、まあ、いいけど……」
……うん。折角なら、僕も普段やらないことをやってみたいな、なんて、思ってしまったんだよ。
そうして、僕らは無事全員、和装になりました。
「ライラのそれ、とっても似合うわ!鮮やかで、あなたらしくてとってもいい!」
「えへへ、ありがと。クロアさんのも素敵だわ」
……ライラは、鮮やかな露草色に、赤や白や黄色の花模様が沢山入った振袖。帯は柔らかなクリーム色と珊瑚色に、金刺繍が入ったもの。普段、あまりライラが着ない色の合わせ方だと思う。どんなもんだい。
クロアさんの方は、淡いシャンパンゴールドの地に金や銀の蝶や花が沢山入った振袖だ。帯はオフホワイトに金刺繍。『クロアさんといったら緑や黒や赤だから、そこを避けて普段選ばない色を選ぼう!』と僕とライラで頑張りました。ああ、達成感……。
「……まあ、馬子にも衣裳、だものね。えへへ。偶にはこういうのもいいか」
ライラははじめこそ、『私、こんな華やかなの似合わないわよ』だなんて言っていたのだけれど、今は開き直って『楽しむわよ!』ってやってる。彼女のこういう割り切り方、とっても格好いいと思うよ。
「……少なくとも、お馬さん達には好評みたいだし」
……そして、華やかに着飾ったライラとクロアさんの周りには、早速、一角獣がわらわらと集まってきている。彼らは本当に、なんというか……現金な馬達!
馬に囲まれていたら、その内着物を着たフェイが『トウゴー!ルギュロスに着物、着せてみたー!』とルギュロスさんを引っ張ってやってきてくれたので、益々着物仲間が増えた。
そうしていたら、いつの間にやら先生が、ラオクレスにもかっちりとした白黒の紋付き羽織と袴を着せて連れてきてしまったし、カーネリアちゃんとリアンとアンジェもクロアさんとライラに攫われてきて、それぞれ着物を着せられてしまったし……僕らすっかり、着物同好会!
でもまあ、こういうのもたまには楽しいよね。ちょっと恥ずかしい気もするけれど、まあ、馬子にも衣裳……。馬だけに……。




