まふりゃー
暦は12月になって、森も随分寒くなってきた。
「わあ、冬だなあ」
門を抜けて森の家の前に出てみたら、吐いた息が白くほわほわ広がっていく。下草はまだ緑色が残っているけれど、もう眠りに就こうとしている具合。広葉樹は紅葉も終わって、葉っぱが大分落ちてしまっている。……そっか、もう冬なんだなあ。
……僕がこの森に帰ってきてから、もうじき1年になろうとしている。そんな今日この頃。
もうじき入試があるわけなのだけれど、何故だか去年よりもずっと落ち着いている僕は、今日も森で絵の練習をすることにした。……自分でも不思議なのだけれど、去年、期末テストとか共通テストの模試とか、そういうのに追われていた時より、実際に入試に追われる今年の方が落ち着いてしまっている。
多分、自分で目指していて楽しい目標があるから、なんだろうなあ、と思う。あとは、他の人より時間が1.5倍ぐらいあるから、っていうのが、大きいと思う……。
……ちょっと狡いよなあ、とは思うのだけれど、でも、先生曰く『うん!?狡い!?狡いか!?いや狡くない!これは狡くないぞトーゴ!お家で毎日温かくて美味いご飯が出てきて理解ある両親に励まされながら受験勉強をする受験生と、去年の君みたいにちょっと冷めてて美味しくないご飯を食べながら理解の無い両親に貶されつつ受験勉強をする奴が居るんだ!それらを比較して狡いなんて言っていたらキリがないぜ!ということで君は狡くない!思う存分ゆっくりしていくがよい!』とのことなので……うーん、まあ、狡いとは思うけれど、でも、それを引け目に感じないように過ごすことにしている。そんなかんじ。
さて、今日は何を描こうかな、なんて考えながら森の中を歩いていくと……。
「いいモチーフが居る……」
ライラが居た。それも、とってもいいモチーフになりそうな、そんな具合に。
「……あんたって何見てもそれよね」
呆れたような顔のライラは、ライラの家の前で焚火を熾しながら、屋外用の椅子に座って編み物をしていた。
実に冬っぽくていいと思う!なんて素晴らしいモチーフなんだろう!
「魔王も鳥の子も実にいい具合だ……よし、描こう。描かせてね」
そしてライラの横、焚火の前では、魔王がまおんまおんと鳴きながら、木の枝に刺したマシュマロを炙っている。炙られてとろけたマシュマロは、魔王やライラを囲むようにしてキュンキュンキョンキョンうるさい鳥の子達に分け与えられていて、分ける魔王も分けられる鳥の子達も、なんとも幸せそうだしあったかそう。そして足元でそんなことになっているので、ライラもあったかそう。
まあ、焚火があるとは言っても初雪が降りそうな気温の中、屋外で編み物なんてしているんだから、おしくら鳥まんじゅうに温めてもらった方がいいと思うよ。
「まあいいけどさ。でも、私、もうちょっとで編み終わっちゃうんだけど」
けれど、ライラがそう言って見せてくれたのは、すっかり小さくなった毛糸の玉だ。どうやら毛糸が無くなるところで編み終わりらしい。そしてライラはとても手早いものだから、ライラの手は休むことなく動いていて、どんどん毛糸の玉が小さくなっていってしまう!
「えええ、これじゃあクロッキーも難しいよ」
「そうね。5分ぐらいでもう終わるわよ」
なんてこった、僕、あともう1時間くらい早く来るべきだった!とっても素晴らしいモチーフなのに!
……描きたい!どうしても描きたい!だからライラには悪いけれど、ちょっと増やさせてほしい!
「あっ、ちょ、トウゴ!こらっ!増やすな増やすな!あーあーあーあー!」
「もうちょっと編んでてほしい!30分でもいいから!お願い!」
ということで、魔法画でざっくり毛糸の玉をいくつか描き上げて、出す。ころんころんころん、とライラの膝の上に毛糸玉が現れて、いくつかはライラの膝から零れ落ちてころんころんと鳥の子達の中へ。鳥の子達は転がる毛糸玉が楽しいらしくて、なんだなんだ、と言わんばかりに毛糸玉を追いかけてキュンキュンキョンキョン。ますます騒がしい。
「魔王にはもうちょっとマシュマロを追加してお渡ししますので……何卒」
魔王と鳥の子達の為にマシュマロも描いて出す。ついでに温かいココアも描いて出しちゃう!勿論これは、ライラの分も!
「はー……しょうがないなあ、じゃあ、もう1本編んじゃうわよ。全くもう」
「ありがとうライラ!」
ライラは鳥の子達の間から毛糸玉を拾って近くの籠の中にぽんぽん入れると、ココアのカップを手で包むみたいにして持って、はあ、とため息を吐く。
ため息を吐きつつそんなに嫌そうじゃないライラのココアのカップの中に、魔王が炙ったマシュマロをそっと入れて、まおん。……成程ね。蕩けたマシュマロが入ったココアって、美味しいもんね。
それからライラは休憩を挟んで、また編み物を始めてくれた。なので僕はそれを描く。
……ライラは少ししたらすっかり編み物に集中し始めたので、僕も絵に集中できる。相変わらず鳥の子と魔王はマシュマロとココアに夢中で騒がしいのだけれど、それも気にならないくらい集中できてしまった。
冬の屋外は寒いのだけれど、焚火が近いし集中しているから、そんなに寒さを感じない。筆はするする動いて、僕の思っている通りに絵が描ける。……練習の成果が出てるなあ、と嬉しくなる。
やっぱり絵を描いているのは楽しい。僕にとってはこれも受験勉強な訳だし、悩むことが無いわけじゃないし、苦しいことだってあるわけなんだけれど……僕はやっぱり、これが好きみたいだ。楽しい。楽しい。
そうしてしばらく描いて描いて、最後に細部の仕上げに入るぞ、というところで、改めてライラを観察する。
ライラは編み物に集中しているのだけれど、編み物って『自分の全てを注ぎ込みます!』みたいな感覚でやるものじゃないみたいで、まあ、ちょっとぼんやりのんびりした調子で編み物をしているんだよ。なのでライラはそんなに怖い顔をしているっていう訳でもなくて……こう、優しい顔をしている。
ライラが編んでいるのは、長い……ええと、マフラー、だと思う。それがどんどん出来ていくのが中々面白い。段々伸びていくマフラーの端っこに、魔王や鳥の子が時々じゃれてはライラに『こら』と優しく怒られている。
そんな優しい光景が、焚火の光に照らされて、ますます優しく、温かく見える。……このかんじを表現したくて、色合いに結構気を遣った。
冬の風景だからひんやり見えるように、影を青く。けれど焚火の光はオレンジ。風景は少し彩度を落として……。
「よし、完成!」
「僕も完成!」
そうしてライラがマフラーを編み終わる頃、僕の絵も完成する。
「できたの?見せて見せて!」
「うん。どうぞ」
ライラは早速、というようにやってきて、完成したばかりの僕の絵を眺めていく。
「成程ね。こういうかんじだったわけ」
「うん。こういうかんじでした。……もうちょっと鳥の子の色味、落ち着かせてもよかったかなあ」
「そうねえ、端っこの方の鳥の子はちょっと彩度落としたみたいだけど、もうちょっと広い範囲で彩度落としてもよかったかも。それで、もっと描き込みが少なくてもいいかもね」
そして早速、講評。ライラはこういうの、遠慮せずに言ってくれるからありがたい。
それからしばらく、ああでもないこうでもない、と意見を言い合って、まあ、楽しく絵の練習は終了。
「ところで、ライラの方はどうですか」
「ああ、できたやつ?こんなかんじ。はい」
ライラが渡してくれたのは、やっぱりマフラーだ。藍染にしたらしい毛糸はふわふわというよりするする。とても手触りがいい。編み模様が少し入っているけれど、シンプルで洒落てる。ライラっぽいなあ。
「この糸、夜の国の糸なのよ。手触りが夜っぽいわよね」
「うん。実に夜っぽい手触りだ……」
どうやらこのマフラーの原料は夜の国で生まれたらしい。確かに、このしっとりとしてするするとして滑らかなかんじは、夜っぽい。実に夜っぽいと思う。
「羊毛、じゃないよね。これ」
「ああ、ええとね、めぉーんの毛なんですって」
成程。めぉーんの毛糸かあ。……うん。
「……めぉーんって何だろうね」
「さあ……まあ、手触りがいい毛を持ってる、よく分からない生き物……?」
夜の国にはまだまだ、僕らの知らないことがたくさんある。めぉーんって、なんだろう……。いつかちゃんと見て、描いてみたいな。めぉーん……。
「さて。じゃ、早速だけど夜の国、行ってこようかな」
それから、ライラは出来あがったばかりのマフラーを紙袋に入れて、そんなことを言った。
「夜の国?」
「うん。そう。レネと交換っこするのよ。糸はレネが用意してくれて、それを私が染めて……で、お互いにお互いのもの編もうか、ってことになってね」
僕が知らない間にそんなことしてたんだなあ、2人とも。
確かに、最近はすっかりライラが鳥を従えるようになってきたというか、何故かあの鳥もライラの言うことは素直に聞くから、夜の国への移動はまるで問題が無いらしいんだよ。今もライラに呼ばれて、鳥が『呼んだ?』と言わんばかりにひょっこりやってきたところだ。……まあ、その分、ライラは今日みたいに鳥の託児所をやってるんだろうけれどさ。
「あんたも来る?」
「うん。是非」
2人のプレゼント交換はきっと楽しいと思うので、折角だからご一緒させてもらうことにした。僕も鳥の上に乗せてもらって、早速出発進行。
夜の国は元々ひんやりした国だけれど、冬になると益々寒い。……けれど、鳥に埋もれて飛んでいく分にはあんまり寒くないんだ。何せこの鳥、冬毛に生え変わってますますふわふわなものだから!
「前が見えないわね」
「ふわふわすぎるね……」
……けれど視界良好とは言い難い。でも文句は言えない。何せ飛んでもらってるし、あったかいから……。
そうしてしばらく飛んで、夜の国のお城へ到着。
最近ではすっかり、光り輝く丸っこい飛翔物体……つまりうちの鳥が来ると、夜の国の人達は歓迎してくれるようになった。最初のころはまだ、『なんだあれは!』って驚かれたりもしてたんだけれど、もう最近はすっかり『また昼の国からあの鳥のお客さんだな』って定着しているらしい。レネからそう聞いた、ってライラから聞いた。なんでも、うちの鳥、僕らを乗せなくても一羽で夜の国にふらっと遊びに行ったりしているみたいで、余計に有名になってるんだってさ。
「レネー!こんにちはー!」
そうしてお城の一角の窓……レネの部屋のあたりまで行って、ライラがそう声を掛けると……。
「らいらー!こにゃにゃにわ!」
窓からレネがぴょこんと顔を出して、満面の笑みで手を振ってくれた。
「レネー!こんにちは!僕も来ちゃった!」
「にゃ?とうご!?とうごー!こにゃにゃにわー!」
僕も挨拶して、またレネがぶんぶん手を振ってくれて……ちょっとお行儀が悪いけれど、僕らは窓からレネの部屋にお邪魔します。鳥は僕らを窓の中へころんと転がすと、そのまま夜の国の広場の方へ飛んでいった。……どうやら、光り輝く神々しい鳥として夜の国の人達の人気を集めるのが楽しいらしいよ、あの鳥。
「はい、レネ。編めたから持ってきたわ」
それからライラがマフラーを出すと、レネは、ぱっ、と輝くような笑顔でそれを受け取って、きらきらした目でマフラーを見つめる。
「きれーい……」
「そ、そんなに綺麗な出来じゃないかもしれないけど……」
ライラはちょっと照れて謙遜しているけれど、でも、僕から見てもライラが編んだマフラー、『きれーい』なんだよ。シンプルながら、入っている編み模様のセンスがいいし、何より、網目が綺麗に揃っていて、技術の高さが見えるし……。
レネはライラから貰ったマフラーを捧げ持つようにして、くるくる回ってとってもご機嫌だ。そんなレネを見ていると、僕らまでなんだか嬉しくなってしまう。
「ふりゃー!」
そして、レネはマフラーを巻いて嬉しそう。あったかいんだろうなあ。顔を見るだけで分かるよ。
「ふりゃー、かあ。ふふふ、やっぱり、『まふりゃー』だけに?」
「まふ……まふりゃ?まふ、りゃー?」
「うんうん。そうよ。まふりゃー」
「まふりゃー!」
……そしてライラがちょっと間違った昼の国語を教えている!あああ、レネが、レネが、マフラーのことを『まふりゃー』だと覚えてしまった!あああああ……。
「らいら、らいら。じー!」
ひとしきり、ふりゃふりゃ、まふりゃふりゃ、とやっていたレネは、ぱたぱたと部屋の奥へ戻っていって、それからまたぱたぱたとやってきて、藍色の毛糸で編んだ手袋を持ってきた。
「わあ、すごい!レネ、あなた本当に器用よねえ……わあー……」
ライラはレネが編んだ手袋をきらきらした目で見つめていて、レネはそんなライラを見てはもじもじ照れている。
レネの手袋は、手の甲のところに綺麗な編み模様が入っていて、ちょっと凝った作りだ。レネもすごいなあ。
『夜の国は寒いので、みんなこうやって温かくする工夫をするんです』
僕もライラと一緒になって手袋を見つめていたら、レネがそう教えてくれた。成程、寒い夜の国だから、編み物文化も発達している、っていうことだろうか。
やっぱり、ものが無いとか、ちょっと困る環境とか、そういうのって美しいものとか素晴らしいものとかを生み出す下地になるんだなあ。
そっか、夜の国では、皆が編み物を……うん?
『ということは、タルクさんも編み物をするんですか?』
……僕は頭の中で、編み物をするタルクさんを想像してしまった。うーん、似合うような、似合わないような……。
『はい。でもタルクはへたっぴです!』
そしてレネが元気にそう返事を書いてくれたので、僕の頭の中のタルクさんが毛糸に絡まってわたわたし始めてしまった!あああ、似合うような、似合わないような……!
それから僕らはお茶を頂いて、世間話をして、それから帰ることになった。僕も向こうの世界に帰らなきゃいけないし、あんまり長居はできない。
「とうご、とうご」
……けれど、帰る間際、レネが僕を呼び止めて、僕の手に……なんと、例の藍色の毛糸で編んだ手袋を嵌めてくれた!
『ライラが染めた毛糸をたくさんくれたので、トウゴの分も編みました。もしよかったら使ってください。』
レネはちょっともじもじしながらそう書いたスケッチブックを見せてくれた。
……手袋はとても肌触りがよくて、温かい。そして何より、誰かが僕の為に編んでくれた、っていうのがとってもあったかい!
『ありがとう、レネ。喜んで使わせてもらうね。』
僕がそう書いて見せると、レネは嬉しそうな笑顔になってくれた。……僕も何か、お返し考えなきゃなあ。
夜の国の人達に大人気になっていた鳥を回収して昼の国に帰って、そのまま僕は現実の方に帰ることにする。帰ったらまたちょっと絵の練習をしてから寝ることにしよう。
「あ、そうだ、トウゴちょっと待って」
……と思っていたら、別れ際、ライラが僕を呼び止める。どうしたのかなあ、と思っていたらライラはライラの家の方へ走っていって、それから戻ってきて……その手に持ったものを、僕にくるくる巻き始めた!
そう!ライラが編んだマフラーだ!それが今、僕の首にくるくる巻かれている!
「え、あの、ライラ?」
「これ、どっかの誰かさんが毛糸を増やしてくれちゃったもんだから1本余分にできちゃったのよ。このまま置いといても余っちゃうし、あんたにあげる」
はいできた、とライラが離れると、僕の首には案外ちゃんと、マフラーが巻かれて収まっていた。
……指と首が、ほわほわあったかい。そしてちょっぴり、くすぐったい。
「ありがとう、ライラ。あったかい」
「そりゃよかったわね。寒いんだから向こうでもあったかくして過ごしなさいよね」
「うん。ライラもね」
さっさと帰ってしまったライラの背中を見送ってから、僕も門に入って向こうの世界に帰る。
……けれど、随分とあったかいものだから、その、ちょっぴり不思議な気持ちだ。
そっか。冬って、案外あったかいんだなあ。
次の週末。僕はいつもの如く、家を出る。家に居つかないのは今に始まったことじゃない僕だけれど、最近の僕はにこにこしながら軽やかに出かけていくものだから、親からしてみるとちょっと新鮮みたいだ。まあ、今や僕が出かけていく場所って、画塾か先生の家……つまり向こうの世界かのどっちかだからなあ。
「あんまり遅くならないで帰ってくるのよ」
「うん。まあ、晩ご飯までには戻ります」
そんな僕を珍しく玄関まで見送りに来た母親がいつもの決まり文句みたいに『遅くならないでね』を言った後、ふと、首を傾げた。
「あら、桐吾。そんな手袋とマフラー、持ってた?」
今、僕の手には藍色の毛糸の手袋。僕の首には藍色の毛糸のマフラー。世界一あったかい防寒具が備わっています。
「うん、貰ったんだ」
「も、貰った、って」
「編んでくれた。……人が編んでくれたものって、特別あったかい気がするね」
なんだかあったかくてくすぐったくて、ついついそういう顔になってしまう。
僕を思いやってくれる人がいる、っていうのが形として、そして温度として分かっちゃうものだから、その……嬉しい。それでいて、あったかくてくすぐったい。そんなかんじ。
「じゃあ、行ってきます」
そのまま僕は家を出ることになったのだけれど、その直前、母親が『桐吾もマフラーを編んでくれるガールフレンドができるような年頃なのね……』とかなんとかぶつぶつ言っているのが聞こえてきた。あの、お母さん、何か勘違いしていませんか……?そ、そういうのじゃないよ!そういうのじゃないってば!
それから。
「結局私達3人、全員お揃いになっちゃったのね……」
「うん。あったかいね」
「ふりゃ!ふりゃふりゃー!」
……僕ら3人、お揃いの手袋とマフラー、そして耳当てを装備して森の中で焼きマシュマロをやっています。いや、レネがこの間『ましゅまろを焼くんですか!?やってみたいです!』と非常に興味を示していたので、やってみることにしたんだよ。
……そして焼きマシュマロ会の提供と一緒に、僕からレネとライラに耳当てをプレゼントした。レッドガルドの町で見つけたやつで……それにちょっと、フェニックスの羽毛を描いて出して、耳にあたる部分に描き足してみたんだよ。フェニックスの羽毛はぽかぽかあったかいから。
そうしたら、レネにとても好評だった。ほんわり発熱する耳当ては、夜の国でも活躍してくれるんじゃないかな。
そしてライラも耳当てを気に入ってくれたみたいで、僕はちょっとほっとしている。ライラが気に入ってくれるかはあんまり自信が無かったから。でも、こうやって『3人お揃い』になってくれているライラを見る限り、心配は要らなかったみたいだ。
「ふふ、あったかいわね。ま、偶にはこういうのも悪くないかあ……」
「あったきゃ!ふりゃー!」
焚火に当たりながらマシュマロを焼いていると、鳥の子から何か聞いたらしい鳥が焼きマシュマロを狙ってばたばたやってきた。僕らはそれに『まあ折角だからお裾分けしてあげよう』ということで焼きマシュマロを分けてあげたり、鳥の羽毛に埋もれて『これが一番優秀な防寒具では?』みたいなことを話し合ったり……まあ、ぬくぬくぽかぽか、あったかく過ごしたのだった。
ちなみに、僕らが3人揃って同じマフラーと手袋と耳当てで森の中に居たところ、クロアさんから『あらまあ可愛い』と好評でした。
……可愛い、っていうのはちょっと違うんじゃないですか、クロアさん。僕は複雑な気持ちです。