鳥さんの一日
この森の例の鳥は、変な生き物だ。
まず、体がでかい。
コマツグミみたいな色味と鳴き声をしていて、卵もロビンズエッグブルーで実にコマツグミらしいのに、とにかく、でっかい。僕の身長より大きいし、ラオクレスよりも大きい。翼を広げたら5m近くある。とにかくでっかい。
次に、態度がでかい。
精霊だからっていうことなのかもしれないけれど、とにかく偉そうだ。当然の権利のように泉で水浴びするし、僕を抱卵に使うし、遠慮っていうものが無い。ついでに目立つのが好きなのか、人前にここぞというタイミングで出てくる。
そして……多分、魔力も、でかい。
僕も相当なものになったけれど、鳥は未だに僕の先輩として振る舞っているし、もしかしたら僕より魔力が多いのかもしれない。まあ、長らく森の精霊をやってきたんだろうしなあ。
……まあ、こういう風に何から何まで色々ビッグサイズなうちの鳥なんだけれど、よくよく考えると僕、この鳥とは長い付き合いになってきた。
フェイよりも馬よりも、鳥の方が僕と付き合いが長い。まあ、ここは数日の差だけれど。
……なのに、フェイよりも馬よりも、鳥のことが分からない!
これはゆゆしき事態じゃないだろうか!僕、一番付き合いが長いし一番森として身近な存在であるのに、鳥のことがよく分かっていないなんて!
分からなさ具合では馬も結構分からないんだけれど、その、馬はまだ、魔力が僕より少ないからか、分かりやすいんだよ。男より女の子達の方が好きで、ニンジンが好きで、案外世話好きで、優しくて賢い生き物達。うん。それは分かる。
……ただ、鳥は、こう、底が見えない、というか。いや、本当にあいつ、羽毛がフカフカでどこまでが本体なのか分からないから、そういう意味でも『底が見えない』んだけれど……。
「ということで、鳥の観察をしてみようと思う」
「成程なあ。確かにあの鳥、訳分かんねーよなあ」
今日は一日休日ということにして、僕は鳥を観察してみることにする。ついでにフェイも丁度やってきたので連れて来てみた。
「フェイのことはちょっとずつ、分かってきたんだけれどな」
「ま、そうだな。学園での事情もなんとなくバレちまってるし……俺、トウゴに隠してること、ほとんどねえしなあ」
ほとんど、っていうことは、あるのか。まあ、あるだろうなあ。僕だってちょっと隠したいこととか、無いわけじゃないし。……例えば、この世界に来るまでの、僕の現実の世界での生活とか、あんまり話したくないな、って思う。
「その点、あの鳥は隠していないにもかかわらず何も分からないところがすごいと思う」
「うー……そうだよなあ。目立ちたがり、ってのは分かったけどよー」
ね。逆に言うと、それぐらいしか分からない!
「……俺、一番気になってるのはよー、あいつに光の剣を持たせた時の変化な?綺麗な剣になってただろ?」
「ああ、うん、なってた。鳥の癖に」
……考えれば考える程、鳥のことが分からない!
「よし!やっぱり観察してみるしかない!」
「面白そうだから付き合うぜ!明日は一日暇だし!」
……そうして、僕とフェイは鳥の観察を始めることにした。
朝。
僕はフェイを起こしつつ、鳥の様子を見る。
……僕は森なので、森の中のことは大体分かるんだよ。自分の体の調子が分かるようなものかもしれない。
早速、森の中で鳥を探す。……すると、鳥は鳥の巣の中でふかふか丸くなって寝ていた。
「はよー……ふわ、鳥、どうだぁ?」
「寝てるね。案外お寝坊さんなのかもしれない」
僕らがちょっと早起きした、っていうのもあるけれど、どうやら鳥は朝、そんなに早起きじゃないらしい。
折角なのでそのまま、鳥の巣まで鳥の様子を見に行く。あんまり大げさに行くと鳥を起こしてしまいそうだったから、僕がフェイの腰のあたりにぎゅっと腕を回して、そのままフェイを抱えて僕の羽で飛んでいく。こうすると非常にコンパクトなかんじ。
「……お前にこうやって運ばれるとなんか変なかんじするなあ」
「そう?」
まあ、僕としてもフェイを捕獲して運んでいるような、そういう気分にならなくもない。
鳥の巣へ到着してみると、鳥はすぴ、すぴ、と寝ていた。鳥の足元には僕と先生が孵した雛が、やっぱりすぴすぴ寝ていた。
……うん。
「すげえー……鼻提灯出てる」
「鳥類って体の構造からして鼻提灯が出るものなんだろうか……?」
ぴよ、ぴよ、と鳥の鼻から鼻提灯が出て揺れている。……これは一体、何なんだろう!
僕らがじっと観察していたら、ふと、ふわふわやってきた妖精が鳥の鼻提灯に触れてしまったらしく、パチン、と音を立てて鼻提灯が消えてしまった。
それに驚いたのか、鳥はぶるん、と身震いしながら目を覚まして、それから、首を回してきょろきょろと周りを見て……僕らを見つけると、なんだか不満げに、キュン、と鳴いた。いや、君の安眠を妨害したのは僕らじゃないよ!
「おはよう、鳥」
鳥に挨拶してみると、鳥はキョン、と鳴いて、それから、巣の中の雛達をつんつん優しくつついて起こし始めた。雛達はぴいぴい鳴きながら金色の毬みたいに転げ回って、巣の中で楽しそうにじゃれている。かわいいなあ。
僕らが鳥と鳥の雛を眺めていると、やがて鳥は巣の片隅から何かを持ってきて……きゅぽん、と、それの蓋を開けた。
……うん!?
「あれは……太陽の蜜!」
「太陽の蜜!?月の、じゃなくてか!?」
「うん。夜の国で見たのを僕が描いて出したやつだ。ほら、一時期、森の中にゾンビが出てきたことがあったよね?あの対策っていうことで出しておいたやつだと思う……」
なんと、鳥は僕が描いて出した太陽の蜜の壺を1つ、せしめていたらしい!
僕らが驚いていると、鳥は壺の中に嘴をつっこんで太陽の蜜を飲み始めた。更に、雛鳥達に嘴から蜜を分けてやっている。……どうやら朝ご飯らしい。
蜜を食べ終わった鳥は、壺に枯草の繊維を固めて作ったらしい蓋をして、巣の片隅、食料貯蔵庫みたいになっている所にしまいこんだ。……チラッと見えたかんじだと、他にも僕が描いて吊るしておいたハムとか、干しておいた果物とか、そういうのもしまい込んであるような……。
更に、鳥はバサバサ飛んでいって、それからまた戻ってくると……嘴にいくつか、果物を持っていた。間違いない。あれは僕の家の庭のやつです!
「……優雅な朝食だなあ、おい」
「ほとんど僕から盗ってるものなんだけれどね……」
そうして鳥の一家がキョンキョンキュンキュンぴよぴよぴよ、と朝食を食べているのを見て、なんとなく釈然としない気分になった。このやろ……。
それから僕らも一度家に戻って朝食にした。そうしている間に鳥が水浴びに来てバシャバシャやっていた。君、本当にこの泉が好きだね。
「こら。君はもうご飯食べただろ」
そして僕らが家の前でホットケーキの朝食を摂っていたら鳥がずいずいやってきたので、慌ててホットケーキの皿を鳥から遠ざける。駄目です。これは僕らのご飯!
そうして『ホットケーキはあげないよ!』とアピールしていたら、鳥は、キュン、と不服気に鳴いてまた泉へ戻っていった。バシャバシャ、とやるその様子はまるで遠慮が無い。ああ、馬達がちょっと遠慮して鳥を避けている……。
朝食が終わったら、また鳥を探す。鳥は僕らの食事中にバサバサ飛んでいってしまったので、また森としての感覚で鳥を探して……。
「おや」
「ん?なんか変なとこに居たか?」
「……妖精公園に居る」
どうやら鳥は、妖精公園に居るらしい。そして……。
「広場の真ん中で、遊具と化している」
鳥の周りに子供達が集まって、ふわふわぽよぽよ、鳥で遊んでいる!
「君はそれでいいんだろうか」
「いいんじゃねえかなあ。なんか満足気だし……」
妖精公園に行ってみたら、中央広場の更に中心に、ででん、と鳥が鎮座していた。
巨大な鳥は、ソレイラの子供達の体の良い遊び道具と化している。子供達は羽毛に埋もれてみたり、鳥をつついてみたり、ふり、ふり、とやられている尾羽にじゃれついたりして楽しそうだ。
「なんだろうなあ、人気者!ってかんじなのが嬉しいのか?ありゃ」
「かもしれない。……あ、おやつ貰ってる」
「成程なあ、あれも目的かあ」
鳥は子供達にじゃれつかれつつ、時々、子供達からおやつを貰っている。おやつは主に、公園内の屋台で売っている妖精クッキーとか妖精ベビーカステラとか、妖精チュロスとか。そういうのは袋にたっぷり入って売られているから、鳥や周りの友達と分けっこしながら食べる、っていう子が多いみたいだ。
ちなみに、変身おやつは1個単位の売り方をしているから、鳥に分けっこ、っていうわけにはいかないらしい。まあ、色々食べると鳥も兎の耳とドラゴンの翼が生えて頭の上に光る輪っかが浮かぶ謎の鳥、とかになってしまうし。変身おやつは与えないで貰った方がよさそうな気はする。
「折角だ!俺も鳥で遊んでくるか!おーい!俺も仲間に入れてくれー!」
「あっ、僕も僕も」
まあ、鳥の気持ちはさておき、僕らも折角なので鳥をふわふわぽよぽよやる会に参加してみることにした。
……鳥の羽毛に埋もれてみると、ふわふわほかほか温かい。いや、ちょっと暑い。そして、鳥の尾羽の下に潜りこむと、ふりふりやられる尾羽が頭をぴょこぴょこ撫でていって大変くすぐったい。……まあ、ちょっと楽しくはある、かもしれない。
それから、一緒に鳥に埋もれていたソレイラの子供達が皆揃って「フェイさま、ふわふわさま、こんにちは!」と元気に挨拶してくれる。いや、僕はふわふわ様じゃないです。上空桐吾です!せめて町長さんって呼んで!
鳥がしばらく公園の遊具になっているようなので、その間に僕とフェイは妖精公園のスイレンのボートに乗ってきた。なんでも、フェイは前からこれがちょっと気になっていたんだそうだ。でも機会が無くてずっと乗れなかったんだってさ。
なら折角だし、っていうことで一緒に乗ってきた。こういうの、1人で乗ってもあまり楽しくないもんね。こうやって2人でのんびり話しながらスイレンの上でぷかぷかゆらゆらやると、中々楽しい。
それから大きなキノコの上でぽよぽよやってみたり、新しくできた大木の展望台に上ってみたり、フェイが作った検索システムが入っている図書館の様子を見に行ったり……。
……そうして過ごしていたらお昼になったので、妖精公園内でお昼ご飯を買って食べる。
「美味しいなあ。僕の、たまごサンドだった」
「俺のはチキンサンドだな!こっちはなんだろうなー……うおっ、フルーツサンドだ。じゃあこっちはデザートってことにするかぁ……」
僕らのお昼ご飯は妖精サンド。パンの中身が何かは買って包みを開けてみるまで分からないんだ。ただ、どうしても食べられないものがある人については、その人がうっかりそれを選びかけた時に妖精達が『それは駄目!』ってやってくれるみたいなので安心。
「へへへ、じゃあこっちも開けてみっかなあ。……あ、これアレだ!やきそばぱん、だな!」
「わあ、もう商品化されてる」
妖精サンドは日々商品開発されている。最近、僕が教えたパンがいくつか商品化されたらしくて……焼きそばパンとか、コロッケパンとか、そういうのも混ざってるみたいだ。この世界の人からしてみたら違和感のある食べ物じゃないだろうか。大丈夫かなあ……。
……と、そんなことを考えていたら。
「うおわっ!?お、おい、鳥!そりゃないぜ!デザートにとっといたのによー!」
いつの間にかやってきていた鳥が、フェイが横に避けておいたフルーツサンドを咥えて飛び去って行くところだった。
……ああああ。
その後、フェイには妖精達が『元気出してね』と言わんばかりにフルーツ増量版フルーツサンドをプレゼントしてくれたので、まあ、いいんだけれど。多分、この妖精達のフォローも想定されたものなんだろうけれど。
……それにしてもちょっと、ちょっと釈然としないなあ、あの鳥!
それから鳥は巣に帰ってフルーツサンドを雛達と分けて食べていた。……フルーツはともかく、クリームも食べちゃって大丈夫なんだろうか。いや、まあ、あの鳥のことだから、何を食べていても驚かないけれどさ。
その後鳥は巣でのんびり昼寝して、それからちょこちょこ花畑に行って日向ぼっこして、それから森の一角で特に何もせずじっとしていて、更にその後は遺跡の周りをちょこちょこ歩いて……。
……そうして色々な行動をしながら、鳥は悠々自適に過ごして、夕方。
「こいつ、1日に2回水浴びしてるのか……」
「綺麗好きだなあ。ははは」
鳥は、温泉に来ていた。ほら、ソレイラ郊外の、あそこ。
……その温泉の、貸切露天風呂の内の1つに空からやってきて、器用に脚でシャワーの蛇口を捻ってお湯を出してお湯を浴びて、更に器用にシャンプーを出して浴びて、器用に羽繕いを始めた。あああ、鳥が、鳥が、段々泡だらけのもこもこになっていく……!
「あ、あああ、微妙に背中が洗えてないよ、あれ」
そして鳥は、分かっているのかいないのか、微妙に洗えていない箇所がある!上空から見ている僕らとしては大変に気になる!
「……俺達も入るか?」
「うん、入る……」
……しょうがないので、僕らも温泉、入ることにした。ちゃんと温泉施設の受付を通って貸し切り露天風呂が鳥によって勝手に貸し切られていることを説明した上で、そこを僕が借りるっていう手続きをして……。
「ほら、鳥。洗ってあげるから後ろ向いて」
からから、と引き戸を開けて鳥の前へ出ると、鳥は『待ってました』とばかりに、キョン、と鳴いた。
「体がでっかいと、洗うのも大変だよなあ……」
「山に登ってる気分だよ……」
それから僕とフェイとで、鳥を洗ってあげた。丁寧に羽毛の奥の方まで洗って、シャワーでちゃんと流して。……シャンプーがちゃんと泡立つところを見ると、鳥、案外ちゃんと綺麗なんだなあ……。
そうしてなんとか鳥を洗い終えて、僕らは僕らで体を洗う。僕らも温泉、入るんだからね。ここの温泉はソレイラの大事な娯楽施設の1つでもあるし、町長としてもここの温泉の様子を確認したいし。
鳥がさっきものすごい量のシャンプーを使っていったことには目を瞑るとして、僕も鳥と同じシャンプーで頭を洗う。森の壁付近で採れるハーブや花を使っているらしいシャンプーは爽やかな香りで中々好評らしい。この温泉のお土産にもなっている。
それから同じくハーブや花の香りがする石鹸をたっぷり泡立てて、それで体を洗い始めて……。
その時。
鳥は何を思ったのか、じっと僕らを見て……そして。
「う、うわわわわわ!や、やめて!ひゃ、やだ、やだってば、ねえくすぐったい!くすぐったいよ!」
「うおわあああああ!?おいおいおい!待て!待てって!こら!やめ、やめろってええええ!」
僕とフェイをまとめて、鳥の羽毛でふわふわふわふわ、くすぐり始めた!何考えてるんだこの鳥!
やめてやめて!くすぐったい!くすぐったいから!ねえ!鳥!ねえ!ちょっと!
……そうしてたっぷり1分くらいくすぐられて、僕もフェイも息絶え絶えになったところで、鳥は満足げに、キョキョン、と鳴いた。
「……もしかして、さっきのお礼に洗ってくれた、ってこと?」
全身ひたすら羽毛でこしょこしょやられたのは、くすぐっていたんじゃなくて洗ってくれていたっていうことなのかもしれない。
「あの、次からはもうちょっとソフトにお願いしたいんだけれど……」
鳥に注文を付けるだけ無駄な気もするけれど、一応言ってみた。案の定、キュン、と首を傾げられてしまったけれど。
「くそー、なんかまだ体の感覚、変なかんじがするぜー……」
「僕も……」
こういう時、鳥に文句を言っても言うだけ無駄なので、諦めた僕らは温泉に浸かることにした。うう、まだなんとなく体がくすぐったい気がする……。
そして僕らが温泉に入ったら、鳥も後から追いかけてくるようにもぞもぞと無理矢理温泉に入る。
「……ぎゅうぎゅうだな」
「ぎゅうぎゅうだね……」
僕とフェイはなんとなく鳥に圧迫されつつ、温泉に入ることになった。
……温泉に入っている気がしない!鳥に埋もれている気しかしない!もう!
……そうして温泉でのんびりしたのかのんびりできなかったのか微妙な僕らは、鳥が去って行ってしまってからもうちょっとだけ湯船でのんびりして……それから森へ帰ることにした。
鳥は森の中で、羽のお手入れをしていた。具体的には、月の光の蜜を羽に塗っていた。……なんだろう。化粧水みたいなかんじなんだろうか。
ところでこの鳥、シャンプーで羽を洗っていたけれど、脂っ気が抜けてしまうと羽としてどうなんだろうか。ちょっと心配になってきた。
……心配になってきたので、森の鳥を追いかけて、そこで鳥の羽のお手入れを手伝うことにした。
「羽って髪と大体同じだろ?なら香油で手入れしてやればいいんじゃねえの?」
「成程……テレビン油でいい?あ、いたた、つつかないでつつかないで。冗談だから」
鳥につつかれるのでしょうがない、フェイのアドバイス通り、香油なるものを使ってお手入れしてみることにする。ちなみに香油はフェイが普段使ってる奴を見せてもらって、それを大きく描いて大容量で複製することにした。……じゃなきゃ、この鳥の羽のお手入れに一瓶簡単に使っちゃいそうだし!
「うわー、おもしれー。なんか気持ちよさそうだなあ、鳥」
「ね。……あっ、こらこら、寝ないでね」
香油を付けた櫛で羽を梳いてやると、鳥は気持ちよさそうにキョン、と鳴いて大人しくしていた。……こうしているとちょっと可愛らしいんだけれどなあ。この鳥。
鳥の羽がしっとりつやつやしたところで、鳥は巣に帰って夕食を摂り始めた。もうそろそろ鳥の追跡もいいか、ということになった僕らも森に帰ることにした。
「いやー……なんつーか、やっぱあの鳥、変だわ」
「うん。少なくとも鳥としては絶対におかしい」
そして僕らはそう、結論を出しました。
やっぱりあの鳥、変。普通の鳥は公園で人のご飯を盗まないし、お風呂でシャンプー使って羽を洗いません。
「途中で遺跡の辺りをうろうろしていたのは多分、ちょっと結界のほころびとかがあったら直してた、っていうかんじだと思うんだけれど……それ以外は概ね、遊んでたね」
「まあ……魔力の大きな生き物っつうのは、そこに居るだけでその周りに魔力を零して土地を豊かにしてくれる、っつう力があるわけだけどよー……」
「同じ精霊として、なんとなく釈然としない」
前からちょっと、鳥についてはなんとなくよく分からないというか、釈然としないような気持ちがあったのだけれど。今日一日鳥を見ていて、改めて、思いました。
……釈然としない!
それからフェイは『一応、精霊の生態の調査だからなあ、これ』とか言いつつ、今日の鳥の行動をレポートにまとめていた。真面目だなあ。
……けれど、改めてレポートになった鳥の一日を読んでみたら、その……。
「寝て食って風呂入って食って、遊んで食って、昼寝して遊んでちょっと仕事して、また風呂入って羽の手入れされて……んで食って寝るんだな、あれ」
「なんてやつだ……」
文字にしてみて分かる、鳥の自由な生活。なんてこった。ああ、なんてこった。
「……やっぱりあの鳥、変なやつだ」
僕の森としての感覚の中で、鳥が巣の雛達と一緒にうとうと眠り始めている様子が見える。
……幸せそうだなあ、あの鳥!ああ、なんというか、なんというか……幸せそうでよかったね!もう!
本日5月2日より『今日も絵に描いた餅が美味い』のコミカライズ版が発売となっております。何卒。




