20話:依頼と雷*8
ジオレン家へは馬車に乗っての移動になった。
僕が自分から行くことを決めて大人しくしているからか、相手の警戒は薄めだった。少なくとも、ナイフを喉に突き付けられているような状況じゃないし、ラオクレスも、彼の元同僚の人も無事だ。
今、馬車の中に居るのは僕とラオクレス、それからジオレン家の護衛の人が3人。……不穏な空気は無い。大丈夫だ。大丈夫。
ラオクレスは無事だし、彼の同僚の女性も、他の馬車に他の護衛の人達と一緒に乗るのを確認している。大丈夫。取り返しのつかないことは起きていない。
「……おい」
考えていた僕を、ラオクレスが横からつついてきた。
「何故こんな無茶なことをした」
「無茶だとは思ってない。勝算はある。だから」
「震えているぞ」
そう言われて、気づいた。
……手の感覚が、薄かった。
手で自分の腕を掴んでみたら、手がひんやりしているのが分かった。……さっきのラオクレスと同じような状態になっているらしい。
「……少し、緊張はしてるみたいだ」
「だろうな」
そうか、僕は緊張してるのか。
言葉にしてみたら、ああ、確かに緊張しているな、と思う。うん。緊張している。していた。
「……でも、こういうのは2回目だから。慣れてる。それに、1回目より、状況はずっといい」
だから今度は、意識して言葉にする。
言葉には力があるって、先生が言っていた。言葉に出すことで変わることもある、って。……生憎、僕はそれが苦手だけれど。
「だから、心配しないでほしい。あなたも、あの同僚の人も、ちゃんと助けられると思うから」
言葉にしよう。意識して言葉にしよう。そう思ってそう言うと……ラオクレスは、渋い顔をした。
「……助ける中に、お前自身も入れておけ」
「え……あ、うん」
凄く渋い顔をされてしまったので、これも答える。
「じゃあ、僕は……ラオクレスと、あの同僚の人と、それから僕も。ちゃんと助ける」
「そうしろ」
僕がそう言うと、ラオクレスは少し安心したような顔をした。そして、彼は言う。
「その限りで、お前のやりたいようにやればいい。多少の怪我だの魔力切れだのには目を瞑る。お前がそうなったら、その後は俺がなんとかしよう」
……ちょっと、びっくりした。『その限りで』『やりたいようにやればいい』。そして、『多少の怪我には目を瞑る』。『その後は俺がなんとかしよう』。
そうか。僕はやりたいようにやっていいのか。多少、怪我をしてもいい。動けなくなったら、ラオクレスが助けてくれる。だから、僕も含めて全員助ける。うん、そうか。
「……あくまでも、お前自身を最優先にしろ。俺達のことは……特に、インターリアの事は、最後でいい。分かっているか?」
「うん」
「お前は……いや、これ以上小言を言うと、親のそれだな……」
「親?……うん、確かに、そうかもしれない。親っぽいのかな、って思った」
「おい」
うん。あくまで、理想の、の話。
それから僕らは作戦会議をした。一応、他にもジオレン家の護衛の人達が乗っているので、小声で。……今更な気もするけれど。
いや、でも、護衛の人達は、僕らの向かいに座ってはいるのだけれど、僕らの会話には知らんぷりをしている。中には、あからさまに寝たふりをしている人も居る。
……つまり、どうやら彼らも『そういう』人らしい。心強い。
「この先、どうするんだ。予定はあるらしいが」
「うん。まあ……描くよ」
馬車に揺られる間、僕はラオクレスと話すことにした。
「いいのか、それで」
「うん。……これから絵を仕事にするなら、描きたくないものも、描かなきゃいけなくなると思うし……」
ラオクレスは少し心配そうだったけれど、うん、これは仕方ない。
あそこで人の命を助ける方法が他に思い浮かばなかった。僕が何とかしなくても他の誰かが何かしてくれたのかもしれないけれど、保証が無かったんだからしょうがない。
「描いて、どうするつもりだ?奴らにドラゴンを渡して、それで終いになると?」
そして、これでおしまいにはならないだろうな、と思う。多分、何だかんだ理由をつけて、僕をずっとジオレン家に居させようとするだろう。なんとなくそれはもう、想像がつく。そういうのは……まあ、想像は、つくよ。
けれど……そもそも、『ドラゴンが出てきたら』それどころじゃなくなるはずだ。
「ええとね……フェイのを出した時、最初、あの大きさじゃなかったんだ」
「……ドラゴンが、か?」
「うん。フェイの家ぐらいの身長があった」
覚えている。空まで届くんじゃないかと思われるくらいの大きさのドラゴンだった。それがどうしてか、随分縮んでフェイと一緒にいるけれど。
……うん。つまり、だ。
「それで、その時は地下の牢屋の中で描いてたから、天井が壊れたんだけれど」
「……おい」
ラオクレスは『察しがついた』というような顔をした。
「奴らの……家の中で、描く気なんだな?」
「うん、まあ、それでもいいかなって思ってる」
ジオレン家の人達は、レッドドラゴンの最初の大きさを知らない。フェイが今連れているドラゴンの大きさを想定するなら、室内でやっても文句は言わないだろう。だから、まあ、最後の手段は、『ドラゴンの頭突きで天井崩落』だ。
「……さっきああ言った手前、俺は止めないが」
「うん。ありがとう」
「その場合、脱出は?」
「出てきたドラゴンをラオクレスが召喚獣にしてくれればいいかと思うんだけれど」
脱出方法についてそう言ったところで、ラオクレスは驚いたような顔をした。
「……俺が、か」
「うん。僕の召喚獣にすると問題があるようなことをフェイが言っていたから」
僕がそう言うと、ラオクレスは思い出したらしく、頭痛を堪えるみたいな顔になった。
「だが……俺が、伝説の魔物を召喚獣に?性質の悪い冗談だ」
「そうかな」
僕は似合うと思うけれど。
「仮に、俺がそうしなかった時はどうする」
「フェイが来てくれると思う」
「……打ち合わせはしているのか?」
「してない。けれど、あれだけ派手にジオレン家の人達は来たんだから……」
そこでラオクレスは、大きく頷いた。
「レッドガルド家は、お前とは無関係に、動く道理があるか」
「うん」
まあ……つまり、どうにかなると思う。
ドラゴンを出せば天井が壊れて僕どころの話じゃなくなるだろうし、ドラゴンが出て来たらラオクレスに召喚獣にしてもらって、そのドラゴンに乗って脱出できる。そうでなくても、フェイと、フェイのお父さんは流石に動けるはずだ。僕を巡って、じゃなくて、もっとちゃんと正当な理由で。
「……ちなみにお前はそこまで考えて、さっき飛び出したか?」
「半分ぐらいは」
正直に言うと、脱出については今考えた。
「……でも、これがいいと思う。ジオレン家の人達は、ちゃんと断っても攻めてくる人達だ。だったら天井に空いた穴から空を見上げて、考えてもらうしかない。それに、あの女性もなんとか助けられる可能性ができたし」
ジオレン家の人達は、断った後にこうやって攻めてきたんだから、こうなるしかなかったんじゃないかと思う。それとも、もっと上手い断り方、あっただろうか。
「あの女性……インターリア、か」
でも、ラオクレスを今、こうやって複雑そうな顔にさせているあの女性があの場には居たから、これで良かったと思う。
「インターリアの事は……奴隷だぞ。俺も、あいつも」
「うん」
「気にせず見殺しにすべき状況だった」
「本当に?」
僕が尋ね返すと、ラオクレスは深々とため息を吐いて……それから、ぼそり、と言った。
「……お前の行動を賢いとは思わん。だが、感謝は、している」
それから僕らは、半日程度でジオレン家のお屋敷に到着した。
ちょっと護衛の人達と雑談したら、『ジオレン家の屋敷はレッドガルド家の屋敷からそんなに離れていない』というような情報が得られた。
一応、他の領地もまたいでいるらしいのだけれど、距離としてはそれほどじゃないそうだ。レッドガルド領は真ん中に大きな森があるせいで、屋敷も領地の端の方にある。だから余計に、ということなんだろう。
……イメージとしては、滋賀から奈良へ、それぞれの県庁所在地を直線状に移動したかんじだろうか?京都を途中で通るけれど、距離としてはそこまでの距離じゃない、みたいな。
「到着しましたよ」
「ああ、どうも」
僕は護衛の人に手伝ってもらって馬車を降りる。(手伝ってもらわなくても降りられたと思うけれど、護衛の人は僕を手伝いたがった。)
目の前にあったのは、チョコレート色やココアブラウン、それから時々ビスケット色のレンガで作られたお屋敷だった。屋根は橙。窓枠は白く塗ってあって、なんというか、洒落た印象を受けた。
……オレンジとチョコレートのケーキみたいだ。なんとなくお腹が空く配色ではある。
「やっとか。全く、酷い旅だった」
隣の馬車からは、サントスさんと彼の護衛達が降りてきていた。それから、ラオクレスの同僚の女性も、また別の馬車から降りてくるのが見える。よかった。
「……よし、ちゃんと居るな」
「うん」
サントスさんは僕を見て、少し不安そうな顔をした。僕が怖いんだろうか。怖がってくれるならそれはそれでありがたいけれど。
「なら行くぞ。父上がお待ちだ。……おい、お前らは持ち場へ戻れ」
サントスさんがそう言うと、護衛の人達がまばらに散らばっていく。門の方へ行ったり、はたまた、お屋敷の中へ駆け足で戻っていったり。
……そして戻っていく人達の中に、ラオクレスの同僚の女性も居たのだけれど。
「おい、インターリア・ベルシュ!どこへ行く!」
「……私は元々、カーネリア様の護衛ですが」
呼び止められた女性、インターリアさんは、振り返ってそう言う。その表情を見る限り、忠誠心はあまり無さそうに見えた。
「お前は別だ。来い。お前がカーネリアの所へ戻るのは、こいつとの契約の後だ」
けれどいう事を聞かざるを得ない、ということだろう。インターリアさんは、サントスさんから少し離れた位置に戻ってきた。
「よし。では行くぞ」
そして僕らは、お屋敷の中に入る。
「おお!来てくれたか!」
「はい」
ジオレン家の領主の人は、僕を見て嬉しそうな顔をした。
僕が自分の意思で歩いてやってきた、というのがまた嬉しいんだろう。うん。そうだ。僕は自分の意思でここに来た。自分の意思で、交渉のテーブルに着く。脅されるわけでもなく、自分の意思で。
……だから今、喉にナイフを突きつけられもしないし、それほど警戒もされていない。うん。これはちょっと大きな収穫だった。
「ということは、我が家の為にレッドドラゴンを召喚してくれる気になったということかな?」
「まあ……そうしないとあなた達は延々と犯罪を繰り返しそうだから」
僕がちょっと嫌味を言ってみても、領主の人は満面の笑みのままだ。もう、自分達がとんでもないことをしていても気にならないらしい。
「さて。では早速、契約しようではないか。……ああ、勿論、今回一度きりの契約だ。ジオレン家との継続的な契約は、今後追々考えてくれればいいとも。だが、レッドドラゴンは早急に必要なのだ」
……そうか。相手は何か、『急ぐ理由がある』のか。だからああいう手荒な真似にも出てきた、と。
うん。覚えておこう。
それから、契約書が出てきた。
残念ながら僕は読めないので、ジオレン家の人達が読み上げるのを聞きながら、ラオクレスの様子を見ていた。うん、本当に彼が居てくれてよかった。
「まず、1つ目だが、君にはレッドドラゴンを召喚してもらう。それによって、君は報酬を得る。いいかな?」
「ええと……それ、レッドドラゴンじゃないと駄目ですか?」
そして最初から、僕は口を挟むことになった。
「レッドドラゴンと同じくらい珍しくて貴重な生き物が他に居るなら、そっちにしたい」
レッドドラゴンは出さない、というのも先に決めておきたかった。フェイに義理立てする訳じゃないけれど、やっぱりレッドドラゴンはそう何匹も出したくない。なんとなく。
「……レッドドラゴンと同じくらい珍しくて貴重な生き物……というと?」
「考えてから決めます。出す前に確認はとります。いいですか?」
僕がそう尋ねると、流石にここで反対はできなかったらしい。領主の人とサントスさんとで確認し合って、これも了承してくれた。
……彼らは元々、『レッドドラゴン』が欲しい訳じゃなくて、『レッドドラゴンによって得られる地位や名声』が欲しかったみたいだから、別にレッドドラゴンじゃなくてもいいんだろう。うん。これも分かってた。
「次に、君はレッドドラゴン……いや、レッドドラゴンと同等の魔獣を、我らジオレン家の為に召喚してくれ」
「え?」
ラオクレスの為じゃ、駄目だろうか。
「つまり、ジオレン家の者が同席した上で、召喚してもらおう。……召喚はしたが逃げられた、とでもなると、話が違うのでな」
ああ、ドラゴンとかに逃げられる心配をしているんだな。そっか。それは……ちょっと想定外だった。
「いいな?」
「まあ……はい」
仕方ないけれど、ここは頷かざるを得ない。出した生き物がラオクレスの召喚獣になってくれるといいんだけれど……。
「ああ、君は、召喚された魔獣が我々に傅かない心配をしているのだったかな?それなら心配には及ばん。極上の魔石を用意してある。あれならばどんな魔獣でも手懐けられるだろう」
……まあ、最悪の場合でも、ちゃんと召喚獣が自分の気に入った住処を見つけてそこに住み着いてくれるなら、それはそれでいいのだけれど……。
「そして最後に報酬の話だ」
「はい」
報酬の話。ジオレン家の人達は『これはどうでもいいことだけれど』というような顔をしているけれど、ここが僕にとって一番大切なところだ。
「報酬は望むだけやろう。ただし、これだけ手間が掛かっているからな。成功報酬、ということにさせてもらおう。幾らだ?幾ら欲しい?」
ジオレン家の領主の人は、そう言って満面の笑みを浮かべる。
その笑顔は、『こちらは望むだけのお金を出すことができる』というアピールにも見えたし、『どのくらいの額を提示してくるかが見物だ』というようなものにも見えた。
……けれど、僕の要求は決まっている。
「お金は要りません。今まで提示されていた、杖とか、宝石とか、そういうのも要りません。その代わりに欲しいのは、僕と、護衛の彼の自由と安全の保障。もう僕らにもレッドガルド家にも迷惑はかけないっていう約束。それから、インターリア・ベルシュさんの身柄です」
僕が答えると、ジオレン家の人達は皆、驚いたような顔をした。
「な……私?私か?」
「はい」
一番驚いたのは、間違いなくインターリア・ベルシュさん本人だろう。相談する余裕が無かったから、それは申し訳ない。
「……インターリア・ベルシュがそんなに気に入ったか?それとも……ふむ、そちらの奴隷に宛がうつもりなら、もっといい奴隷が幾らでも居るが」
「彼女がいいです」
「しかし……」
渋られる。仕方ない。彼らとしても、『末永く僕を脅せる材料』は手放したくないだろう。
……でも、ここで退く気は無い。ここで退いたら、ここまで来た意味が無い。
その時だった。
「……ふ。まだ分かっていないのか」
ラオクレスが、少し笑いながら口を開いた。
あれ、と思っていると、彼は……にやり、と笑った。割と、怖い顔で。
「我が主君はレッドガルド家と契約している訳でもない、根無し草だ」
うん。根無し草です。
「うむ、そうだな。だからこそジオレン家と……」
「そして貴様らは無法者だな」
彼らの表情が凍り付いた。
「無法者には無法者の戦い方がある。それを貴様らは証明した。……だが、貴様らが法に則らない戦い方をするならば、こちらにもその用意はある」
「こちらには後ろ盾が無い。つまり、後ろに居る誰かを気にして振る舞う必要はない、という事だ。……意味は分かるな?」
ラオクレスがそう言った途端、ジオレン家の人達は、青ざめた。
……こういう振る舞いをしたくて契約しなかった訳ではないんだけれど、うん。役には立ってしまった。
そうだね。失うものが無い者は、強い。
僕はレッドガルド家の面子なんて気にせずに、このお屋敷の天井を崩落させられる。そういうことになる。
「もし今後もこちらを脅そうとするのならば、こちらは貴様らに敵対することになる。今回の契約だけで終わるなら、互いにその方がいいだろう?」
ラオクレスがそう言って詰め寄ると……ジオレン家の人達は顔を見合わせて……そして、頷き合うのだった。
……そうして、契約が結ばれた。
僕は、レッドドラゴンくらい珍しい何かを召喚する。ジオレン家の人達の前で、ジオレン家の人達の為に召喚する。
そして報酬として、僕らの安全と今後、それに加えてインターリアさんの身柄も、こちらのものになる。
こういう契約だから、少し、当初の予定とは違うけれど……まあ、やりようは幾らでもある、と思う。
契約を結んで、互いに書面を確認して、互いにサインする。(僕は元の世界の文字でサインした。ちょっと驚かれた。)
……その後、僕らは僕らの仕事場に、案内されることになる。
そうして僕は、地下に案内された。
「天井が思いの外高い」
真っ先にそこが気になった。
……ずっと螺旋階段を下りてきて、その先の地下室だ。底冷えするような空気の、地下室。天井が高い、地下室。
どうしよう。これ、天井を崩落させるには、とんでもない大きさの奴を出さなきゃいけないんじゃないだろうか。頑張らなければならない。
「召喚用の部屋、なのかな」
「だろうな」
どうやらここは、こういう用途専用の部屋、らしい。うん、まあ、そういう部屋があってもおかしくないか。
「寝泊りもここなのかな、これ」
「……こちらが召喚するまで、逃がすつもりは無いらしいな」
うん。寒々とした地下室の一角に、『急ごしらえですが運んでおきました』とでもいうようなベッドが並んでいる。あれ、僕らの寝床かあ……。
……色々と想定外ではあるけれど、まあ、やれるだけやっていこう。
そうして、僕らは部屋の中を一通り見て回って、それから、ジオレン家のメイドさん達が退室してしまってから、いつでも絵を描けるように大きな画用紙を描いて出しておくことにした。
『召喚には3日くらいかかりますよ』という話はしてある。それから、『何を召喚するかは相談する』ということも言ってあるので、その為の時間も貰えている。
そして……最初に彼らが急いでいたからなんとなく察しがついていたけれど、彼らは何か色々と用事があるらしいので、僕らを常時監視し続けることはできないらしい。
なので、やっぱり思う存分描こう。自由に、という訳にはいかないだろうけれど。でも、時間はたっぷりあるから。
そんな時だった。
カツカツ、と、足音が近づいてくる。あれ、と思っている間にも、足音は近づいてくる。
けれど……なんだか、その足音は随分と小さいように聞こえる。あれ、と思いながらドアの方を見ていると……やがて、キ、とドアが軋んで、開いた。
「あなた誰?お客様?」
そこに居たのは、ドレスを着た、蜂蜜みたいな色の髪にオレンジ色の目の、10歳くらいの女の子だった。
……予想外な訪問者だった。