10話:泥棒に花束を*2
食事を終えた僕らは、王都見学を楽しんだ。
今までも何度か王都に来ているけれど、僕が今まで見た王都はほんの一部でしかない。中心の方、王城。あと奴隷屋さんやセレス家がある方面。そんなものだ。
クロアさんは王都に住んで王都の裏を駆け巡っていただけあって、王都のあちこちに詳しい。僕らはクロアさんに案内されながら、王都のあちこちを巡る。
ドレス屋さんでクロアさんのドレスを新しく数着買って、装飾品を扱うお店で色んなアクセサリーのデザインを勉強して、お菓子屋さんで妖精と子供達へのプレゼントを買った。
子供達と妖精は何が好きかな、とお菓子を選んでいたら、クロアさんが「ライラにはお土産、買わなくていいの?」と面白がるように聞いてきたので……次は画材屋さんに行くことにした。
面白いものないかな、と探していたら、面白いものは絵の具売り場じゃなくて、紙やキャンバス地を置いてある売り場にあった。
『魔草の繊維で梳いた紙』とか、『魔法絵の具のノリを良くする魔法を織り込んだキャンバス地』とか、『水魔法の加工によって紙に描くように描けるガラス板』とか、面白いものがたくさんあった。
なので、ライラと自分へのお土産はこれらにした。絵の具によっても絵は変わるけれど、何に描くかにもよっても絵は変わる。楽しみだなあ。楽しみだなあ。
お土産をたっぷり買い込んだ僕らは、そのままクロアさんおすすめのお店でお昼ご飯。そこまで敷居の高くない、でも小洒落たお店で、僕とラオクレスだけだったらまず入らないであろうお店だ。客層も、なんとなくお洒落な人が多い気がする。……僕、場違いじゃないだろうか。ちょっと心配。
……けれど、ご飯を食べ始めたらそんなことは気にならなくなった。何故って、ご飯がとても美味しかったから。
琥珀色に澄み切ったスープは透明な見た目からは考えられないくらい旨味が濃かったし、蒸した野菜を角切りにしてソースで和えたらしいサラダは見た目にも楽しかったし、豆を潰して作ったらしいコロッケはさくさくして豆の甘みが美味しくて、魚の切り身はどういう調理法なのか、ムースみたいなくちどけだった。
そんな美味しいご飯は、勉強にもなった。店内に色々な絵が飾ってあったし、飾りつけが洒落ていたし……そして何より、お皿。食事が乗っているお皿が、凝っていた。そういえば芸術には陶芸っていうジャンルもあるんだよな、なんて思いだす。森に帰ったらちょっとやってみようかな……。
ご飯に満足したら、午後は武器屋さんでクロアさんの仕事道具を数点、買った。ええと、鋼でできた糸のようなものとか、細身のナイフとか。……ナイフは、時々クロアさんが投げているのを知っている。けれど、このワイヤーみたいなやつは何に使うんだろうか。救命具とか?
「良い品だな」
そんなお店の中、ラオクレスがふと、口元を緩めていた。彼が見ているのは、剣だ。ただし、ラオクレスが持っている剣よりずっと短い。僕の肘から指先ぐらいまでしかない剣だ。短剣、っていうのかな。
「いいでしょ。このお店、お気に入りなのよ」
クロアさんがウインクすると、店の奥で店主らしいおじさんが相好を崩した。厳めしい顔つきの人だなあ、と思っていたけれど、クロアさんのウインクには厳めしさもとろけてしまうらしい。気持ちはとてもよく分かります。
「綺麗だね」
僕には、武器の良し悪しは分からない。けれど、刃物の美しさ、というものはなんとなく、分かる。
金属の、青みがかった銀の、滑らかな光沢。鋭さが光で表現されるこのかんじ。モチーフにしたいなあ。描きたい。……そういえば僕がこの世界に来て2番目に実体化させたものは、ナイフだったっけ。鉛筆と紙の白黒だけで金属光沢の美しさを表現するのが楽しかった覚えがある。
「綺麗、か。まあ、そうだな」
ラオクレスもちょっと笑いながら同意してくれた。彼も分かる人、らしい。
「……そうだな。お前にはこのあたりか」
そしてラオクレスはふとそんなことを言うと、ラオクレスが見ていたよりずっと短くて小ぶりなナイフを数点、見始めた。
「クロア。どう思う」
「……そうねえ、こういうのも、トウゴ君に必要かしら」
……なんと、僕用のナイフを選んでくれているらしい!
「これ、鉛筆を削るにはちょっと大きいよ」
「そりゃあそうよ。大体あなた、鉛筆を削る用のナイフは持ってるじゃない」
まあ、はい。持ってます。この世界に来て2番目の実体化のナイフ、持ってます。先生の家で借りてた、黒檀の柄のやつのレプリカ。
「あれは実用品で、トウゴ君が使うみたいに、鉛筆を削ったり、木の枝を削ったりするためのものよね。でも、こっちは護身用。あなたにとっては必要のないものだけれど、見た目に武力を表現できるのはいいことよ」
クロアさんの説明を聞きながら、ラオクレスがものすごく真剣にナイフを見ているのを眺めて……ふと、気づいた。
「いや、でも、僕、『武力を持っています』っていう主張のために、宝石を身に着けているんじゃなかったっけ?」
僕がそう言うと、そうだそうだ、とばかりに管狐が出てきて、僕の首回りを一頻りふわふわやってくすぐって、やめてやめて、と僕が抗議するとまた、宝石の中へと戻っていった。……ちなみに、管狐の宝石はポケットの中だ。今、外から見える位置につけている宝石は全部、空っぽ。ただのフェイク。
「そうね。確かに、宝石を身に着けるのも召喚獣をちらつかせる材料にはなるわ。お金を持っている、ってちらつかせることにもなるけれどね」
……成程。お金持ちだと思われたら、それはそれで厄介な場面っていうのも、あるのか。今回はクロアさんの『お父様』に見くびられないように、っていうことで、それなりの数の宝石で飾られていた僕だけれど、場合によってはあまり有効じゃない、ということだよね。
「……ほら、宝石とガラス玉の区別もつかない奴も、居るみたいだし」
「あー……うん。そっか。分かった」
そして何より……宝石とガラス玉の区別がつかない人には、宝石が今一つ、威嚇として機能しない!確かにそうだ!そこにある魔力とかを感じ取ってもらえないんだったら、まるで、威嚇にならない!
ということで、クロアさんとラオクレスによる審議の果て。……僕のベルトには、一振りのナイフがくっつくことになった。
全体的に小ぶりなのだけれど、刃の滑らかな光沢がすばらしい。これは業物なんだろうなあ、と素人の僕でも分かる。それから、鍔、というのだろうか。柄と刃の間の部分に、控えめながら洒落た飾りがついていて、それがクロアさんのお気に召したらしい。僕も気に入った。後で何枚か描いてみようかな。
それから革でできた鞘を合わせて、ナイフが鞘からすっぽ抜けていかないように留め金を付けて、ベルトに吊るして、完成。クロアさんが小さく拍手をしている。ラオクレスはなんだか満足気だ。
「武器を持って入らない方がいい場所に行く時は、鞘ごと外して鞄の中にしまえばいいわ。それ以外の所では装備していても問題ないでしょうから、そのままでいてね」
「特に、ソレイラを出るような時には常に身に着けていろ。一定の効果はある」
僕、ナイフを使える気はしないのだけれど、ひとまずお守りみたいなものだと思おう。……腰にくっついた重みが、ちょっと頼もしい。
そんな具合に、僕らは王都観光を満喫した。楽しかった。
観光を満喫した後は、宿でもう一泊。宿は別の宿にした。クロアさんおすすめの『景観もサービスも考えなければ、ここが一番安全でいい宿ね』という宿だ。
……そこで。
「まあ、この宿ならまず大丈夫でしょうけれど。あんなことがあった後だし、ちょっと警戒しておいてもいいと思うのよね」
クロアさんが僕の隣でそう言う。
「慎重すぎるということはない。昨夜もこうしておくべきだったな」
ラオクレスがクロアさんの反対側でそう言う。
……そう。僕、今、大きな大きなベッドの中なのだけれど、両脇をクロアさんとラオクレスに固められている。
更に、ラオクレスが『召喚獣も出しておけ』と言うので、僕の頭の上あたりには鳳凰が丸くなって寝ているし、僕のお腹のあたりには風の精が丸くなって寝ているし、僕の脚の間に潜り込んだ管狐がそこでもやっぱり丸くなって寝ている。太腿の内側がふわふわしてくすぐったいので、そこは止めてほしいのだけれど、管狐はもう寝てしまったらしくて退いてくれない。うう……。
「……狭くないか」
「いや、狭いよ。狭くないわけは無いよ」
気遣ってくれるラオクレスにちゃんと『狭いです!』と主張する。いくら、大きな大きなベッドだからって、人間3人召喚獣3匹で寝ていたら流石に狭い!しかもラオクレスは名誉石膏像なんだ!体が大きなラオクレスが乗っかっただけで、このベッド、そんなに大きく見えなくなってしまうんだよ!
……でも、まあ。うん。
「でも、別にいいよ。僕、狭いところ、結構好きだったみたいだ」
この狭さが、ちょっと、安心。
……おかしいなあ。僕、この世界に来る前は、なんとなく自分以外の生き物の気配が近くにあると眠れないタイプだったはずなのだけれど、いつの間にか、周りを囲まれていても眠れるようになってしまった。うーん、馬達のアニマルセラピーで慣れてしまったっていうことなんだろうか。
そうして僕らは川の字になって眠ることになった。多分、一番最初に寝付いた人間は、僕。クロアさんとラオクレスに見守られているなあ、と、なんとなく恥ずかしいような気持ちでいたのだけれど、目を閉じていたらいつの間にか寝ていたらしい。
次に起きたのは、日の出前。鳳凰の尾羽に顔をくすぐられて起きたら、もう夜が終わっていた。安眠してしまった……。
……ちょっと横を向いてみたら、僕の隣でラオクレスが寝ていた。彼、静かに寝るんだよ。それこそ石膏像らしい寝姿と言える。
一方、クロアさんは時々何か、むにゅむにゅ言っているし、時々、ふにゅ、と笑う。いつものクロアさんらしからぬ、あどけないような表情で……ちょっとどきりとしてしまう。
更に、クロアさんは寝ながらゆるゆると身じろぎして、うっすら目を開けて……僕を見つけると、ゆるゆると腕を伸ばして……ぎゅ、と。僕を抱き枕にし始めた。うわわわわわ!
クロアさんは僕を抱き枕にして満足したらしく、そのまままた、すやすやと眠り始めてしまった。待って!寝ないで!離して!離して!
……そのまま1時間ぐらいしたらラオクレスが起きて、少しぼんやりした顔で僕と僕を抱き枕にすやすやのクロアさんとを眺めていた。いや、あの、見ていないで助けて。
ラオクレスはその内ちゃんと目が覚めたらしくて、僕が無言で助けを求めていたことに気づいてくれた。呆れたようにため息を吐くと、僕を越して腕を伸ばして、クロアさんの肩のあたりをゆさゆさやった。起こしちゃうの?気持ちよさそうに寝ているから起こすのは忍びなかったのだけれど……まあ、いい時間か。
「あら、おはよう。……ん?あらら?なんだか抱き心地がいいと思ったら、トウゴ君じゃない」
揺すられてクロアさんが起きて、何とも言えないことを言ってくれた。そうです。僕です。
「……うふふ。極上の抱き枕だわ!」
しかも彼女、何を思ったか、ぎゅ、と僕を更に抱き枕にしてきた!待って!起きてるなら離して!離して!笑ってないで離して!
と、まあ、朝からすっかり疲れ果てた僕だったけれど、クロアさんは満足げだったし、『久しぶりにぐっすり眠れたみたい』と言っていたし、まあ、寝具として役に立てたからいいやと思うことにした。
……この宿では朝食は出ないみたいだったので、僕らはさっさとチェックアウトして町に出て、朝早くからやっているパン屋さんでパンを買って、それを食べながら帰ることにした。
「召喚獣での旅は快適よね」
クロアさんはアレキサンドライト蝶の羽で飛びながらパンを食べている。
「うん。ラオクレス、次の食べる?」
僕はアリコーンの上でパンを食べている。
「ああ」
ラオクレスはアリコーンの上、僕の後ろ。片手で僕を支えてもう片方の手でアリコーンの手綱を掴んでいるので、ラオクレスの口にパンを運ぶのは僕の仕事だ。
……まあ、なんというか、緊張感のない旅路ではある。そして何となく、新幹線の中でご飯を食べるとか、高速道路を走る車の中でご飯を食べるとか、そういうのをなんとなく思い起こさせるなあ、これ。いつぶりだろう、こういうの。
そうして夕方には森に着いた。僕は子供達とライラに出迎えられつつ、お土産を渡す。……ライラが大笑いしていた。『あんたは王都に行ったってこうなのよね!』とのことだ。まあ、その通りです。でもライラだってこういう珍しい画材、好きだろ。
「で、これが封印の宝石」
僕はすっかりたんぽぽ玉になった宝石を出す。今日もたんぽぽは絶好調だ。
「……封印って動かしても大丈夫なのかよ」
「それなんだけれど、大丈夫みたいよ。お父様がグリンガル領にあった封印を王都へ運んでいて問題なかったんだから、移動させても大丈夫っていうことが証明されちゃってるのよね」
リアンは少し不安そうだったけれど、まあ、クロアさんの『お父様』が証明してしまっているので。これからは心置きなく封印の宝石を移動させよう。
「あ、そうだ。ラオクレス。忘れないうちに苔玉、渡しておくね」
「ああ」
それからラオクレスに苔玉を渡す。ちょっと口の端を持ちあげて笑っているところを見るにラオクレス、苔玉を大層気に入ってくれたみたいだ。ちょっと嬉しい。
それから、王都でのお土産話をしながら皆で夕食を摂って、ぐっすり寝て、翌朝。
僕らは、お昼過ぎに森を出た。
森から離れて、レッドガルド領のどの町からも離れた位置まで飛んでいって……そこで、たんぽぽ玉を出す。
ついでにそこでお弁当を広げて待っていたら、フェイがやってくる。
「おーい!随分ほのぼのしてるなあ、お前ら!」
「うん」
「……ま、連絡によれば、ちゃんと封印の宝石が手に入ったってことみてえだし、いいけどよ。いいけどよー……ほのぼのしてるなあ!」
まあ、うん。必要以上にカリカリする必要もないので、気持ちはのんびりとやっていきたい。
それからフェイにもお弁当のサンドイッチを分けてあげつつ、王都でこんなことがあったよ、という話をした。クロアさんの生家にも行ってきたよ、と。……『お父様』の話については、フェイが『俺の親父が興味を持つ気がするぜ』と言っていた。そうだね。なんとなく僕も、『お父様』とフェイのお父さん、気が合うんじゃないかという気がしている。
「そしてこれが封印の宝石かあ。……たんぽぽじゃねえか」
「そうよ。すっかりたんぽぽ玉になっちゃったせいで、こっちじゃなくてただのガラス玉が盗まれたんだから」
「いやあ、ほんと、世の中には間抜けな泥棒も居たもんだぜ。いや、まあ、たんぽぽ玉を見て『魔王封印の宝石』だと思う奴は居ねえと思うけどよお……っふふ」
ちなみにフェイは、『泥棒が宝石と間違えてガラス玉を持って行った』っていう話が気に入ったらしくて、さっきからことあるごとに笑っている。フェイってこういうところの趣味がクロアさんと似ている気がする。
「……で。早速、処理しちまうのか?」
「うん。取っておく意味も無いので」
さて。一頻り笑ったら、早速、カチカチ放火王の処理をしてしまおう。
「これで5つ目、か?」
「ソレイラ、ゴルダ、琥珀の池、妖精の国……今回の。うん。今回ので、5つ目」
5回目ともなれば、慣れたものだ。僕は早速、カチカチ放火王の封印の宝石からたんぽぽを外しにかかる。……いや、こうしないと、封印の輪っかが外せないので。
たんぽぽの根っこを粗方外したら、封印の輪っかを外す。よいしょ、と力を込めれば、案外簡単に外れた。
……そして。
ぽん、と音がして、カチカチ放火王が現れる。
……すっかりおなじみになった、小さな姿で。
うーん、やっぱりこいつ、ちょっと可愛いんじゃないだろうか……。
「……また会ったね」
挨拶してみると、カチカチ放火王は有無を言わさず、火の粉を吐き出して僕の掌を焼こうとする。危ない、危ない。
「ねえ、前に言っていたことって、結局何だったんだろうか。『奴』って誰?」
早速、この間、聞きそびれたことを聞く。『奴の名は……』で終わってしまったから、『奴』が一体誰なのか、ちゃんと聞きたい。
すると、カチカチ放火王は小さな体で僕を見上げて、少し苛立ったような顔をした。
『奴は』
うん。
僕は、よく耳を澄まして、待ち構えて……。
『―――だ。必ずや、貴様を殺す者だ』
……またも、聞き取れなかった。
「……今、何て言ったの?聞き取れなかった」
言葉があるはずの場所で聞こえたのは、ザッ、という、ノイズのような音だった。言葉でもなんでもない、不思議な、それでいてちょっと不快な音。
『何だと?』
「あの、だから、聞き取れなくて……ごめん、もう一回」
なので、今度こそ、と思って、そう、カチカチ放火王に頼んでみたら……カチカチ放火王は怒ったように、炎を飛ばしてきた。うわ、危ない。
『聞き取れないというのなら、貴様には聞き取れんのだ。どこまでも腑抜けた奴め!』
そしてそんなことを言われてしまった。そんなあ。
「……他の皆が、君の言葉を聞き取れないのと同じような理屈?」
……あ、嫌な顔をされた。演説がまるで人間に聞こえていなかったっていうことを思い出したのかもしれない。
『最早、貴様が知るべきことなど無い。余はこの世界を焼き滅ぼす!欠片も残さずに全て燃やし尽くす!それまでのこと!』
結局、カチカチ放火王はそう言って、細い火柱を上げ始めた。これ以上話す気は無い、ということなんだろう。
『ただ、貴様は死ねばいいのだ!そしてこの世界は全て消える!それが定めなのだ!』
更にそう言って、カチカチ放火王は火柱を僕に向けようとして……。
……ぷち。
フェイに、踏んづけられてしまった。ああ……。
「……こいつの踏んづけ心地、ちょっといいんだよなあ」
あ、あああ……。
……ということで、カチカチ放火王の事情はよく分からないままになってしまった。……あの、キン、とした耳鳴りのような音。カチカチ放火王の言葉が一部分だけ聞こえなかったっていうことは、僕には理解できない言葉で喋っていた、っていうことなんだろうか。
「なー、トウゴ。あいつ、何て言ってた?」
「うーん……肝心なところだけ、聞こえなかった。けれどひとまず、この世界を滅ぼしたいし、僕を殺したい、ということらしい……」
とりあえず、僕らには和解の道が無さそう、ということは分かってしまった。……できれば、カチカチ放火王側の事情も知った上で、色々やりたいんだけれどな。難しそうだ。
カチカチ放火王の宝石はこれで5つ目が処理完了、ということで、僕らはまた、森へ帰る。……事情がよく分からないのは何となくもやもやするけれど、できることをやっていくしかないのは変わらない。そうしないと、次の封印がある場所が燃えてしまうから……。
なので僕らは森の中、骨の騎士団が妖精達と一緒に通訳してくれるのを聞きながら、次の封印の場所を探すことにした。
……のだけれど。
「あ、あれ?また蛇の下?」
何故か、前回と同じ絵が僕らに提示されている。おかしいな、これ、つまり、今回の封印があった場所と同じ、っていうことだろうか?