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今日も絵に描いた餅が美味い  作者: もちもち物質
第十一章:振り回し振り回される喜びを
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9話:準備も楽しい結婚式*3

 そのまま僕とインターリアさんとマーセンさん、3人で王都郊外へ向かって、そして、そこで停めてあった天馬のところで、クロアさんを待つ。

 ……そして。

「お待たせー!」

 クロアさんは、本当にすぐ、戻ってきた。

 ……うん。いや、まあ、心配はしてなかったけれどさ。




 ということで、全員で帰宅。帰森。

「何か分かった?」

 早速、クロアさんに聞いてみると……。

「そうねえ、あんまり深追いしなかったから、ほとんど」

 クロアさんはそう言って両手を広げて『お手上げ』みたいなポーズを取った。まあ、流石のクロアさんでも、10分で手に入れられる情報は限られるよね。

「ただ、ゴルダ領主が王城へ向かっているのは分かったわね。謁見の約束を取り付けて、約束の時間までぶらついているところだったみたい」

 あ、それでも色々分かってるんだなあ……。

「そうね……だから多分、ゴルダは王家側につくことを決めたんじゃないかと思うの。そうでもなければこのご時世、王に謁見する利点なんて無いもの」

 王様が散々な言われようだ。流石はクロアさんだ。

「だから、もうしばらくは要警戒、かしら。ゴルダは一応、アージェント領に次ぐ財力を持っているところなわけだし、そいつが王家側につくなら、まあ、ちょっと面倒なことも、あるかもしれないし」

 クロアさんはそんなようなことを言いつつ、何かの計画を立て始めた。


「そうねえ、そこそこの数の貴族達がレッドガルド家について貴族連合をやろうとしている今、レッドガルド家と他の領地との交流を断絶させて困窮させよう、っていう作戦は使えないのよね。だから、王家側は単純に、ゴルダが味方に付いたとしてできることは限られるのよ。本当に只、味方を増やしただけっていうか」

 成程。村八分はできない、っていうことか。まあそれは分かる。フェイ達は村八分されそうな人達同士で村を作ってしまっているから、村八分なんてできるはずがないんだよ。だから、王家はそういう意味では、味方を増やしてもあんまり意味がない。うん。分かる。

「王家が貴族連合を潰そうとするなら、それこそ本当に武力しか無いんじゃないかと思うのよね。もう魔王もまおーんちゃんになっちゃったわけだし、勇者はラージュ姫とアージェント家の人との2人が居て……まあどうせ武力衝突は近々するでしょうから、そこでの兵力稼ぎにゴルダを引き入れた、っていうところかしら」

 え、武力衝突、起きるの!?そ、そうか……確かに、王家からしてみれば、他に打開策が無い。貴族連合が独立していくのを見送るか、武力で制圧して貴族連合を強制解体するかのどっちかだ。

 もし貴族連合を見送ったとしても、今度はアージェント家との一騎打ちになってしまう……のかな。或いは、アージェント家にも独立させて、残った小さな国を細々と運営していく覚悟……?いや、王家の人、そういうこと、考えるだろうか……。


「まあいいわ。王家に流れた情報なら全部手に入るから」

「えっ」

 僕が考えていたら、クロアさんはにっこり笑って言った。

「だって王家には私達の頼もしいスパイが潜んでいるでしょう?」

 ……スパイ?

「ラージュ姫よ」

 ……あ、成程。

 そうか。王家に流れた情報は、全部ラージュ姫が回収して、森に持ち帰ってくれる……。ここ最近ラージュ姫を見ていないと思ったら、最近は王城の方に詰めているらしい。

 ラージュ姫は森を視察に来ては『和解の可能性』を探ったり、『魔王討伐の機会』を探ったりしつつ……森に情報を全部提供して、それで、『目的達成ならず!森は手強し!継続して任務にあたる!』って王城に帰って報告しているそうだ。強かだなあ……。

「だから、対策はそれからでも間に合うと思うわ。まあ、強いて言うならゴルダ領の基本的な情報をある程度調べておきたい、っていうくらいかしらね」

 クロアさんは何かをメモして、とりあえずそこまでで考えるのをやめたらしい。クロアさんが考えるのをやめたんだから僕もやめる。まあ、これ以上考えても仮定に仮定を重ねることになって、あんまり効率が良くないし。




 ……ということで、僕らはそれからまた森でのんびり過ごした。

 僕は専ら、結婚式場を建てていた。アイボリーの大理石を基調に建物を建てて、内部はこういう会場らしく、天井が高く、柱が並んで立っている造り。

 天井には天井画。壁面にはステンドグラスを設置。飾りは森らしく植物。鮮やかで柔らかい色合いの緑がアイボリーの石材によく合って、中々いい具合。

 それから式場の外の庭を整えたり、ちょっとトレントを植えてみたり、色々と試行錯誤する中、無事、インターリアさんとマーセンさんの婚礼の衣装も届いて、そして……。




 結婚式は夏になる前がいいよね、ということで、準備が本格化してきた、ある日。

「た、大変です!」

 ラージュ姫がそう言いながら、妖精カフェにやってきた。


 妖精カフェには常に森の誰かが居る。だからとりあえずここに来れば大丈夫、ということでラージュ姫は妖精カフェに来たらしい。

 けれどカフェで大事な話はしにくいので、クロアさんがアンジェとリアンとカーネリアちゃんに店番を任せて、ラージュ姫を連れて騎士団詰め所に入り、そこへ僕らを招集してくれた。

 僕はこの様子をなんとなく見ていて、そして招集が始まったタイミングで式場の庭いじりをやめて騎士団詰め所へ走って向かった。

 ……そうして、あっという間に騎士団詰め所には森のメンバーが集まる。今回は子供達は抜きだけれど。

 そこでラージュ姫は、今回仕入れてきてくれた情報を、教えてくれた。

「この森の騎士団を解体せよ、という動きが出ています。恐らく、武力衝突を見越した動きかと」




 騎士団の解体。

 ……つまりは、森の戦力を恐れての行動。武力衝突を見越しての行動だ。

 王家は遂に貴族連合……いや、レッドガルド家を潰しにかかるんだろう。

 貴族連合の要はレッドガルド家だ。貴族連合はフェイのお父さんを中心に成り立っている。そして、レッドガルドの戦力の中心は……人数だけで言えばレッドガルドの町なんだけれど、結界とかその他諸々も考えるなら、ソレイラ。この森の町だ。

 だから王家は、手始めに森の騎士団を解体しようとしている、っていうことなんだと思う。

「それ、王家から要求が出るのか?」

「はい。国王からの命令、ということになる予定です。細部は分かりませんが、概ねは『ソレイラの騎士団を引き渡すように。命令に応じない場合、反逆と見做してレッドガルド家を取り潰すものとする』ということのようです」

 成程。『騎士達を引き渡せ』ってやることで本当に解体させる、と。うーん……。

「いや、そんなん断って終わりだけどなあ……」

 でもまあ、フェイの言う通り、そうなってしまうんだよな。

 だって、騎士達を引き渡したら戦力を失った森の町を襲いに来るんだろうし、騎士達を引き渡さなくても武力衝突らしいし……どのみち武力衝突になるんだったら、騎士を引き渡す理由はない。お引き取りください、っていうやつだ。

「まあ……それはどうでもいいや。とりあえずそろそろ王家が攻めてくる、ってことでいいよな?王家はこれでレッドガルド家が大人しく従うなんざ、思っちゃいねえよな?」

「はい。父は間違いなく、戦争を考えています。最早、王権を正しく取り戻すには戦しかあるまい、と……愚かな」

 ラージュ姫が吐き捨てるようにそう言うのを聞いて、複雑な気持ちになる。

 自分の父親が、自分にとって大切な人や場所を壊そうとしている。愚かな真似をしている。それって……すごく、辛いと思う。少しだけ、分かるよ。

「そっか……うーん、参ったなあ」

 そしてフェイは、がしがし、と頭を掻きながら困った顔をする。

 ……あれ。フェイが困るのって、なんだか不思議なかんじだ。フェイならむしろ、『戦争できるんならやってみろよ!こっちにはトウゴが居るぜ!』ぐらいは言いそうな気がした。

「やっぱり戦争は避けたい?」

 なのでそう、聞いてみる。

 確かに、戦争になったらどうしたって、何かの被害は出るだろう。土地を荒らされたり、人を傷つけられたり、してしまうかもしれない。

 僕もできるだけ、レッドガルドの子達や、レッドガルドの民達を守りたいとは思うけれど……何なら、レッドガルド家以外の貴族の領地に被害が出るかもしれないし。僕らは、その全てを守り抜く力は流石に持っていない。だから、戦争は避けた方がいい、っていう考え方も、分かる。

 ……と、思ったのだけれど。


「それ、王家には勝算がある、ってことになるだろ。流石のバカ王でも、まるっきり勝算の無い戦なんざ、しねえだろ」

 フェイの考えは……言われてみれば、確かに、そうだ。

 つまり……何か、ある。僕らの知らない、何かが。


今週は水・金が休載になります。次の更新は木曜日です。

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― 新着の感想 ―
[一言] ちょっとトレントを植えてみたり 久々のトレント登場。トーゴ作トレントは植物全般な感じで夢が広がりますね。個人的にはオジギソウとか好きですけどよく考えたら別の植物でもトレントなら動きますね。な…
[気になる点] 少なくともレッドドラゴンやユニコーンの群れと戦っても勝機はあると思っているんだろうけど、何かあったっけ? 現れた勇者も王家じゃなくアージェント家所属だったはずだしな ・・・和解か同盟で…
[良い点] 落ち着いたかにみせて まだまだウキウキ会場設営してるトウゴ君 [気になる点] ゴルダ領主登城からの動きって事は ゴルダ領主からのあそこの騎士団はうちから出た奴隷と密告 まだ奴隷から解放され…
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