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今日も絵に描いた餅が美味い  作者: もちもち物質
第十章:魂ここにあり
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3話:僕らの異文化交流*2

 僕らは早速、レネに連れられて、夜の国の町に出た。

 レネと一緒に、タルクさんも来ている。彼はレネの護衛なんだろうから、まあ、当然か。

「すごい……本当に夜の国、ってかんじがするわ」

「綺麗だよなあ」

 そして僕らは、夜の国の街並みを眺めて歩いている。

 ……黒っぽい石の石畳の道が続いて、ガス灯みたいな外灯が道の両側にずっと並んでいる。多分これ、魔石ランプみたいなやつなんだと思う。

 道の両脇に並ぶ建物は、お店だったり、民家だったり。けれどそれぞれ、建物の中から漏れてくる明かりは少なくて、そして、建物の前の小さな花壇や植え込みなんかに、光る花が植えてあった。少しでも光の魔力をとろう、っていうことなんだと思う。

 月見草みたいな薄い黄色の光る花がふわふわ揺れているのを眺めながら、僕は石畳の道を歩いていく。

 歩いて行くにつれて、人の姿も見る。

 ただ……人、っていうのは珍しい、というか、居ない、というか。

 素焼きの人形みたいな人だったり、よく分からないぷるぷるしたうにょうにょが人型っぽくなったやつだったり、影か靄みたいに見える体に服を着こんだだけだったり……。つくづく、レネや竜王様は人間に近い形をしているんだなあ。


『楽しいですか?』

 街を歩いていたら、レネがそんなことをスケッチブックで聞いてくる。

『すごく楽しいです!知らないものがたくさんある。なんでも描きたくなってしまいます。』

 なので僕もお返事。するとレネは嬉しそうに、ほっとしたようににこにこして何か言った。多分、『よかった』とかそういうかんじ。

『ねえ、さっきのお家の前にあった、ろうとが付いた銀色の箱みたいなの、何かしら。中が光ってるみたいだったけれど。』

『あれは、星と月の光を集める装置です。ずっと外に出しておけば、10日くらいで1日分の光が集まります。』

 ライラの方も、レネに質問をしたりしながら、夜の国の町の観光を楽しんでいる。

『あの綿菓子みたいなの、何だ?』

『わたがし?あの煙突から出ている星雲のことですか?あれは、星雲といって、星屑を溶かして沸かして煙にしたものです。』

『星屑ってなんだ?星が降ってくるのか?』

『光の細かい屑です。空から降ってきて積もるんです。魔王の食べ零しです。』

 フェイもレネに聞きながら、へえ、と感心したような声を上げている。そっか。魔王って食べ零しするのか……。

『この国には様々な種族が住んでいるのだな』

『あちこちから光を求めて集まってきた種族が狭い場所でなんとか生きてる状態だな。まあ、うまくやってる。何せ、種族ごとに争ってる場合じゃないからな。』

 ラオクレスとタルクさんもそんなやりとりを……こちらはスケッチブックじゃなくて、小さめのメモ帳でやっている。……スケッチブックは子供っぽくて嫌なのかな。それとも、隠れて話したいことがあるのか……。


 そうやって僕らが町を歩いて行くと、道行く人々は当然、僕らに気づく。

 彼らは僕らを見て不思議そうに首を傾げている。そして、レネの姿を見ると、途端に慌ててぺこん、と深く頭を下げるのだ。……やっぱりレネって偉い人なのかな。

「レネ」

「わにゃーにゃ?」

 僕は気になったので、レネにはっきり聞いてみることにする。

『レネは、竜王様の子供ですか?』


 レネはちょっと目を瞬かせて、それから、くすくす笑った。

『ちがいます。竜王様は白いドラゴンです。青いドラゴンじゃありません。』

 あ、そっか。そう言われてみれば……。

 ……レッドドラゴンが裏切った云々の話にあったけれど、この国は、白いドラゴンが治めていて、それを赤と青と黄色のドラゴンが助けていて……けれど、魔王の侵攻によって、白は灰色に、青は紺色になってしまったんだっけ。……ということは、黄色ドラゴンは茶色ドラゴンになってるんだろうか。うーん。

『じゃあ、レネは、王族ではない?』

『はい。違います。王族は白いドラゴンだけです。』

 そっか。なんとなく、レネが王子様か王女様なんじゃないかと思ったのだけれど……そうでもなかった。うん。

『ドラゴンは少なくなりました。青いドラゴンは自分と遠縁の親戚達しか居ません。白いドラゴンも、前王様と大臣ともう数人だけです。黄のドラゴンはもうちょっと居ます。』

 それからレネは、夜の国のドラゴン事情を説明してくれた。

『ドラゴンは皆、この国のお仕事を手伝います。青いドラゴンは、光を増やすお仕事をしています。』

 光を増やすお仕事……っていうと、光る花を植えたり、星屑を回収して星雲にしたりする仕事、っていうことだろうか?

『トウゴ達の世界の生き物を捕まえて太陽の光の蜜を出す方法を生み出したのは、青いドラゴンのご先祖様です。青空の木を守っているのも、青いドラゴンです。今は、青空の木のお世話が自分の仕事で、そのほかの研究を遠縁の親戚達がやっています。』

 成程。……ということは、レネは、僕がレネの部屋に居候している間、そういう仕事をしていたのかな。

『だから、竜王様から、捕まえてきた生き物を餌にして持っていくから、それを使って太陽の蜜をとるように言われていました。』

 レネがちょっと悲しそうな顔をする。……そっか。あのうにょうにょに餌を与えてふりゃーな蜜をとるのも青空の木のお世話の一環だから、レネの仕事なのか。

『でもトウゴは餌にしたくなかったです。だから連れて帰りました。それで、竜王様に怒られてしまいました。』

 助けてもらった身としては、只々申し訳ない。だって……きっとそのせいで、レネもタルクさんも、酷い目に……。

『あの寒い塔に居たのも、怒られてしまったからですか?』

 僕がそう尋ねると、レネは慌てて、文字を書いて見せてくれる。

『トウゴが気にする必要はありません!我々ドラゴンは、互いにできるだけ傷つけ合いません。数が少ないから、殺すようなことはしないんです。大丈夫です。』

 レネはそう、言ってくれるけれど……一生懸命にスケッチブックを僕に見せて『大丈夫だよ』とやってくれるのが、なんだか申し訳なくてしょうがない。

『でも、寒かったんじゃあ?あそこは光が吸い取られてしまうみたいな寒さでした。』

『はい。暗闇の塔は中に入っている生き物から光の魔力をちょっとずつ吸い取る塔です。ちょっぴり寒かったです。』

 ……ちょっぴり寒かった、と、遠慮がちな小さな文字で書いたレネを見ていると、なんだか、どうしようもなくたまらなくなってくる。

 なので……レネの手を握ってみた。

 レネは最初びっくりしていたけれど、その内、僕よりも低い体温の手は、ひんやりやんわり、僕の手の中に落ち着いた。

「ふりゃー!」

 レネは嬉しそうに笑うと、僕と手を繋いだまま歩き出す。その様子を見ていたら、なんだか僕も嬉しくなってきて、『あったかい?』と聞いてみようという気になった、のだけれど……困ったな。これ、鉛筆が持てないぞ。

 僕らって、片手が塞がってしまうと、意思の疎通が取れなくなるんだ。うっかり手を繋いでしまうと、鉛筆かスケッチブックかが持てなくなってしまうから……。

 ……うん。でも、無くても大丈夫だ。

「ふりゃー?」

「ふりゃふりゃ!」

 そういえば僕ら、『あったかい?』のやりとりなら、翻訳機と文字のお世話にならなくてもできるんだった!




 それから僕らは、夜の町をあちこち回ってみた。

 レネが案内してくれたお店は、ランプ専門店だった。棚や机の上にランプがたくさん置かれて、天井や壁に綺麗な細工のランプがたくさん吊り下げられて、なんだかすごい眺めだった。

 真っ白の磁器で作ったレース細工みたいな覆いが掛けられたランプは、落ちる影がものすごく綺麗だったし、銀色の魚の鱗みたいなものが張り付けられたランプは鱗に反射した光が少し増幅されて出てくる不思議なものだった。ガラス細工らしいランプがたくさん連なっているところは、まるで大きなシャンデリアのようですごく綺麗だ。

 ランプの中に入っているものも色々で、油に火を灯すものもあれば、魔石ランプもある。それから、星屑をつかったランプもあって、それがまた、すごく綺麗なんだ!ガラスの覆いの中、小さな小さな星型の欠片がふわふわ踊りながら光っているのは、なんとも幻想的な眺めだった。

「すごい……」

「描きたい……」

 僕とライラが揃ってランプにくぎ付けになると、レネは嬉しそうに頷いて、それからお店の人と何か話して……そして、僕らにスケッチブックを見せてくれた。

『描いていいそうです!』

 ありがとうレネ!君って最高だ!




 ランプ屋さんでひたすら描いた。

 ライラはランプを1つ1つ緻密にスケッチしていたし、僕は魔法画で店内全体の様子を描かせてもらった。

 それがもう、楽しくて、楽しくて……。

「おい、トウゴ」

「うん」

「もう昼だ。夜だが」

 えっ、もうそんな時間!?

 ……時計を見たら、もう昼過ぎの時間だった。いや、外は夜なんだけれど。

 ということで、仕方ない。僕らはランプ屋さんにお礼を言って、ついでに描いて出したヒマワリの花束をプレゼントした。

 太陽の花だから、少し明るい気分になれるかな、と思って描いて出したのだけれど……出したヒマワリは、その、光っていた。お店の人、驚いてた。僕だって驚いた。

 ……そっか。僕の魔力は光の魔力でいっぱい、なんだっけ?

 ということは、不用意に何か出すと、この世界だと光ってしまう場合があるのか……。

 気を付けよう……。




 ご飯はタルクさんのお勧めのお店で摂ることにした。……この町に詳しいのは、レネよりタルクさんなんだと思う。レネはあんまりお城から出ないのかな。

「すげえ!このジュース、光ってる!」

「こ、これ、大丈夫なの?飲めるの?」

「美味しかったよ」

「成程、お前はもう飲んでいたか……」

 とりあえず、僕らの反応を見て、タルクさんは存分に楽しんでいるらしかった。光るジュースに、具だくさんのお粥だかスープだか煮物だかよく分からないやつ。光る星みたいな果物。肉と食用花らしいものが乗せられたパン。こんなメニューだけれど、全てが異文化のもので、皆、興奮していた。僕はちょっと慣れている分、なんとなく優越感……。

 食べ物は全部、美味しい。光ったりするけれど、それだってこの世界の国の人からすれば栄養補給みたいなものなんだろうし、そう思うとちょっと楽しい。

 スープだか煮物だかお粥だか分からない奴はまろやかな味にハーブが利いていて、飽きの来ない味だった。肉と花のパンは、肉がなんだかミルキーで、とても柔らかくて、不思議な味。花は光ってて、しゃきしゃきしていて美味しい。そして……。

「このサクサクする星みたいな果物、何かしら。この味、すごく好きだわ」

 ライラが食べているのは、少し光る、星型のキウイみたいな果物だ。僕もレネの部屋で食べた。サクサクした歯ざわりで、きゅっ、とすっぱい。そっか。ライラはこの味、すごく好きなのか。結構すっぱいけれど……。

『これは星マタタビだ。猫にやると光りながら酔っぱらう』

「是非やってみたい」

 光りながら酔っぱらう猫、見てみたい。というか、光る猫を見てみたい。

 ……と、思っていたら。

「……実践してるなあ」

 鳥が、僕の皿から星マタタビをつまんで持っていった。サクサクサクサク、と食べて、それから……『酔っぱらいませんけど?』みたいな顔で首を傾げた。うん、君、猫じゃないだろ。

「光っているな……」

「折角蜜を落としたと思ったらこれだものね……」

 鳥は昨夜、浴場で蜜を落としてすっかり綺麗になって光らなくなっていたのだけれど、今、星マタタビを食べたせいでまた発光する鳥になってしまった。なんだこいつ。

 ……やっぱりこの鳥、光るのが好きなんだろうか?




 なんだか不思議な食事を終えて、フェイが『さっき食った肉、ものすごく美味かった!あれ、土産にしたい!』と発言したのでその後はお肉屋さんへ。

 ……分かってはいたけれど、牛肉とか鶏肉とか豚肉とかそういうのじゃなくて、『ふりゃ兎の胸肉』とか、『月光蛙のもも肉』とか、『水晶蛇のぶつ切り』とか、『めぉーんの骨付き肉』とか、そういうものが売っていた。ちなみに、さっきの食事処で食べた美味しかったお肉は、ミルク鳥の肉、らしい。納得の名前だ。

 ミルク鳥の肉のパテが売っていたので、フェイはそれを購入……しようとして、そもそもお金を持っていないことに気づく。

 いや、だって、この世界のお金なんて持ってないよ、僕ら。

 ……けれど、タルクさんが自然な動作でさっとお会計をして、フェイにミルク鳥のパテの瓶を渡す。スマートだなあ。

 いや、でも、そういうわけには。僕ら、お客様ではあるけれど、でも、友達でもあるのだし、友達同士でお金の貸し借りはしない方がいいっていうことくらいは分かるし。

 ……うん。

「あの、レネ」

「わにゃーにゃ?」

 僕はレネをつついて呼びつつ、聞いてみた。

『高く売れるもの、それでいて市場を混乱させないようなものって何だろう』




 それから僕は星型の宝石を沢山作って袋詰めした。レネは「きれーい……」と呟いて目をきらきらさせていて、タルクさんはものすごく笑っていた。どうやら金目の物を出して売る、っていうのがタルクさんの笑いのツボを刺激したらしい。よく分からない。

 夜の国でも魔石は需要があって、特に、僕の魔力が籠ったものって、光の魔力が多めらしくて、そういう点も含めて、すごく高値が付くだろう、とタルクさんが教えてくれた。だから、あんまり高価になりすぎないように、大きさは控えめで、ざらざらといっぱい。

 ……ちなみに星型なのは、この世界で星型が人気らしいから。この世界では星と月は光の象徴だから、とのことだった。


 タルクさんが『こういうことならいい店がある』と紹介してくれたお店で星型の宝石を売ってお金に変えれば、これでお金には困らないだろう、と思われる額が手に入った。夜の国のお金は不思議な模様が刻まれた硬貨で、なんというか、こういうところにも異国情緒って、あるよね。

 特に、金貨のデザインがいい。金貨には……太陽、が、刻まれている。この世界では、太陽は架空の存在っていうか、伝説上の存在っていうか、そういうかんじらしいのだけれど……それだけに、デザインがすごく凝っている、というか。

 憧れ、っていうものがすごく伝わってくるんだ。こんなに綺麗にデザインされた太陽の紋章、他では見られないだろう。このデザインは、太陽に憧れる夜の国でしか生まれないものだ。きっと。




 それから他にも数軒、タルクさんお勧めのお店を巡った。

 ……タルクさんが連れていってくれるお店は、割と庶民向け、らしい。レネが教えてくれたランプ屋さんは多分、王族御用達、みたいなお店だったのだけれど、それとはちょっと雰囲気が違う、というか。

 装飾品を売っているお店では、宝石や金属も多いけれど……布や木彫り、もっと違う素材のアクセサリーなんかも多い。その分、雑多で、きらきらしていて、これはこれで面白い雰囲気。描きたい。

 ここではレネよりもタルクさんの方が顔が利くらしい。タルクさんがお店の人に掛け合ってくれて、僕らはお店の端っこの邪魔にならないところで、絵を描くことができるようになった。

「ここの商品、可愛いわね」

「気に入ったの?」

「ま、そうね。嫌いじゃないわ。……まあ、私、こういうの似合わないから、見るだけなんだけどさ」

 ライラは棚1つ分を丸ごとスケッチしながら、そこに並ぶアクセサリーを眺めている。僕は今回も店内全体の様子を魔法画でざくざく描いていて……そして、時々、ライラの手元を見せてもらった。

 ……なんとなく、描き込みが多いやつは、見れば分かるよ。


「珍しいな。お前がライラより先に画材を片付けるのは」

「うん」

 ラオクレスが驚いていたけれど、僕は少しだけ早く片付けた。そして、棚に並んでいるアクセサリーの中で、多分、一番ライラが描き込んでいたやつを手に取る。

 それは、見事な深い藍色の地に白の刺繍模様が入ったリボンと、リボンの結び目にくっついた銅色の金属の飾り、そして飾りの中心についた、控えめな大きさの宝石だった。よく分からないけれど、多分、髪留め。……だと思う。

 色合いがライラっぽい。彼女に似合うと思う。

 ……ということで、それを購入した。いや、ほら、ライラはこういうの、欲しいと思ってもすぐに我慢するから。

 今回の夜の国行きだって、多分、我慢しようとしてたし。だから……ちょっと、こういうのも、いいんじゃないか、と思って。


 僕よりも長く絵を描いていたライラは、僕がもう片付け終わっていることに気づいて慌てて片付けていた。……いつも僕が片づけを急かされる側なので、ちょっと新鮮だ。

「ライラ。これ」

「えっ」

 そこに僕は、さっきのリボンを出す。するとライラは目を円くして、僕とリボンを交互に見た。

「ど、どしたのよ、これ」

「似合う気がしたから」

「私のために?そんなことにお金使わなくったって……」

「とは言っても、この国のお金はこの国でしか使う用事、無いし……」

 ライラは案の定、尻込みというか、遠慮というか、そういう姿勢だった。けれど、もう、買っちゃったし。僕が付けて似合うものじゃないし。

 ……ということで、ライラにリボンを渡すと、ライラは戸惑っていたけれど……やがて、ちょっと笑って、ありがと、と言った。

 その顔を見て、あ、描きたいな、と思った。うん。もう一回さっきの顔、してくれないだろうか……。

「あんたのことだから、私がこれ着けてるの描きたいとか言うのかと思ったけど」

「あ、うん。それは描きたい」

 是非描きたい。さっきの表情込みで描きたいし、表情抜きにしても、アクセサリーの類を身に着けるライラって貴重だし。

 ところでこの飾りって髪の結び目に着けるやつなのかな、これは。なら、斜め後ろからのアングルで描くのがいいかな。ライラは今、栗色の髪をポニーテールにしているし。ところで、この髪型、森の馬達に好評らしい。なんだろう。親近感が湧くんだろうか。




 ……その後、公園みたいなところでまた描いて、鏡屋さんでまた描いて、そうしている内に時間が大分経ってしまったので、僕らの夜の国観光はいったん終了。

 異文化に触れるって楽しい。色々なものが描けたし。色々なものを見られたし。

 楽しかったなあ、と思いながら、帰路につく。僕は鳳凰に掴まって、フェイは火の精、ラオクレスはアリコーン、ライラは鳥。タルクさんとレネは自力で飛べる……らしいのだけれど、レネがちょっとアリコーンに見惚れていたのを見つけたラオクレスが、レネと2人乗りすることにしたらしい。レネはアリコーンに乗せられて、興奮気味だ。

 今回の観光、レネにとっても楽しかったらいいな、と思う。

 僕のせいでレネは暗くて寒いところに閉じ込められてしまっていたわけだし、そうでなくとも、普段、あんまり城から外に出ないんだろうな、というかんじがしたし。


「楽しかったなあ」

 空を飛びながら、フェイがそう、話しかけてくる。僕の鳳凰もフェイの火の精も賢いから、僕らが話し始めると、羽音を小さめにする飛び方をしてくれる。ありがとう。

「夜の国、おもしれえなあ。食いモンは変わってるし、人も変わってるし……」

 まあ、そうだよね。光る食べ物も、素焼きの人も、昼の国では見ないものだ。

「いいところだな。ここ」

「うん」

 フェイに同意しつつ、空を見上げる。……空は相変わらずの夜模様だ。つまり、魔王に光を食べられてしまった空だ。

「……魔王、どうにかしねえとな」

 ……うん。そうだ。

 この、風変わりで楽しい世界を滅ぼされたくない。だから、この世界の魔王をなんとかしなくては。一刻も早く……。

 でも。

「ま、夜の国のペースに合わせようぜ。こっちの人達だって、急に魔王が空色になっちまったらびっくりするしさ」

「うん」

 ……急ぎ過ぎても、よくない。彼らのペースに合わせなきゃ。僕らだって異文化交流だけれど、それは、夜の国の人達にとっても同じなんだから。

「とりあえず、一回戻るか?親父達にも報告してえし」

「うん。そうしよう」

 5日はかかる、っていうことだったから、僕らは一度、昼の国に帰ることにする。皆に報告したいし、それに……。

「……あの」

「ん?どうした?」

 僕は、フェイに提案してみる。

「レネ達も連れて帰って、いい?」


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