4話:夜の国*3
「よかった、無事だったんだね」
鳳凰と管狐は僕の手にすりすりと擦り寄ってきて、お互いに無事を喜んでくれているみたいだ。管狐と鳳凰を抱いていると、暖かくて柔らかくて、なんだか落ち着いてくる。
……そうしていると、隣でレネがもそもそ動いて、起きだしてきた。……そして、僕の鳳凰と管狐を見て、きょとん、とした後……ぱっと表情を明るくする。あ、こういう生き物、お好きですか?
「触る?」
僕がレネの手をそっと掴んで鳳凰の背中に乗せると、レネは抵抗せずにそのまま鳳凰の背中に触れて……そして、怖々と、鳳凰を撫で始めた。
鳳凰は撫でられて気持ちよさそうに目を細めている。ついでに、首をレネに凭れ掛けさせて、すっかり甘える体勢だ。
それから管狐もするするとレネの肩に登って、レネの首回りをご自慢の尻尾でふわふわ撫でていく。レネは小さく悲鳴を上げてくすぐったがるけれど、管狐は構わずレネの襟から中に潜り込んで、あちこちくすぐって、最終的には袖から出てきた。
レネはびっくりしていたけれど、すぐに鳳凰と管狐に慣れたらしい。2匹を撫でたり眺めたりしながら、楽しそうにしている。よかった。お互いにお互いを気に入ってくれたみたいで。
……レネは鳳凰と管狐を触りながら、目をきらきらさせている。画廊で僕の絵を見てた時と似ている顔だ。
そういえば、この場所に来てから、管狐みたいな真っ白とか、鳳凰みたいなカラフルなのとかは見てないな。そういうところも含めて、珍しいのかもしれない……。
……けれど、レネはあんまりゆっくりしていられないらしい。
僕らがベッドの上で生き物2匹と戯れていたら、コンコン、とドアがノックされる。
レネは慌てて返事をしつつ、僕に毛布を掛けた。僕も慌てて鳳凰と管狐をしまって、毛布の中に埋もれた。
……すると、ちょっとして、レネが毛布を退けてくれた。どうやら僕を隠さなくていい相手らしいので僕も毛布の中から出てみると、そこには昨日の謎の生き物が居た。あの、薄いグレーの地に紺に近い青で星模様が描いてある仮面の透明人間。
透明人間とレネはちょっと話して、それから、透明人間は僕を見て、ほっとしたようなジェスチャーをした。……仮面が浮いているだけのような生き物だから表情が全く読み取れないのだけれど、彼(いや、彼女かもしれないけれど……)は彼なりに、僕に対して『無事でよかった』みたいなのを伝えようとしてくれているらしい。
「昨日はありがとう。お世話になりました」
だから僕も、伝わらないだろうな、と思いつつも、お礼を言うことにした。伝わらなかったとしても、伝えようとすることには意味が無い訳じゃないと思うから。
「とうご」
それから、レネが僕の名前を呼んで、ついつい、と僕の服の襟のあたりを引く。
……それから、近くにあった紙に、羽ペンで何かを描き始めた。羽ペンは淡いグレーの柔らかいふわふわした羽でできていて、インクは紺色だ。お洒落だなあ。
僕がレネのペン先を眺めていると……それはやがて、この部屋の大体の図になった。入り口があって、そこからすぐは応接室っぽい誂えになっていて、その奥が本棚や机のある居室。そこからさらに奥に行くと今僕らが居るベッドルームで、ベッドルームじゃない方に行くと、トイレやお風呂がある、らしい。
それからレネは、出来上がった部屋の図の中に、印をつけていく。具体的には……ベッドルームと居室、トイレとお風呂までが〇で囲まれて、応接室とドアの外の方には×印が付けられた。
「つまり、次の部屋から先には行っちゃいけない、ってことかな」
一応確認しておいた方がいいよね、と思って、レネと一緒にベッドルームを出る。
そのまま居室を通り抜けて、トイレとお風呂がある方へ。……ここに来て初めてトイレとお風呂を見たけれど、どちらも暗い灰色の大理石でできている立派なやつだった。すごい。
それから、もう一度居室に戻って……その先、応接室へ繋がるドアに触ろうとする。
すると、レネが僕をくい、と引き戻して、首を横に振った。うん。オーケー。これで分かった。
やっぱり僕は、ここから先には行っちゃいけないっていうことらしい。
「分かった。こっちから外には出ない」
僕が頷いて答えると、レネはちょっと申し訳なさそうな顔で頷き返した。
「とうご」
それからまた僕を読んで、レネは、ベッドルームに飾ってある金細工の時計を示した。……今は、7時だ。窓の外は星空だから……多分、夜の7時だな。ということは僕、丸一日寝てたのかな……?
僕が時計に注目すると、レネは短針を指で触って、それから、くるり、と回って、4時のところで指を止めた。
……これは、あれかな。『4時になったら帰ってくるよ』っていうことなのかな。
それから僕は星模様の仮面の透明人間に引っ張られて、お風呂の方に移動。……ドアの陰から覗いていると、僕と入れ替わるように、お揃いのブルーグレーの服を着た生き物達がベッドルームに入っていって……ちょっとすると、また生き物達は出ていった。そこで僕は、星模様の仮面の透明人間と一緒に、ベッドルームへ戻る。
すると、レネが着替え終わっていた。そっか。さっきの生き物達は、多分、お手伝いさん。
……僕が隠れたことを考えると多分、僕はレネと星模様の仮面の人以外にはあんまり姿を見せない方がいいんだろうなあ、と推測できる。うん。
「とうごー」
着替え終わったレネは僕を呼ぶ。そちらに行くと、レネは幾つかあるクローゼットの中で一番小さい奴を開いて、中から服を数着取り出した。
そして、僕の前に服を持ってきてはちょっと悩んで……そして、選んだ。
「とうご!」
そうして僕に差し出されたのは……今、僕が着ているよりも布が多くてふわふわした、裾の長い、ローブ、みたいなやつだ。
紺色の柔らかくてしっとりした布でできていて、裾にはブルーグレーでびっしりと刺繍が入れてある。その上に、やっぱり紺色のケープみたいなのがついているかんじの、そういう服だ。
「たるくー」
それから、レネはそう言って、星模様の仮面の透明人間を呼んだ。……ええと、この人、たるく、さん?
レネは星模様の仮面の人に何かを言って……それから、僕に向かって、彼を示しながら、教えてくれた。
「たるく」
「タルク?」
僕が復唱すると、星模様の透明人間が頷いて、軽く手を振ってくれた。おお。タルクさん。
「とうご」
それから、僕がタルクさんに紹介されたらしい。タルクさんの声らしいものが、ト、ウ、ゴ、と、僕の名前を形作る。……タルクさんの声は、石臼で魔石をごりごりやる時の音に似ている。低くて、掠れてざらざらしていて、でも、耳触りがいい。
「あの、よろしく。タルク」
少し考えて、『さん』は無しにして呼んでみることにした。……タルクさん僕より身長が高いからか、なんとなく、敬称をつけたくなってしまうのだけれど……知らない言語同士なんだから、情報量は少ない方がいいと思う。ぼくだって、『トウゴ』に知らない国の言葉で敬称を付けて呼ばれたら、自分が呼ばれたかどうかも分からなくなる、かもしれないし。
僕が名前を読んでみたら、タルクさんは頷いて、ちょっと大仰に一礼してくれた。運ばれた時も思ったけれど、この人、ちょっとフレンドリーな人なのかもしれない。表情はまるで分からないけれど……。
それから僕は、タルクさんによって、着替えさせられた。
……うん。着替えたよ。いや、ちょっと物申したいことはあったよ。ちょっとこれ、ふわふわすぎないかな、とか、こういう裾の長いワンピースみたいな服よりはズボンの方が落ち着くんだけどな、とか、これちょっと女の子っぽすぎないかな、とか、色々、思うところはあるよ。
けど……どうやらこの場所では、こういう服が一般的らしい。レネはこれよりもっと豪華にふわふわしたりアクセサリーがついたりしている長い服を着ているし、タルクさんも長い服を着ているし。だからここではこういう服が当たり前で、そもそも、レネの服を借りるしかない僕としては、文句なんて言えない。
……それに、何より、レネがにこにこしながら、僕が着替えるのを待っているので……うう。
そうして僕は着替えた。ちょっと不本意な服に着替えた。サイズは大体ぴったりだった。まあ、レネと僕はほとんど身長が変わらないから、当然といえば当然なのだけれど。
僕が着替え終わってレネの前に出ると、レネは僕を見て満足げに頷いた。ご満足いただけたなら何よりです……。
「……とうご」
そして、レネはちょっと改まって僕の手をきゅ、と握って……緊張気味に、そっと、顔を寄せてきた。
あ、来るぞ来るぞ、と思って身構えていたら……案の定、ふに、と。
僕の額に柔らかいものが触れて、それから、僕はレネの魔力のベールに包まれたように感じた。
……これ、もしかして、僕の気配を隠すため、とかなのかな。なんとなく、レネにこれをやられると、レネの気配になれる、というか、僕の気配が隠れる、というか、そういうかんじがする。
レネの顔が離れていって、それで、レネはまた、赤くなってもじもじし始めた。
……僕もこれ、慣れないけれど、レネもそうなんだなあ。うーん、またちょっと親近感。
それからレネは、名残惜しそうに部屋を出ていった。タルクさんも続いて出ていって……それからすぐ、ドアがノックされる。
こんこここん。
……やたらとリズミカルなノックが聞こえたなあ、と思ったら、タルクさんが出てきた。
タルクさんは僕を見つめるように僕の方へ顔を向けて、『いいかい?』というようにジェスチャーすると、もう一度、ドアの向こうへ引っ込んで……こんこここん。
そしてタルクさんがドアを開けて入ってくる。あ、成程。どうやら、彼が入ってくる時にはこういうリズミカルなノックをしてくれるらしい。覚えておこう。
それから何度かやって、『こんこここん』の時には僕が内側からドアを開ける、それ以外のノックの時には開けない、っていう訓練を数回やった。それでタルクさんは安心したらしい。手を振って出ていって、それっきり、ドアは静かになった。
……さて。
多分、これから僕は、お留守番することになる、んだろうな。
居室とトイレとお風呂とベッドルームのどれか……多分、理想としてはベッドルームかトイレかお風呂かに居た方がいいんだと思う。奥の方に居た方が、気配を気取られにくい気がするから。
ということで……僕は、とりあえず、ベッドルームで待機させてもらうことにした。その、勿論、ベッドには入らずに、その近くの椅子の上で。
それから僕は、絵を描くことにした。
……いや、だって、これから9時間、待機なんだし。その間、ずっと何もせずに居るのも暇だし。あと、やっぱりここはベッドルームなので、ちょっと、落ち着かないから……。
ここがどこなのか、未だによく分からない。建物はすごく立派で、ちょっと彩度が低くて、そして、レネはちょっと偉い人、のようなかんじがする。
けれど、ここがどこかよく分からなくても、ここが魅力的な造形の場所だっていうことは、もう分かってる。
モノクロームにほんのり色を足しただけみたいな内装も、窓から覗く最高の夜空も、レネ自身も。すごく綺麗だ。
……なので、描くものには困らない。当面、困らないと思う。この部屋の中だけだって、相当、描きたいものがある。窓の外をあんまり見ると問題があるかもしれないから、それはレネが帰ってきてから聞くっていうことにして……記憶しているだけでも絵は描けるし。
ということで、描くぞ!
描き始めたらあっという間に時間が経った。
朝、起きた時には7時前ぐらいだった時計の針は、もう、12時ぐらいを指している。
ちなみに、外はまだ、真っ暗だ。夜明けは4時過ぎなのかな。それにしても見事に星空だけれど。
……絵を描くにあたって、僕は、牢の中で出したスケッチブックにひたすら、絵を描いている。いや、本当はイーゼルとキャンバスを出して、じっくり風景を眺めながら魔法画で描いてみたいし、しっかり水張りした紙の上に水彩絵の具でたっぷりの滲みと共に星空を表現したりしたかったのだけれど……ほら、僕は今、居候の身分なので。
僕の荷物はあんまり増えない方がいいよなあ、と思って、とりあえず、使うものはスケッチブック1冊だけにしている。絵の具は……自分の調子を見るためにも魔法画をやってみたかったから、その、ちょっと、出した。……ちなみに、絵の具づくりに役立ってくれたのは、携帯用の水彩道具だけじゃなくて……鳳凰だ。
鳳凰の色とりどりの羽を借りて、絵の具が作れた。それを混色しながら別の色を作ったり、そこに更に水彩絵の具を混ぜて色を作ったり。
うん。やっぱり召喚獣の意味はあった!
こんこここん、と、ノックの音がする。
あ、タルクさんだな、と思って、僕は控えめに、ドアを開けた。
すると案の定、そこには薄いグレーに深い青い星模様の透明人間が居て、そして、僕の顔を見るとちょっと手を挙げて挨拶してくれる。『よっ』みたいなかんじだろうか。いや、そんな軽い調子なのかは分からないけどさ。
……そしてタルクさんはそっと居室の中に入ってきて、そこで、僕にバスケットを渡してくれた。
バスケットの中には、食べ物が入っていた。
ライ麦パンっぽいものにカイワレダイコンっぽいものや白身魚っぽいものを挟んだものと、黒糖でも入ってるのかな、っていうくらい茶色いパンに牛肉か鹿肉か何かが挟まってるもの。
素焼きのカップの中には、ほんのりグレーがかったポタージュスープっぽいもの。
それから、金平糖みたいな形をした果物……っぽいもの。ええと、これ、何だろう。大きさ的にはさくらんぼ。色合いは透明感のあるキウイとゴールデンキウイ……。
あと、ほんわり光るジュースの瓶。
……光るジュース!?
えっ、と思ったのだけれど、タルクさんは、よし、というように頷いて、それからまた手を振って、部屋を出ていってしまった。
……確かに、ちょっとお腹が空いてきたけれどさ。けど……ええと……光るジュースっていうのは……あの……。
……色々迷ったのだけれど、結局、食べたし飲んだ。
美味しかったよ。うん。ジュースも、光ってるけど、あの、光るのは瓶に入ってる間だけだ、っていうことが分かったので、それからは抵抗なく飲めた。
ここの食べ物は全体的に冷たくて、あっさりした味で、しっとりしていて、すっきりさっぱりしてる。
パンは全然パサつかないし、カイワレダイコンっぽいのはほんのり甘くてしゃきしゃきして美味しい。白身魚っぽいやつは思ってたよりもずっと柔らかくてムースみたいだった。その一方で、肉はものすごく肉で、想像していなかった硬さでびっくりしたけれど。でも、これもよーく焼いたベーコンみたいなもので、すごく美味しかった。
ポタージュスープはスープっていうよりは、ムースだった。器を傾けてもそうそう落ちてこない奴だった。スプーンで掬って食べたら、豆腐っぽい味がした。なんだろう、これ。クリーミーだけどさっぱり。
果物は……その、予想以上に、すっぱかった。口が、きゅっ、てなるやつ。でも、さくさくした歯応えが楽しい。
……ジュースは、美味しかった。うん。何の味かよく分からなかったけれど、とりあえず甘酸っぱくて美味しかったよ。うん。ちょっとぱちぱちはじけるようなかんじがあって、でも炭酸ともちょっと違うような……うーん、何だったんだろう……。
食べるだけ食べたら少し眠くなってきてしまったのだけれど、描きたいものがあるから描く。
部屋の中に吊るされたランプ1つでも、描いていると楽しい。うっかり実体化させないようにだけ気を付けて、部屋の調度品を1つずつ、記録するような気持ちで描いていく。
それが終わったら、窓の外の風景画は明日っていうことにして……絵の具づくりを始める。
うん。絵の具。もうある程度は作ったし、あんまり増やすのもよくないのだけれど、それでも、どうしてもいくつか、作りたい色があるので。
作りたいのは、紺色のバリエーション。星明かりに潤む明るい紺色から、夜の陰みたいな暗い紺色まで。
……何故かっていうと、それら、レネの色だから。
僕が今、一番描きたいのは、レネだ。
「とうごー!」
「レネ!おかえりなさい!」
そうして僕が絵の具をある程度作っていたら、レネが帰ってきた。タルクさんも一緒だ。
レネは僕に駆け寄ってくると、僕の無事を確かめるようにぺたぺたと僕の顔を触った。大丈夫だよ。居るよ。
それからレネは、僕が描いていた絵に目を留めた。画材がどこから出てきたのかはちょっと不思議そうだったけれど、そこはあんまり気にしないことにしたらしく、スケッチブックをそっと、遠慮がちに、捲る。そして僕の方を、ちら、と見た。
「どうぞ」
別に見られても嫌じゃないよ。そういう気持ちでスケッチブックを一緒に捲ったら、レネは絵を見る許可が下りた、と思ったらしくて、そこからは遠慮なく、それでいて、そっと、紙を破いたり汚したりしないようにとても気を付けて、スケッチブックを捲っていく。
……僕が描いたものはほとんどがレネの部屋のものだ。だから見て、ちょっと嫌な思いをするかな、と、ちょっと不安になった。自分の部屋が勝手に描かれてるって、あんまり気分が良くないんじゃないかな、って。
ただ、それは杞憂だった。レネは僕が描いたものを興味津々に見つめて、1個1個、自分の部屋のどこを描いたものなのかを実物と見比べて、楽しそうにしている。
……そして、その中に、僕が記憶だけで描いた森の絵を見つけて、小さく歓声を上げた。
僕が描いたのは、森の、泉周辺の景色だ。ものすごくよく見ている景色だから、記憶だけでも描ける。
昼下がりののどかな風景、っていうことで描いてみたのだけれど……それが、レネのお気に召したらしい。レネはじっとその絵を見て、目をきらきらさせている。……あ、タルクさんもレネの後ろからそっと覗き見て、じっとしている。じっと見ている、のかな……?
それから僕は、レネとタルクさんの前で、実際に絵を描いてみた。というのも、レネにせがまれたから。ええと、多分。
……僕が絵を描き始めると、レネはそれをすごく嬉しそうに見ている。な、なんというか落ち着かない!
レネ達の前で絵を描いていて、分かったことがある。
それは、レネ達はどうやら、昼間の景色が好きみたいだ、っていうことだ。
森の絵を描くのでも、夜の森だとそこまでレネは興奮しない。逆に、昼間の絵を描くと、ものすごく、目をきらきらさせる。ええと、明るい絵が好きなのかな、とも思って、室内の絵とかを描いてみたのだけれど、それについても窓の外に見えている青空の方に注目しているようなかんじだった。
なんだろう。別に、珍しいものってわけでもないだろうに。
……と、思っていたのだけれど。
「……あれ?」
時計を見て、窓の外を見て、時計を見て……僕は、気づいてしまった。
現在、7時。つまり、僕が起きてから12時間が経過して……そして、窓の外は、真っ暗だ。
どうやらここは、ずっと夜が続く世界、らしい。




