帰るということは……
「へいわ市に帰るっていうことは、まさかもしかして、消えちゃった世界が復活するってこと?」
さすが神様、言われてみれば確かに、そんなこともできるのかと呆気に取られる笑。
「ええ、そうよ。生き別れた人たちもみんな元通り、あなたたちが過ごしてきたへいわ市での日常が戻るの」
「でも、それって、もう笑さんと幸来さんと夢さんには会えなくなるって、ことですよね」
と、わがまま承知で我欲を述べる思留紅。
「直接は会えなくなるけど、いまは便利な時代よね。リモートでなら会えるわ」
「リモート……。うーん、全然会えないよりはいいけど……」
「あの、すみません、世界が復活したら、こんどは逆に永遠の命を手に入れて、エンドレスループになったり、年を取らないでずっと生き続けたり、なんてことはありませんか?」
恐る恐る訊ねた花純。元々控えめな性格のうえ、笑、幸来、夢にとっては運命に関わる問いだ。
「正直、何がどうなるかは、私にもわからないの。ただ基本的に、私の物語はどれもキャラクターがみんな年を取って、天寿を全うすれば召されるようになっているわ。だからかしらね、世界そのものまでなくなってしまったのも」
よつばは人知れず、自責の念に駆られていた。
「大丈夫! 神様が気に病むことはありません! おかげでテレビを見て私たちを応援してくれた素敵な仲間と出会い、球場でライブをする売れっ子ミュージシャンになれたのでありますから!」
平に平に、テーブルに両手と額を着ける笑。
「そう言ってもらえると、救われるわ」
感傷に浸るよつばを見て、笑、幸来、夢は老いた母をいたわるように、慈愛を孕んだ柔和な笑みを浮かべた。
結局、アニメ制作如何については一旦話を持ち帰り、しばらく検討することにした。帰らなければこのまま現実世界で活動、帰れば失った家族や仲間と再会できるが、現実世界の仲間とは直接会えなくなる。その選択は、即断即決とはいかなかった。
◇◇◇
「ふはーっ、ふはーっ、ふひひひひ……」
深夜、某所の路地裏。金がなくライブのチケットを買えず場外から観覧していたファンが、いかにも不審者らしくブヒブヒしていた。
重大な決断を迫られているラブリーピースに、魔の手が迫ろうとしている。




