グダグダニューイヤーライブ!
「ううう、緊張で脚が震えるよお……」
「だだだ大丈夫よ、私たちはもう、ネット配信で何人もの人に見られているのだから」
夢と幸来が激しく動揺している。開演時刻2分前の13時58分、刻一刻、本番が近づくほどに胸の高鳴りが激しくなって、呼吸の乱れも激しくなっている。
「だいじょぶだいじょぶ! 知らないうちにテレビにも出てたんだし!」
笑は胸を張るも、やはり緊張はしている。
「わ、私は千人以上の人前に出るのはほんとうに初めてで……」
「花純さん、大丈夫ですよ、生粋のラブリーピース以外はみんなそうですから」
「ううう、思留紅ちゃあああん」
小学生に泣きつく高校生。これまで動画以外のメディア露出もなく、音楽経験もなかった花純は、緊張とプレッシャーに押し潰されそうだ。
他方客席では、ラブリーピースの曲に合わせてダンスをしている観客や、のほほんと甘酒を飲んでいる観客のテンションは上がる一方。冬の公演ということで、待ち時間の間にからだを温める仕掛けをしておいて良かった。
晴れ渡る空の下、風は冷たいが太陽はぽかぽか。緊張に支配されたラブリーピースの前に、とある女がステージに登壇。
「さてさて皆さーん! 明けましておめでとうございまーす!」
え、誰こいつ、みたいな雰囲気が客席に漂う。
「え、何あれ」
それは、ラブリーピースやつばさとこまちも同じだった。笑をはじめ、皆が呆気に取られている。
「門沢先生、よね」
と幸来。
「私は呼んでないよー」
「ぼ、僕も何も聞いてないよ」
隅っこの椅子に座っている沙織と聡一も、なぜまみ子がステージにいるのか知らない。
状況を呑み込めていない関係者をよそに、まみ子の司会(?)は続く。
「え? 私は誰だって? ラブリーピース、桃原笑の担任の先生、門沢まみ子だ。私が出てきたってことはつまり、もうすぐ最高のショーが始まる。そういうことだ。それじゃさっそく出てきてもらおう! つばめとこだま、そして、ラブリー、えーと、なんだ、ああ、あれだ、ピーポー!!」
え、何勝手に始めてんの? 時間だから出るけどさ。
そんな感じでとりあえず笑がステージに駆け出した。
「ちょちょちょちょっ! なに勝手に司会やってんの!? まだ円陣組んでないんだけど! しかも名前全然合ってない! つばめとこだまって何!? ラブリーピーポーも何!! ラブリーピーポーはあながち間違ってないけど!!」
トーク中にほかのメンバー、つばさ、こまちもぞろぞろ登場。グダクタの開演。
「なんだ細かいなぁ、ここは常夏茅ヶ崎だぜ?」
グダグタはしているが、ここはあくまでもステージ、観客の前。まみ子は握ったマイクを離さず、笑はピンマイクを意識して喋っている。
「そういう問題じゃなーい!! えー、まみちゃんがグダグタなので、改めて、私たち、ラブリーピースと」
「つばさ」
「こまちです!」
「みんな、きょうは寒い中来てくれてありがとう! 思う存分楽しんでってね! ということでさっそく1曲目、いっくよー! ワン、ツー、わんつーさんしー!」
笑のかけ声に続いて前奏が流れ始めた。
「おおおおおお!!」
その知名度の高い曲は、前奏から客席をどよめかせた。グダグタニューイヤーライブの始まり始まり!




