届け! このメロディー!
10時、ラブリーピースと翼、小町は野球場の楽屋、というよりは控え室にいた。長テーブルと椅子、ホワイトボードがあるだけのシンプルな部屋。
「さてさて皆さん! お客さんがぼちぼち入ってきて、いよいよ本番が近づいてまいりました!」
「ううう、緊張するよお……。よく考えてみたらただの一般市民の私がラブリーピースとか音楽の道を歩んでる人たちと同じステージでパフォーマンスするなんて」
「かっ、花純さんだってもう、ラブリーピースになって、久しい、ですからっ……」
「さ、幸来さんっ、緊張したときは手に『人』を書いて飲み込むんですよ!」
幸来を宥める思留紅も、珍しく声が震えている。
「だだだ、大丈夫ですよ皆さん! 皆さんは先に曲をネット配信して好評を得られてるんですから! 私なんて、結局ぶっつけ本番なんですから」
「夢ちゃんなら失敗しても許してくれるよ! 私たちなんか、いい年した二人組だからね、失敗したら一発ドッカーンだよ!」
両手を広げて楽しそうにドッカンを表現する小町。
「ちょっと、縁起でもないこと言わないで」
ということで、笑と小町を除き過度な緊張状態。
ライブ開始は15時。ランチをゆっくり食べて、尚且つ子連れに配慮し夜遅くの終演にならない時間帯とした。
公園敷地内では正月らしく甘酒やお汁粉が無料で振る舞われていて、一角にはラブリーピースの物販コーナーもある。黒字になるか定かではないが、グッズはそこそこ売れているようだ。
茅ヶ崎は夏が最もお祭り騒ぎになる季節だが、基本的に一年中ビーチサンダルの精神なので、冬ど真ん中でもきょうは夏のテンションだ。
野球場内に設置された大型ビジョンでは、ラブリーピースのダンス付き動画が流れている。東京都心から約60キロ離れた茅ヶ崎にもかかわらず、収容2千人超えの会場で、チケットは約半分が売れた。赤字か黒字かは物販の売り上げ次第だが、ポッと出の新人にしてはそこそこな客入りだ。客層は大きなお友だちや、ラブリーピース放送から時を経て大きくなったお友だちが大半。彼らは少しずつ、会場に集まっている。
15時開演予定で開場は14時。その間、少しでも楽しんでもらおうと、ラブリーピースは場内の特設ビジョンで流すムービーを用意しておいた。
『みんな! 明けましておめでとう! きょうは私たちラブリーピースと、大切なお友だち、翼ちゃん小町ちゃんのライブに来てくれてありがとう! これからダンスムービーを流すから、ライブ前に踊ってからだを温めておいてね! 踊るのかったりーなーって人は、甘酒でも飲んでのほほんしててね!』
という具合にメンバーのメッセージが流れた後、何曲かあるダンスムービーが順番に流れる。すべて流れるとループ再生されるプログラム。途中、スポンサー企業のコマーシャルも流れる。
『それじゃあまずはこちら! そこのヘッドランドビーチとサザンビーチと、山のほうにある里山公園っていうところでダンスしてきました! それでは聴いてください、『届け! このメロディー!』』
『届け! このメロディー!』
作詞作曲:桃原笑・海風幸来・桜野花純・桃原夢・逢瀬川思留紅
編曲:逢瀬川思留紅・逢瀬川沙織
人生という旅の途中
ふらっとやってきた海とみどりのシティー
音楽ファミリーに招かれて
私たちも始めたよミュージック
ドレミやってみたら楽しいね
ファソラシ上達するほどにね
ハッピーをシェアしよう!
メディアの海に網かけて
届け! このメロディー
ふわり潮風に乗って
世界中飛んでゆけ!
ラブ&ピース!
オールウェイズエンジョイ!
人生という旅の途中
どしゃ降り涙こぼれる日もある
きみのレベル上がってくほどにね
長いトンネルもいっしょに進もう!
先が見えなくて戸惑って
ふらり倒れそうになって
ダーク&ブラック
オールウェイズドントハッピー
投げ出したいこともある
そんなときこそ思い出して
私たちのミュージック!
届け! このメロディー
ふわり潮風に乗って
世界中飛んでゆけ!
ラブ&ピース!
オールウェイズエンジョイ!
キミよハッピーになれ!




