初日の出!
「やばい、元旦ライブは失敗だったかも……」
元日、まだ外は真っ暗な午前5時半。紅白を見ながら年越しそばを食べ、更に音楽番組を見て夜通し起きていた笑と、緊張で眠れず結局笑といっしょにテレビを見ていた幸来。思留紅と夢はそれぞれ自室で眠っている。
「そうね、せめて明日にすれば良かったわ」
ふたりきりのリビングは、明け方の静寂に包まれていた。
「初日の出でも見に行く?」
「そうね、そうしましょう」
ということで6時半まで自室でごろごろしたふたりは、白んだ空のもとへ出た。ライブ当日、大きな負荷となる早起きをして初日の出を見に行く約束は、敢えてメンバー同士ではしなかった。
「さっむっ!」
もふもふのダウンコートにマフラーを着用して外出した笑と幸来だが、乾いた空気が容赦なく頬を刺す。
人がわんさか押し寄せているヘッドランドビーチ。間もなく日の出時刻の6時51分となるが……。
「なんか、あっちのほう雲かかってない?」
「そうね、黒い雲がもっさりかかってるわね」
茅ヶ崎は快晴。しかし陽が上る三浦半島方面は、空高く雲がかかっている。
「あ、わかった! 今年の初日の出は西から出るんだよ!」
「時を戻そうっていうことかしら?」
「そっちか! そっち行ったか!」
そんなことを言っている間に6時55分となり、見物を諦めた人々がぞろぞろと砂浜から引き上げてゆく。
混雑が緩和されたところで、笑と幸来はなんとなく波打ち際まで歩を進めた。ざぶん、さらさら、足元ぎりぎりまで打ち寄せる波のうたかた。
「まあ、こんなのも私たちらしいよね」
「私たちらしいというよりは、笑らしいわね」
「でも、まあ、初日の出見に行けば良かったー! ってなるよりいいんじゃい? 行かずに後悔より行って後悔。それにほら、振り返れば富士山が見える」
「そうね、富士山には陽が当たっているようね」
角度と位置の関係で、富士山には陽光が当たってオレンジ色に染まっている。
「笑ちゃん幸来ちゃーん!」
「あ、小町ちゃんと翼ちゃん!」
北を向くと、小町と翼がこちらへ向かって歩いてきている。
「あけましておめでとう! きょうのライブも今年もよろしくね!」
「うん! よろしくね! 翼ちゃんも!」
「よろしく」
今年もシャイな翼は、小声でボソッと言った。続いて幸来もふたりに挨拶した。
「みんなー! あけましておめでとう!」
「花純ちゃん!」
「お姉ちゃーん! 起こしてよお」
「そうですよ笑さん幸来さん、お母さんが起こしてくれなかったら見そびれてました」
夢、思留紅が沙織、聡一とともに来た。
「みんなあけおめことよろー!」
沙織が陽気に言うと、花純、翼、小町は元締めに頭を垂れるが如く「よろしくお願いします!」と頭を垂れた。
「あ、見て! みんな!」
笑が南東の方角を見ながら、ぱあっと笑顔を華やがせている。
「わあ、きれい……」
幸来は思わず感嘆した。
7時1分。見物人が半分ほど引き上げた茅ヶ崎海岸。
雲の隙間から太陽が顔を出し、海面に反射した陽光が一直線に伸びて打ち寄せたその一瞬に、きらきらまばゆくきらめいてさらさらと引いてゆく。
日の入り前にも見られる光景だが、元日、しかもライブ本番当日に見るそれは格別だ。
9人は全身にやさしい光浴びながら、きょうの成功を祈った。




