5年ぶりの戦闘服!
金髪面長で黒Tシャツに黒短パンの担当者に楽屋まで案内された。
エレベーターや通路には各番組の視聴率が貼り出され、番組関係者の士気を煽っている。
「じゃ、衣装に着替えたら収録始めますんで、よろおなしゃーっす!」
担当者は揚々と言って、楽屋の扉を閉めて去って行った。
楽屋の中央にはプラスチック製のテーブルがあり、ピンク、ブルー、イエロー、グリーン、パープルの衣装が置いてある。ラブリーピースの戦闘服だ。ピンクとブルーはアニメでお馴染みのカラーだが、その他はオリジナル。いずれもスカートフリフリで脚の機動性を最大限高め、敵にキックを入れやすいように設計されている。
「わあ! 久しぶり!」
「ほんと、5年ぶりね!」
久しぶりの戦闘服に当時を鮮明に思い出しながら心をきらめかせる笑、幸来と、「わあ、本物だ!」と興奮する思留紅。花純と夢はにこにこしながら衣装とそれに心躍らせる3人を見ていた。
「よっし、お着替え完了!」
着替えを済ませ、戦闘少女とそれっぽい仲間の完成。
「あのお茶、飲んでいいのかしら」
幸来が楽屋の奥を見て言った。
壁際に化粧台がズラリ並んだ楽屋の隅には給湯器と紅茶のティーバックが醤油皿ほどの麻のカゴの中にまとめて置いてある。
「あれはサービスだからいいんですよ! たぶん!」
思留紅が答えた。
「たぶん?」
と夢。
「幼稚園の演劇とか、習い事でやってたエレクトーンの発表会なんかでいくつかのホールに行ったんですけど、どこもサービスで自由に飲んで大丈夫でした」
「まあ、私たちの楽屋に置いてあるんだから私たちのものだよ」
笑が淡々と言った。
ということで、5人は本番に備え呼吸を整える名目でティータイムを始めた。
「ふぅ、きょうも紅茶が美味しい!」
逢瀬川家でもおやつの時間によく紅茶を飲むので、笑たちにとって紅茶は日常の飲みもの。
「ええ、バラ園でスコーンをいただきながらだとなおいいわね」
優雅なひとときに憧れる幸来。
「わかる! 私、小学3年生のとき、家族で長野県に旅行に行って、旅館に行く途中に寄ったカフェがヨーロピアンな雰囲気で、あそこで食べたスコーンは美味しかったなあ」
思い出に浸る花純。
「え、長野のどこですか?」
花純の思い出話に乗った思留紅。
「白樺湖に行く途中の、ビーナスラインっていう道路のそばにあるお店だったかな。小さいころだったから、記憶がおぼろげで」
「ビーナスライン! 素敵な名前ですね!」
夢も会話に乗ってきた。
「うん、緑がいっぱいで、のどかな道だったよ」
本番まではまだ時間があり、5人はしばらく談笑を続けた。
「本番まであと40分、いよいよ私たちの曲が企業の公式メディアに流れるわね」
「放送はちょい先だけどね」
「3週間後くらいでしたっけ」
「そのくらいかなあ」
幸来、笑、思留紅、花純の順で言った。
「私たち、どこまで行けるかな」
ふと、笑が言った。4人の視線が集まった。




