テレビ収録にやってきた!
「ねえ、私ってアイドルだと思われてなくない?」
動画配信時に寄せられた視聴者からのぞんさいなコメントに疑問を抱いている笑。アイドルの動画配信といえばだいたい神を崇めるかのようなコメントが寄せられるが、自分に対してはそれがなかった。これはどういうことなのか。
「大丈夫よ、そもそもラブリーピースはアイドルじゃないわ」
「え、じゃあ私たち何者?」
「世界を救う者よ」
大層なことを淡々と言って退けた幸来だが、アニメの世界は救ったので嘘ではない。この世界にもきっと救う使命を持っていざなわれたのだと信じている。
「あ、そうだった。そりゃアイドルみたいなことやっててもアイドル扱いされないよね。なんてったって世界を救うラブリーピースなんだから! わーはっはっはっ! わーはっはっはっ!」
とはいえ幸来は神のように崇められている。問題は笑自身の態度によるものとみてほぼ間違いない。
そうこうしているうちに、収録日がやって来た。秋晴れの爽やかな日だ。
「やって来ました六本木!」
茅ヶ崎から湘南新宿ラインと地下鉄日比谷線を乗り継いで1時間少々、笑たちラブリーピースの5人は六本木の街に初上陸した。
「東京はビルがいっぱいね」
「摩天楼の群れの中にも街路樹があって、ちょっと落ち着く感じかな」
笑、幸来、夢は初めて訪れた東京の街並みに圧巻されている。日本の大都市といえば中心部からある程度離れれば住宅地になって、田んぼがあるところもあるが、東京はどこまで行ってもビルビルビル。
「私も来ちゃって良かったのかな」
「私もです」
アニメキャラクターではない花純と思留紅は、場違いではないかと心配している。
「なに言ってんの! 全然問題ないノープロブレムだって! アニメに出てたのは私たち3人だけど、今は花純ちゃんも思留紅ちゃんも含めてラブリーピースなんだから!」
「そうよ、堂々としていればいいの」
「わ、私だって、アニメに出ていただけでラブリーピースとしてブラックサイダーにあんなことやこんなことをしていたわけではないので、大丈夫ですよ」
フォローになっているか微妙な夢だが、戦闘キャラクターではない彼女も彼女で不安を抱えているようだ。
「お、ここですかな」
「ここみたいね」
5人の前に現れたのは、周辺のビルの中でもひときわ高い、木々に囲まれた小綺麗なビル。幸来が手に持つプリントアウトした資料によると、このビルの中にアレマTVのスタジオがあるようだ。
「たーのもー!!」
笑は意気揚々とエントランスに進入。
「なんだ君たちは! 不審者か! テロリストか! そうなんだな! ならば事を起こす前にブタ箱行きだ!」
笑が受付をスルーして自動改札機のようなゲートを通ろうとすると、警備員に腕を掴まれて制止された。
「えっ!? テレビ局の人が見てわかんないの!? ラブリーピースですよ! あの有名な! このテレビ局の視聴率とライツ事業に大いに貢献したラブリーピース!」
「知らん! いいから手を後ろに組んで大人しくするんだ! 従わないと八つ裂きにするぞ!」
「ひええええええ!! 日本の警備員でこんなことが有り得るんですね!!」
笑と警備員が即席コントをしている間、幸来が受付で入館手続きを済ませ、ゲートの奥から担当者が出てきた。
「ちゃーす! ラブリーピースの皆さん! きょうはよろおなしゃーっす!」




