表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハートフル少女ラブリーピース! ~届け、私たちのミュージック!~  作者: おじぃ
新しいスタート!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/93

わかってくれるカア!

 朝5時、夢は私に寄り添い、丸まって寝息を立てている。昨夜は眠れなくて、カーテンの隙間から外が明るくなっているのがわかる。


 ちょっと散歩してこようかな。


 私は敢えて一人で外に出て、きのうの夕方同様、砂浜の波打ち際を東へ向かって歩き出した。


 こんなに早い時間でも散歩やジョギングをしている人がけっこういて、遠くで犬の鳴き声が聞こえる。海上ではサーファーがサーフボードにうつ伏せで乗っかり、ちゃぷちゃぷ弱い波に乗っている。それでも昼間のような喧騒はなくて、オレンジの空、東からやさしく照らす太陽はこの時間、東側の海をとろけるようにきらめかせている。きのうの夕方も見たような景色だけど、朝のほうが波は穏やかで、とろん、とろんとした波音がきらめきを引き立てる。


 海といえばカモメだけど、カモメはあまり見られなくて、波打つ海上を一羽のカラスが陸へ向かって一直線に飛んでいる。


 白んだ空は丸く広くて、果てが見えない。海の向こうも見えない。


 この広い世界のどこにも、お母さんとお父さんはいないんだ。


 これで夢までいなかったらと思うと、音楽のモチベーションは相当下がっていたと思う。


 今のところ私たちの動画の閲覧数は全曲合わせて3百くらい。なかなか伸びない。楽曲の雰囲気が同年代向けに偏ってるからかな? あの超絶最強大人気アニメ『ハートフル少女ラブリーピース!』だって、お年寄りにはあまり知られていないらしい。


 対して、若い人からお年寄りまで幅広く知られているもののあるわけで。たとえば国民的ミュージシャンとか。


 色んな曲を披露すれば、少しは視聴者層が広がるかな?


 でも、無理して私らしくないことをやってもいいパフォーマンスにはならない。


 いろいろと難しく考えるよりは、想いのままを歌にしたほうが良さそう。そういう中で大人びたバラードなんかができたら、それはそれでいい。


「ふひぇ~」


 なんだかいろいろあり過ぎて頭が追いつかないよお。


 背負うものの重みに耐えかねて前かがみになった私は、両手をひざについた。


 あれだ、ブラック企業とかサービス残業とかいうやつだ。この世界は、特に日本では手に負えないほどたくさんのことを抱える人が多くて、それを美徳とする文化が根強く残っているという、ブラックサイダー顔負けの悪しき風習がある。


 ここ茅ヶ崎は、そういうのから逃れてのんびりした暮らしをしたい人が集まる街らしいけど、この私、桃原笑をリーダーとした『ラブリーピース!』はやることがいっぱい。


 きっとやることがなくなると、世界が消えたり自分が死んじゃったりする。命を繋ぎ止めるためにはやることがないといけない気がする。世界を消された経験者は語る。


「でものんびりしたいじゃん!! 休みたいじゃん!! 両親亡くしたんだぞおおお!! 少しは休ませろおおおおおお!! うおおおおおお!!」


 たまらなくなって海に向かってシャウト! これあれだ! ワーカーホリックっていうやつだ! 何もやらなきゃすべてが終わる恐怖!!


「カーア! カーア!」


「そうカア! カラスさんもそう思うカア!」


 空飛ぶカラスよ! 暗黒の化身が私の味方になるとは! もしや私、いつの間にかブラックサイダーになってるんじゃ……? まあいっか! 今の私、いつもよりどうかしちゃってるけどそれもいっか!


「カーア! アアアアアアン!」


「そうかそうか! カラスさんもいいって言ってくれるカア!」


 カラスはそのままサイクリングロードと国道の間に伸びる砂防林へと飛び去り姿を消した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ