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ハートフル少女ラブリーピース! ~届け、私たちのミュージック!~  作者: おじぃ
夢が現実世界に飛ばされたとき

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ワンカップくらい大きい

 海岸での散歩を終えて逢瀬川家に戻り、夜、夢は笑たち五人とともに夕食のカレーやサラダを食べた。


「ごちそうさまでした、美味しかったです!」


「お粗末さまでした。もう9時だし、きょうは泊まっていったら?」


 紗織は夢に宿泊を勧めた。


「え、でも……」


 笑と幸来に一人で泣く時間を与えたくて、遠慮気味の夢。


 もちろん紗織がそれを察していないわけがない。


「だいじょうぶ、寝る部屋はお姉ちゃんといっしょだけど、お風呂は思留紅といっしょに入ってね」


「あ、はい、わかりました、それでは、お言葉に甘えて」


 笑と幸来はふたり、入浴中に泣く。そういうことだと夢は悟った。


 夢はアロハとオハナのグループラインに連絡を入れると、すぐに返事があった。


『えー、スープつくったのに』


 とアロハ。


『ごめんなさい明日いただきます!』


 夢は急いで返信した。


『りょーかい、お姉ちゃんたちによろしくね!』


『私からもよろしくお願いします。楽しんできてね』


 オハナからもメッセージが来た。


『承知いたしました。姉と幸来さんにお伝えしておきます。楽しんできます!』


 アロハとオハナは飲食店や楽器店のアルバイトを掛け持ちしていて、逢瀬川家のように稼ぎは良くない。夢は自身が家計の負担になっている自覚はあるが、まだ中学生。動画配信など、稼げることをしていない。アロハもオハナも「そんなこと気にしなくていいよ」と言ってはくれているものの、気にするのが夢の性分。ということで、きょうはお金持ちの逢瀬川家に泊めてもらうことにした。


 そのころ、入浴中の笑と幸来は、ぐすりぐすりと涙していた。だが、大声で泣きわめいたりはしなかった。入浴開始から終了まで、90分かかった。


 続いて、夢と思留紅が脱衣所に入った。


「わ、私より、ワンカップくらい大きい……」


 夢の胸を見て、思留紅が愕然とした。


「え、あっ、それは、私のほうが年上だから……」


 そんな小さいようで思留紅にとっては大きな応酬をしながら脱衣して、ふたりは浴室に入り、思留紅に促されて夢から順にシャワーを浴びてバスタブに浸かった。


「ふは~、いい気持ち」


 ぬるま湯に肩までどっぷり浸かった思留紅が言った。


「ふふ、適温ですね」


「はい~。は~あ、まさか、笑さんと幸来さんに加えて、夢さんともいっしょにお風呂に入れるなんて……」


「あ、あの、お姉ちゃんたちを迎え入れてくれて、ほんとうにありがとうございます」


「いえいえ、いっしょに暮らしたいって、私から両親に頼んだんです。私、ちっちゃいときからラブリーピースがほんとうに大好きで、まさかテレビの向こうの、しかもいちばん大好きな有名人といっしょに暮らせる日が来るなんて」


「ほんとうに、ほんとうにありがとうございます」


「いえいえこちらこそ。でもびっくりですよね、自分たちの暮らしが知らないうちにテレビで流されて、無自覚のうちに有名人になってるなんて」


「それ! ほんとそれですよ! 私たちは日常生活を全国ネットで晒されて、なのに1円もギャラが入らないで、大人たちの食い扶持にされてたんですよ! でも、その大人たちがいなければ私たちや私たちの世界は誕生しなかったわけで、神様にいいようにされた気分です」


「わかるわかる、わかりみが深いです。もし自分の日常生活が晒されて、あんなことこんなことのどこまで知られているかと思ったら、心臓に悪すぎですよ。でも、ラブリーピースのテレビに出てきた皆さんは、ほとんど健全な部分しか映されていないので大丈夫ですよ」


「ほ、ほとんどですか……」


「はい! 夢さんに関してはほんとうに健全なところしか流れてませんよ!」


 夢が幸来のことをやや異常と言えるほど敬愛していることなど、昨夜新曲を発表して動画サイトに夢からメッセージが来るまで知らなかった。『ハートフル少女ラブリーピース!』というコンテンツの大ファンである思留紅にとっては、自分しか知らない裏設定(それともキャラクターがクリエイターの意図しないところで自発的に芽生えたものか)を知れてウハウハ状態。


「ということは、誰かの不健全なところは流れてるんですね……」


「ああ、いや、そんなことは……」


 まさか夢の愛する幸来がブラックサイダーと戦闘する際に粗〇ンなどと言っているなど、思留紅には言えなかった。

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